22日のヨーロッパリーグ・グループリーグ第5節、ラツィオ対ローマの一戦を前に、ローマの街で狂気が繰り広げられた。事件が起きたのは21日深夜1時過ぎ。ヘルメットなどで顔を隠した集団がパブ「Drunken Ship」でトッテナムのサポーターたちを襲撃したのだ。

8人のイギリス人ら計10名が負傷し、7名が病院に運ばれた。1名は深刻な状態で運ばれたが、命の危険はないようだ。警察は22日にローマ在住のローマのウルトラス2名を殺人未遂の容疑で逮捕した。ほかにも15名の身元が判明し、警察が捜査している。

捜査によると、サッカーというより人種差別が動機の模様。ロンドンでの試合では一部のラツィオサポーターによる人種差別チャントがあったが、両クラブのサポーター間に特別な怨恨はない。だが、トッテナムが本拠とする地区はユダヤコミュニティーがあり、一部サポーターはダビデの星のフラッグを掲げている。

「Drunken Ship」のオーナーは、「ラツィオファンの仕業か? それは分からない」としながらも、「確実なのはトッテナムファンが狙われたということだ」とコメント。「すべてが計画されたことだった。とても組織されていた」と話している。

イングランドのサポーターがローマへ来たときの事件は少なくない。2007年には、フレンドリーマッチにもかかわらず、ローマとウェスト・ハムの試合で両者のサポーターが衝突した。この年のローマとマンチェスター・ユナイテッドの試合では、大規模な乱闘が起き、8名が負傷して病院に運ばれ、4名のイギリス人が逮捕されている。08年11月のチャンピオンズリーグ(CL)、ローマ対チェルシーの試合でも乱闘が起き、3人のイギリス人が負傷。09年のバルセロナとマンチェスター・ユナイテッドによるCL決勝でも、2名が負傷し15名が逮捕されるという事件が起きていた。

イギリスのメディアは事件に大きな反応を示しており、デイビッド・ラミー議員は「プレミアのクラブがローマで試合をするたびにイギリス人ファンが刺されている」とコメント。ツイッターで「いつも『変わる』と約束するが、決して何も変わらず、こういう話が繰り返される」と批判している。ローマにいたトッテナムのファンは、「暴力沙汰で我々のクラブたちは長年にわたって国際舞台から締め出された。今は我々が狙われるのに、適切な措置が取られない」と不満を口にした。

ラツィオのクラウディオ・ロティート会長は「こういったことは常にとがめられるべきだ。だが、現時点でクラブの知る情報によると、確実にはラツィオサポーターによる仕業とは分かっていない」とコメントしていた。

なお、22日の試合中には、ラツィオのサポーターが陣取るスタンドから、10分前後に「ユダヤのトッテナム」というチャントが飛び、さらにその後「パレスチナを解放しろ」という横断幕も掲げられている。試合は0−0のスコアレスドローに終わり、ラツィオは決勝トーナメント進出を決めている。