【即日「まれ」レビュー】122話。門脇麦の融資の鬼、最高

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エキレビ!名物、木俣冬の日刊「まれ」、いつもは翌日レビューでお楽しみいただいてますが、17日から一週間は、夏休み特別企画として「当日朝の放映分を即レビュー」するという「即日まれ」体制でお届けします。

朝ドラ「まれ」(NHK 月〜土 朝8時〜)8月18日(火)放送。第21週「復活マルジョレーヌ」第122話より。脚本:篠崎絵里子(崎の大は立) 演出:一木正恵


122話は、こんな話


高い開店資金をなんとかするためには銀行に借りるしかない。とはいえ、徹(大泉洋)の自己破産がトラウマになって借金をすることに悩む希(土屋太鳳)。
いろいろ迷った結果、農協に頼ることに。しかしそこには融資の鬼がいた。

今日の、すっきり!


NHKと違う局の番組タイトルみたいになっていますが、そこは置いておいていただき、
みのり(門脇麦)、最高!

「妄想はそこまでで結構です
夢物語にお金は出せません
具体的なプランをお聞かせできますか」

農協の「融資の鬼」として、希のぼんやりした夢を叩き、視聴者のもやもやを代弁してくれました。

ふだんは、柔らかい口調でひとに接しているみのりは、お仕事になると、顔つきも声もシビアに変わる。
家庭は家庭、仕事は仕事と、割り切りまくって乾いいて、ちょっとゾッとするほどの女の強さ、こわさ。篠崎絵里子はこういうのを書くと、水を得た魚という感じがします。
以前引用したインタビューから、篠崎絵里子は夢に対して懐疑的なのはわかるので、その視点のほうが説得力あります。
そのせいで、夢を託さないといけない主人公・希を描くとき、篠崎のように、夢に対して醒めた感覚をもった視聴者の気持ちを意識的か無意識か刺激してしまうんでしょう。
とはいえ、希ののほほんとした感じを単純に愛してやまないひとたちもいるんですよね。「まれ」の毒に気づかないひとたちがいるという現実もあぶりだしてしまうことも含めて、シビアだし、貴重な脚本です。

今日の、名場面


才能発揮といえば、一木正恵演出。オープニング映像から、前半の「文さんクイズ」、紺谷課長グルグルなどヒットシーンのある回を演出してきた才気が、テロップを使った新しい遊びを見せてくれました。

高志(渡辺大知)の心の言葉、
「本物も
イケメンやわいね」
が大きくなったり、小さくなったり。
テロップのアップと引き・・・新しい。
少女漫画のネームみたいなノリが、羽野海チカのマンガに出てきそうな高志の雰囲気ともマッチしていました。
「ドラマ絵」にありそうな表現を、ドラマのほうが逆手にとった、「絵ドラマ」
というような。
こうやって、表現は変化や進化していくのかな、と興味を覚えます。

今日の、つっこ「まれ」


みのりのおかげで久々に溜飲が下がった122話ですが、これはやっぱりツッコミたい。

「根性なしやけどいっぺん決めたことは変えんひと(徹のこと)やさけ」(藍子/常盤貴子)

いやいや、藍子さん、夫をかいかぶり過ぎ。
変えまくってきたからいまがあると思うのですが・・・。
と、今朝も、日本の多くの家庭から、ツッコミの声があがった気がします。
「まれ」、こうして、日本をひとつにしています。意外とテレビの本来の役割を果たしているんですね。

それとも、夫婦にしかわからない深い理解があるのかな。
へんなとこ頑固だってことでしょうけどね。

今日の、借金問題


「借金は人生を狂わす」
「だめ、きょうだいでもお金の貸し借りは」
 
ものすごくまっとうな借金に対するセリフの数々・・・。

ところが希が「借金け・・・」と悩むところででかかる音楽が、何かコントのよう・・・。そのあとも、ブツブツ、借金妄想をする希も・・・。
極めつけは、
希「しゃ・・・」
圭太「がんばれ」
希「借金させていただいてもよろしいでしょうか」
圭太「はい」

借金コントの一幕という感じで。借金を駄目!と厳しく言いたいのか、借金も楽しいよ、と言いたいのか・・・自己破産に関して、なんでこんなにふんわり描くのか・・・。
テレビを見ている心の成長期のひとたちが、「自己破産」を愉快でとるにたらない、まあなんとかなるさ的なイメージで脳に刻んでしまうことが余計なお世話ですが心配です(テレビを見てると頭が悪くなると怒る頭の固いひとみたいとツッコまれても構いません)。
(木俣冬)

エキレビ!にて月〜土まで好評連載中! 木俣冬の日刊「まれ」ビュー全話分はこちらから

いまひとつ視聴率が伸びないが、奮闘は讃えたい。NHK朝ドラ「まれ」おさらい(54話までを総括))