広州富力への完全移籍が決定的となったレナト。高額の違約金も、財力に勝る中国のクラブの前ではなんの意味もなさなかった。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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 フロンターレのレナトが中国の広州富力に完全移籍することが決定的になったね。
 
 J1の第2ステージが開幕した直後の7月13日にオファーが届き、レナトは15日に中国入りし、就労ビザの取得やメディカルチェックが無事にクリアできたら、正式に契約を結ぶ見込みだという。
 
 フロンターレにとってはまさに寝耳に水、青天の霹靂だったことだろう。こんなこともあろうかと、クラブは違約金を高く設定していたようだが、広州富力がそれを満たす額を用意しているのだから、防ぎようがないね。
 
 日本人の感覚からしたら、シーズンの途中に、3年半も過ごしたチームを離れるなんて“裏切り行為”のように思えるかもしれないけど、限られたサッカー人生のなかで、より良い条件のチーム、よりレベルの高いリーグに移るのは、プロとして当然のこと。
 
 むしろ、シーズン途中に引き抜きの話が来て、年俸も大幅アップ、高額な違約金まで用意してくれるというのは、実力を高く評価したからで、プロとしてこれほど名誉なことはないよ。
 
 フロンターレといえば、7月7日にドルトムントを招いて親善試合を行ない、0-6の大差で敗れている。まるで大人と子どもが戦ったようなゲームだったけど、そのなかでただひとり、個の能力でドルトムントに対抗していたのが、レナトだった。
 
 今回のオファーは、中国リーグの移籍ウインドーが閉まる直前に届いたものだから、もしかすると、広州富力はフロンターレ対ドルトムントの試合を観て、レナトに惚れたのかもしれない。そこですぐ大金を用意できてしまうところに、改めて中国の経済的な強みが感じられる。
 
 今回の高額オファーは、まさにレナトがその実力で勝ち取ったもので、これこそプロ選手にとっての“本物の移籍”だ。レナトがそれだけの金額に値する選手だと評価されたわけだからね。
 
 逆に言えば、年俸を下げてまでまとめる移籍や、移籍先から所属元に1円も支払われない移籍、スポンサーや放映権料といった“おみやげ”付きの移籍というのは、本物の移籍とは言えないよ。
 
 今、中国リーグのクラブはお金に糸目をつけず、世界中から選手を買い漁っている。レナトの獲得も、こうした流れに沿ったものだろう。
 
 残念なのは、中国リーグのクラブから日本人選手に高額なオファーが届かないこと。それは、大金を払って獲得したいと思える選手が日本人選手の中にいないという意味でもある。その点で、中国から評価されたのが、岡田監督(編集部・注/12年1月から13年11月まで杭州緑城で指揮)だけというのは寂しいことだね。