「極道大戦争」宣伝プロデューサーの仕事「噛まれたら、みんなヤクザ。」誕生秘話
「噛まれたら、みんなヤクザ。」
6月20日から公開している三池崇史監督最新作『極道大戦争』。噛んだ相手をヤクザにしてしまう〈ヤクザヴァンパイア〉として覚醒する青年・影山亜喜良を市原隼人が演じる。リリーフランキーや高島礼子、青柳翔や渋川清彦らがヤクザとして大登場する。
「極道大戦争」の秘密を、日活の宣伝プロデューサー、小沼賢宜にインタビューしてきた。
──見ているあいだ、ずっとびっくりしていました。コメディなのかシリアスなのか、ゾンビ映画なのかヴァンパイア映画なのか、115分間わからなかったです。
小沼 映倫の審査の方も同じようなことおしゃってました。ふつうなら「これだとPG」「これならR15+」という話から始まるんですが、まず「この映画のジャンルはなんですか?」と。これってこの映画のプラスな部分だと思うんです。どのジャンルの枠にもはまってるようで、はまってない。ジャンルで分けられないし、分けたくない映画といいますか。
──宣伝という立場からすると、そういう映画は苦労するんじゃないですか?
小沼 いえいえ。「ラブストーリーだから見たい」「ホラーだから見たい」という人って、そこまで多くないんじゃないかな?と思っていて。 「なんか面白そう」「なんか笑えそう」「なんかかっこいい」という感じで「なんか」が何かはわからないけど映画を見に来る。その「なんか」はジャンルじゃないのかなと。
──確かに私も「なんか変な映画だ」と思いました。「噛まれたら、みんなヤクザ。」というキャッチコピーも、なんか……よくわからなかったです。
小沼 今回ジャンルではなく「噛まれたらヤクザになってしまう、カタギがどんどん減っていってヤクザが困っちゃう」という設定を押し出して、「噛まれたら、みんなヤクザ。 ってどういうことだよ!?」と、見たことないものに触れるワクワクを感じてもらえたら嬉しいです。
──このキャッチコピーはいつごろ決まったんですか?
小沼 そうとう早い段階、宣伝の立ち上げのタイミングで決まりました。宣伝は、先にスタートしている企画や制作の人たちと話をして、どう売るかを考える仕事。僕ひとりで考えるというよりは、いろんな人の意見や見方を取り込んで決めていきます。このワードはみんなが「これはわかりやすい!」と太鼓判を押したものです。
──2015年にこういうハチャメチャな邦画を見られるとは思わなかったです。
小沼 ベストセラーの原作ものや、人気ドラマから映画へ……という流れが、最近の邦画だと多くなっているように思います。そういった中で、「こういうオリジナル映画があったら面白いんじゃない!?」という作り手のみなさんの初期衝動が映画につながっている『極道大戦争』のような作品はそんなに多くはないのかなと思います。
──そういう作品を生み出すことができた理由は?
小沼 やっぱり三池監督の存在がすごく大きいですねと思います。三池監督という「看板」があって、「三池監督となら面白いことができるんじゃないか」とものすごく豪華なキャストが集まっています。
──三池監督はもともとVシネマでヤクザものや極道ものをたくさん撮っている。ある意味「原点回帰」の作品ですね。
小沼 三池監督は助監督時代、日活撮影所で長い時間を過ごしていらっしゃったそうです。『極道大戦争』も日活撮影所で撮っています。若いころの体力やスピード感とは違うところで、「今どれだけできるだろうか」という挑戦もあったみたいですよ。原点回帰であるのと同時に、挑戦作でもあるんです。
──「ザ・レイド」のヤヤン・ルヒアンさんが出演して、めちゃくちゃかっこいいアクションシーンを繰り広げていますが……。
小沼 そもそも、一番最初にキャスティングされたのがヤヤンさん。製作プロデューサーからお話をしたら「是非」と返事がもらえたそうです。そうしたら、今度はヤヤンさんと戦える人を探さなきゃいけない!
──そうとう動ける人じゃなきゃだめですよね。そこで名前が挙がったのが……。
小沼 市原隼人さん。製作プロデューサー陣が、市原さんの監督・主演のショートフィルム「バタフライ」を見たそうで。けっこう激しいアクションをしている映画なんです。それで「市原隼人さんだったらいけるんじゃないか?」と。ちょうどタイミングが合って、出演してもらえました。
──ふたりの筋肉がものすごくかっこよくて、ドキドキしてしまいました。
小沼 市原さんは「鍛えなおした」とインタビューで言ってましたね。……筋肉需要、ありますか? どんどん筋肉見せたほうがいいですか?
──はい! ちなみに「極道大戦争」は先日のカンヌ国際映画祭に参加しています。ヤヤンさんもステージに出演したとか。
小沼 すごく盛り上がったみたいです。ヤヤンさんがドレスアップした格好で、ステージ上で殺陣アクションをしてくれて、外国のお客さんが大喜びでした。三池さんのサプライズ映像コメントも、歓声が大きすぎて音声が聞こえなくて、日本語を喋ってるのに英語の字幕を見ないと何を言ってるのかわからない状態だったそうです。
──くまモンと作中の重要キャラクター「KAERUくん」も共演していました。
小沼 実はあれ、僕も知らなくて。現地のスタッフから「くまモンとの2ショット撮影に成功しました」って連絡が来て「マジか」って思いました(笑)。
(後編に続く)
日活宣伝部所属。
宣伝担当作品は「凶悪」「TOKYO TRIBE」「極道大戦争」「Mr.Children REFLECTION」などがある。
映画『極道大戦争』
監督/ 三池崇史
脚本/ 山口義高
配給・宣伝/日活
(C) 2015「極道大戦争」製作委員会
予告編(YouTube)
(青柳美帆子)
6月20日から公開している三池崇史監督最新作『極道大戦争』。噛んだ相手をヤクザにしてしまう〈ヤクザヴァンパイア〉として覚醒する青年・影山亜喜良を市原隼人が演じる。リリーフランキーや高島礼子、青柳翔や渋川清彦らがヤクザとして大登場する。
「極道大戦争」の秘密を、日活の宣伝プロデューサー、小沼賢宜にインタビューしてきた。
「噛まれたら、みんなヤクザ。」
──見ているあいだ、ずっとびっくりしていました。コメディなのかシリアスなのか、ゾンビ映画なのかヴァンパイア映画なのか、115分間わからなかったです。
──宣伝という立場からすると、そういう映画は苦労するんじゃないですか?
小沼 いえいえ。「ラブストーリーだから見たい」「ホラーだから見たい」という人って、そこまで多くないんじゃないかな?と思っていて。 「なんか面白そう」「なんか笑えそう」「なんかかっこいい」という感じで「なんか」が何かはわからないけど映画を見に来る。その「なんか」はジャンルじゃないのかなと。
──確かに私も「なんか変な映画だ」と思いました。「噛まれたら、みんなヤクザ。」というキャッチコピーも、なんか……よくわからなかったです。
小沼 今回ジャンルではなく「噛まれたらヤクザになってしまう、カタギがどんどん減っていってヤクザが困っちゃう」という設定を押し出して、「噛まれたら、みんなヤクザ。 ってどういうことだよ!?」と、見たことないものに触れるワクワクを感じてもらえたら嬉しいです。
──このキャッチコピーはいつごろ決まったんですか?
小沼 そうとう早い段階、宣伝の立ち上げのタイミングで決まりました。宣伝は、先にスタートしている企画や制作の人たちと話をして、どう売るかを考える仕事。僕ひとりで考えるというよりは、いろんな人の意見や見方を取り込んで決めていきます。このワードはみんなが「これはわかりやすい!」と太鼓判を押したものです。
こういう映画は生まれづらい
──2015年にこういうハチャメチャな邦画を見られるとは思わなかったです。
小沼 ベストセラーの原作ものや、人気ドラマから映画へ……という流れが、最近の邦画だと多くなっているように思います。そういった中で、「こういうオリジナル映画があったら面白いんじゃない!?」という作り手のみなさんの初期衝動が映画につながっている『極道大戦争』のような作品はそんなに多くはないのかなと思います。
──そういう作品を生み出すことができた理由は?
小沼 やっぱり三池監督の存在がすごく大きいですねと思います。三池監督という「看板」があって、「三池監督となら面白いことができるんじゃないか」とものすごく豪華なキャストが集まっています。
──三池監督はもともとVシネマでヤクザものや極道ものをたくさん撮っている。ある意味「原点回帰」の作品ですね。
小沼 三池監督は助監督時代、日活撮影所で長い時間を過ごしていらっしゃったそうです。『極道大戦争』も日活撮影所で撮っています。若いころの体力やスピード感とは違うところで、「今どれだけできるだろうか」という挑戦もあったみたいですよ。原点回帰であるのと同時に、挑戦作でもあるんです。
ヤヤン・ルヒアンと市原隼人の筋肉アクション
──「ザ・レイド」のヤヤン・ルヒアンさんが出演して、めちゃくちゃかっこいいアクションシーンを繰り広げていますが……。
小沼 そもそも、一番最初にキャスティングされたのがヤヤンさん。製作プロデューサーからお話をしたら「是非」と返事がもらえたそうです。そうしたら、今度はヤヤンさんと戦える人を探さなきゃいけない!
──そうとう動ける人じゃなきゃだめですよね。そこで名前が挙がったのが……。
小沼 市原隼人さん。製作プロデューサー陣が、市原さんの監督・主演のショートフィルム「バタフライ」を見たそうで。けっこう激しいアクションをしている映画なんです。それで「市原隼人さんだったらいけるんじゃないか?」と。ちょうどタイミングが合って、出演してもらえました。
──ふたりの筋肉がものすごくかっこよくて、ドキドキしてしまいました。
小沼 市原さんは「鍛えなおした」とインタビューで言ってましたね。……筋肉需要、ありますか? どんどん筋肉見せたほうがいいですか?
──はい! ちなみに「極道大戦争」は先日のカンヌ国際映画祭に参加しています。ヤヤンさんもステージに出演したとか。
小沼 すごく盛り上がったみたいです。ヤヤンさんがドレスアップした格好で、ステージ上で殺陣アクションをしてくれて、外国のお客さんが大喜びでした。三池さんのサプライズ映像コメントも、歓声が大きすぎて音声が聞こえなくて、日本語を喋ってるのに英語の字幕を見ないと何を言ってるのかわからない状態だったそうです。
──くまモンと作中の重要キャラクター「KAERUくん」も共演していました。
小沼 実はあれ、僕も知らなくて。現地のスタッフから「くまモンとの2ショット撮影に成功しました」って連絡が来て「マジか」って思いました(笑)。
(後編に続く)
小沼賢宜プロデューサープロフィール
日活宣伝部所属。
宣伝担当作品は「凶悪」「TOKYO TRIBE」「極道大戦争」「Mr.Children REFLECTION」などがある。
映画『極道大戦争』
監督/ 三池崇史
脚本/ 山口義高
配給・宣伝/日活
(C) 2015「極道大戦争」製作委員会
予告編(YouTube)
(青柳美帆子)