トップ1000人が証言「お金で失敗しない生き方」【中】

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一代で財産を築いた人たちは、どのような考えを持ち、どのような行動をしているのか。その共通点を探ることで、ミリオネアになるための条件が浮かび上がってくるはず。

そこで3人のミリオネアにお金や仕事に対する考え方、生活習慣などを聞き、大富豪の実態に詳しい本田健氏に分析をしてもらった。

■信じる力:なぜ頭がいい人は成功できないか

本田氏がお金持ちの共通点として真っ先にあげるのは、「ミリオネアメンタリティー」だ。

「大富豪になった人は、自分がやることは必ず社会に受け入れられるというメンタリティーを持っています。ある意味で自信過剰と言えるでしょう」

なぜ、過剰なほどの自信にあふれていることが成功につながるのか。

「うまくいかない人は頭がよすぎてリスクばかりが目につくので、そもそも挑戦しようとしません。一方、ミリオネアはリスクを気に留めていなかったり、リスクの存在を知っても『自分ならいける』と考えて、人が躊躇するところをあっさりと飛び越えていく。この差が大きいのです」

若くしてミリオネアになったアズグループホールディングス会長の松田元氏は、本田氏の分析を裏づけるようにこう話す。

「昔から、自分は人と違って、何をやっても神がかり的にうまくいくと考えていました。それは多大な思い込みかもしれません。しかし、思い込みは行動を呼び込むので、思い込む中身が事実でもウソでも関係ない。思い込むこと自体が大切です」

人間関係:なぜ約束を守らないことは犯罪なのか

本田氏が注目しているミリオネアの共通点は「応援され力」だという。

スティーブ・ジョブズが新しい製品を発表すると、発売3日前から店頭に人が並びました。このような現象が起きるのは、ファンが製品よりも、ジョブズという人物に魅了されているから。このように自然に人を引き込んで味方につける力を私は『応援され力』と呼んでいます。一代で財をなした人はカリスマ性のある人が多く、応援され力も高いですよ」

しかし、カリスマ性は簡単に身につくものではない。ミリオネアたちは、自然に人を惹きつける魅力をどうやって磨いてきたのだろうか。松田氏は、ベンチャー企業の雇われ社長をしていたころのエピソードを引き合いに出して、次のように話してくれた。

「事業計画を達成できずに株主総会でぼろぼろに叩かれたことがあります。このとき学んだのは、ビジネスにおいて約束を守らないことは犯罪的であるということ。それ以来、できないことにはコミットしないようにしてきました。商機をなくすことより、信頼を失うことのほうが怖い。そのような姿勢で仕事をしていたら、しだいにお客様から『あいつはウソをつかない』と評価されて、多くの依頼をいただけるようになりました」

考えてみると、ジョブズは生涯、サプライズを提供するというユーザーとの約束を守り続けた。つねに期待を裏切らない姿勢が、まわりからの支持につながるのだ。

■努力の仕方:なぜ「愚直に一筋」がいいか

森平茂生氏が日本未上陸のクロックスと出合ったのは、たまたま別の仕事で訪れたハワイのアパレル店だった。

「勧められるまま試着すると、とても気持ちがよくて即、購入しました。あまりに履き心地がいいので自分で売ってみたくなり、アメリカの本社に直談判にそれが縁で日本法人を立ち上げることになりました」

こうして日本上陸を果たしたクロックスは若者を中心に大ヒット。日本法人は3年で年商100億円になった。

このエピソードを、本田氏は「ミリオネアになる人は運も強い」と分析。

「一代で財をなす人は、ターニングポイントで時流に合う商材を見つけたり、機会をくれる人と出会ったりしています。もちろん運がいいだけではダメ。森平さんは、本社に直談判に行く行動力があったから運がお金へと変わった。ベースになる力があるからこそ、運を活かせるのです」

アズの松田氏は、運を引き寄せるには一貫性が欠かせないと説く。

「僕のライフワークは、フリーターを再生させること。学生時代に事業を始めたころから、一貫して訴え続けているテーマです。そのせいか最近は、フリーター関連ビジネスの話や協力者が、向こうからやってくるようになった。ブレているところにチャンスはやってきません。このテーマならあの人だ、と思われるくらい続けること。運というものは、一つのことを愚直に貫いている人のところに転がり込んでくるのです」

■夫婦関係:なぜ「金持ち妻は商家の娘」が多いか

本田氏は億万長者についてのアンケート調査を行ったとき、ある傾向に気づいたと言う。

「お金持ちになるためには、自分を支えてくれるパートナーの存在が大切だ」と考えている人の割合は、年収3000万円以上で約3人に1人。一方、年収1000万円未満の場合は5人に1人。収入が多い人ほど、妻や夫の存在を大切に考えていた。

「家庭は人生の基盤。ここが安定していないとビジネスにも影響が出て、うまくいかなくなるのでしょう」(本田氏)

今回話を聞いたミリオネア3人はパートナーがいて、夫婦仲も円満だ。森平氏は、妻への感謝をこう述べていた。

「私は2度、人生で大きな転機を迎えました。1回目は、父の経営していた会社を辞めて、父から受け継いだ財産をすべて返上したとき。2回目はクロックスの日本法人社長を辞めて、独立したときです。妻に退職を相談したら、『自分の好きなようにしたら』と言って背中を押してくれた。いずれのときもしばらくは貯蓄を切り崩すことになりましたが、それについても何も文句は言われなかった。妻には本当に感謝しています」

じつは3人のミリオネアは、共通点がもう1つある。

「妻の両親は商売人」(森平氏)、「夫はインドネシア出身の華僑で、親は経営者」(マダム・ホー)、「妻は造船会社の社長令嬢」(松田氏)というように、いずれもパートナーが経営者の息子・娘なのだ。しかし、経営者の子供と結婚することがミリオネアの条件だと考えるのは短絡的だ。マダム・ホーは、夫とのなれそめを次のように明かす。

「夫とはアメリカ留学中に知り合いました。じつはほかの人たちからもプロポーズを受けましたが、そのころアジアからアメリカに私費留学しているのはお金持ちの家の子息ばかり。みんな『親が社長だ』『実家が病院を経営している』とアピールしてくるので、うんざりしていました。そんな中で唯一、家業のことを何も話さなかったのが夫でした。私も商家の娘なので経営者の息子とは通じ合える部分があるのですが、親の資産や地位をあてにしているような人とはパートナーとしてうまくやっていける気がしません。夫は経営者の息子でも、親に頼らず自分で道を切り拓くと考えていた。だから私たち夫婦はうまくいったのです」

ビジネスには浮き沈みがあることを肌で理解している点で、パートナーが経営者の子供であるメリットはあるだろう。ただ、価値観が合わなければパートナーとしてやっていけない。そう考えると、必ずしも親の職業を気にする必要はない。

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お金の専門家 本田 健(ほんだ・けん)
経営コンサルティング、会計事務所など複数の会社を経営する「お金の専門家」。著作シリーズは累計520万部を突破。主な著書に『ユダヤ人大富豪の教え』『20代にしておきたい17のこと』など。

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(村上 敬=構成、文)