試合を終えた豊田は、「ゴールという結果を残せなかったので、非常に悔しいデビュー戦です」と切り出した。ドンピシャのヘディングシュートがGKの正面をついた36分の場面や、技巧的なヘッドがわずかにワクを逸れた65分の一撃が、頭のなかで渦巻いていたに違いない。

 とはいえ、全体的なパフォーマンスは悪くない。「スタメン発表後に話し合った」という大迫との2トップは、「いい距離感を保ちながらプレーしよう」という狙いどおりのコンビネーションだった。パートナーがあげたふたつのゴールは、いずれも豊田のアシストである。

 空中戦の競り合いには合格点がつく。ゴールを背にした競り合いは、前田とハーフナーのいずれにも優ることを示した。ヘディングによるポストプレーやゴール前でのつなぎも、これまでのチームにないものである。対戦相手のレベルが違うだけに慎重な比較が必要だが、「空中戦は少し自信になったというか、十分にやれる」という彼の言葉は、そのまま受け取っていいだろう。

 こうなると、柿谷と豊田の組み合わせも見てみたい。ザックは柿谷を「現時点ではFW」と位置付けているが、トレーニングではトップ下にも入っている。ほぼ即興と言っていいなかでどのようなハーモニーを奏でるかは、彼らの適応能力を見極めるためにも確認しておきたいのだ。