守備と走塁の意識の差

  ヒット数は12本と9本。両チームの打線はほぼ互角であった。試合の明暗を分けたのは守備と走塁の意識の差であった。

 富士見が左腕の野田 輝石(3年)、小鹿野がエースの高橋 祐麻(3年)が先発したこの試合、先制したのは富士見であった。

 初回富士見打線が高橋(祐)の立ち上がりを攻める。一死から2番・栗原 慶一郎(3年)が四球で出塁すると、続く大城 駿也(3年)の所で富士見ベンチはいきなりエンドランを仕掛ける。これが見事に決まり一死一三塁とチャンスを広げると、さらに大城が二盗を決め一死二三塁とする。4番・橋本 秀一(3年)も四球を選び一死満塁とするが、続く高野 勇希(3年)はセカンドゴロに倒れ併殺かと思われたが、ショートの一塁への悪送球の間に富士見が2点を先制する

 一方の小鹿野もその裏すぐに反撃を開始する。野田の立ち上がりを攻め、一死から2番・今野 京祐(3年)がライト前ヒットを放ち出塁すると、続く山浦 郁哉(3年)の所で小鹿野ベンチもフルカウントからランエンドヒットの形を取る。結局、山浦は四球を選んだのだが、一塁走者今野は何を思ったか二塁を大きくオーバーランし、そのまま挟まれてアウトとなる。それでも4番・高橋(祐)がレフト前ヒットを放ち再び一二塁とするが、後続が倒れ無得点に終わる。

 2回以降立ち直った小鹿野・高橋(祐)に対し、富士見・野田は不安定な投球が続く。

 小鹿野はその野田の3回裏、この回先頭の大城 颯英(3年)がショートゴロエラーで出塁すると続く今野が送り一死二塁とする。さらに大城は相手キャッチャーのファンブルの際に三塁を奪うと、ここで3番・山浦がセンター前タイムリーを放ち1点を返す。さらに山浦がパスボールの間に二塁へ進むと、続く高橋(祐)がセンター前ヒットを放ち一死一三塁とする。ここで5番・山下 和輝(3年)が犠飛を放つが今度は三塁走者のタッチアップのスタートのタイミングが早過ぎアピールプレーで同点は幻となる。

 するとここから流れが富士見に傾き出す。

 4回表、一死から6番・野田がライトへ特大の本塁打を放ち3対1と再び2点差とすると、5回表には、二死から大城、橋本の連打で一二塁とし、ショートゴロエラーでまずは1点。さらに野田が四球を選び満塁とすると続く梅宮 英佑(3年)が右中間へ走者一掃となるタイムリー二塁打を放ち7-1とし小鹿野を一気に突き放す。

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 6回表にも栗原のセンター前タイムリーを放ち8対1とし、6回裏からは富士見はエースの横山 圭助(3年)をマウンドへ送る。富士見が一気にコールドで決めるかと思われたが、ここから小鹿野が驚異的な粘りを見せる。

 まずは6回裏、この回先頭の高橋(祐)が四球で出塁すると、続く山下がライト越えの二塁打を放ち無死二三塁とチャンスを広げる。ここは横山が踏ん張り内野ゴロによる1点のみに抑える。

 だが、8回裏一死から5番・山下が四球で出塁すると、続く須崎 健(1年)、久保田 翼(2年)の連打で満塁とする。ここで8番・高橋 完太(1年)は押し出し死球を選びまずは1点、さらに二死後1番・大城がレフト前2点タイムリーを放ち8対5と3点差まで追い上げる。

 さらに9回裏、この回先頭の山浦が三振振り逃げで出塁すると、続く高橋(祐)も四球を選び無死一二塁と小鹿野は絶好のチャンスを掴む。だが、5番・山下が凡退すると、続く須崎の大きなフライで抜けると思ったか大きく飛び出した二塁走者・山浦が帰塁できず併殺になる。何かこの試合を象徴するような終わり方で富士見が逃げ切った。

 まずは、富士見だが打線の迫力はさすがであった。この日はややスローイングに難がある相手キャッチャーに対し、機動力を使いうまく攻めた。守備も鍛えられている。相手の打線が良かったことを差し引いても、富士見の上位進出へ投手陣の整備が急務であろう。

 一方の小鹿野だが、バッティングに関しては強打の富士見打線に引けをとらない申し分のないものだった。だが、守備は4エラーと乱れた。また走塁では得点に絡むような大きなミスが出た。特にこの走塁ミスが大きかった。これがなければ互角の展開に持ち込めた可能性があっただけに実に惜しい。幸いベンチ入りメンバーに1、2年生が多いだけに今日の試合を教訓として欲しい。

(文=南英博)

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