豊田は「空中戦は少し自信になったというか、十分にやれる」とコメント。チームに貢献するパフォーマンスを見せた。

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 後方からの追い上げを目ざす今回のメンバーには、個人だけでなくチームの結果も必要なのである──中国と3対3で引き分けた前回の更新分を、僕はこんなひと言で締めた。

 7月25日に行なわれたオーストラリア戦は、3対2の勝利に終わった。2対0から2対2に追いつかれたのはいただけないが、どうにか勝ち切ったのは評価できる。

 勝因にはザックの選手起用をあげたい。

 中国戦後に行なわれてきたフォーメーション練習は、すでに出場した選手とそうでない選手を混ぜ合わせてきた。前日練習後を終えらザックは、「多くの選手を見ることが目的だが、全員を試合で見られる可能性は少ない」と話している。この時点では、2試合連続でスタメンに選ばれる選手もいるのでは、と予想されていた。ところが、オーストラリア戦はスタメンが総入れ替えされた。選手たちには当日のミーティングで知らされたという。

 先発を告げられた選手たちは、一様に気持ちをたかぶらせた。「ここまで来てずっとベンチに座るのも悔しいので、やってやろうって感じになった」と大迫は言う。センターバックの一角に指名された千葉も、「フレッシュなメンバーでいくぶんモチベーションが高いし、自分自身も思い切っていこうと思った」と話している。前向きなエネルギーを身体に漲らせたのは、彼ら2人だけではなかったはずだ。

 試合序盤は「ちょっと緊張しているところがあった」とザックは振り返る。「半分以上の選手が国際Aマッチデビューということが影響した」というのは、避けがたい現実である。

 それでも、開始早々の失点でばたついた中国戦に比べれば、スムーズな試合の入りだったと言うことはできる。ダブルボランチの1枚が最終ラインに下がるビルドアップは、トレーニングで繰り返してきたものだ。センターバックが積極的に持ち出すのも同様で、「DFラインからのビルドアップは良くできていた」とザックも及第点を与えている。中国戦でしばしばノッキングしたスローインも、トレーニングによって改善されたもののひとつだ。

 試合後に抱いた収穫と課題の割合は、選手によってそれぞれだろう。ただ、中国戦からさらに3日のトレーニングを経たことで、チームコンセプトの理解度は高まっていた。

 試合内容が良くなるのは、その意味で当然だ。この日のオーストラリアならもっと楽に勝てるし、勝たなければならないが、とにかく勝点3をつかんだことは大きい。2引き分けの韓国は、日本を下せば優勝のチャンスがある。欧州組不在をアピールにつなげたいのは、彼らも同じだ。ここまで閑散としたスタジアムで戦ってきたが、28日のチャムシルは国際大会にふさわしい空気に包まれるはずだ。

 何よりも、オーストラリアからつかんだ勝利は、韓国に闘争心を沸き立たせ、ゲームの緊迫感が増す。日本の選手には難しい状況となるが、海外組を追い上げていく彼らには歓迎すべき舞台だ。タフなゲームを積んでいかなければ、先行する者の背中は見えてこない。齋藤と大迫のゴールがもたらした勝利には、そうした価値もあるのだ。

 第一戦でもっとも注目されたのが柿谷だったとすれば、オーストラリア戦は豊田だろう。

 海外組を含めた現在のチーム状況は、センターラインのバックアップを求めている。ただ、センターバックには栗原が、ボランチには細貝が3番手として名を連ねる。ザックも相応の信頼を寄せている。

 それに対して、1トップは前田とハーフナーに続く人材が混沌としている。本田や岡崎が2列目から最前線へポジションを移すことがあるように、彼ら2人の立場も絶対的なものではない。

 その意味で、1トップの新たな候補者の出現が急がれている。柿谷とはまた違うタイプの豊田に、視線が集まる理由だ。