歯科医に聞く。むし歯のウソ、ホント検証




シュガーレスのお菓子ならむし歯にはならない!? トローチなら!? むし歯への疑問、うわさは尽きません。本当のところはどうなのでしょうか。

歯学博士で歯科・口腔衛生外科の江上歯科(大阪市北区)院長・江上一郎先生に検証をお願いしました。



<検証1>

シュガーレスのお菓子ならむし歯にはならない?



江上先生 お菓子の成分を確かめなければ何とも言えませんが、砂糖が入っていないということであれば、むし歯になる確率は低いでしょう。



砂糖は歯を打撃します。歯垢(しこう。プラーク)の中のむし歯菌が食べ物に含まれる「糖質」を材料に酸をつくり、歯のエナメル質を溶かしはじめます。これがむし歯です。つまり、砂糖はむし歯菌の栄養です。



シュガーレスというのは、文字通り、砂糖、糖質が含まれない食べ物だと認識してください。



<検証2>

甘い物を食べないとむし歯にはならない?



江上先生 甘くなくても、でんぷんでできているお菓子、小麦粉など炭水化物を含むお菓子は糖質ですから、砂糖と同じく、むし歯菌が酸をつくります。甘い、辛いだけで判断するのではなく、糖質かどうか、で判断しましょう。



また、むし歯は「酸」によってエナメル質が浸食されることで起こるため、砂糖と同じく歯に打撃を与えるものに、コーラや黒酢飲料、スポーツ・ドリンク、レモン、オレンジなど、酸性度が高い飲食物があります。これらを口に含んでいると、歯は酸に浸っていることになり、酸の攻撃を受け続けることになります。



「糖質を含む食べ物」、「酸性が高い飲食物」がむし歯をつくるのです。



<検証3>

トローチをなめてもむし歯にならない?



江上先生 トローチはのどの炎症止めという役割のほかに、口腔(こうくう)内の殺菌、消毒効果があり、なめることで細菌数は減少します。よって、トローチをなめてもむし歯にはなりません。

ただし、甘味料など砂糖が添加されている場合は、もちろん、むし歯の原因になりますから注意してください。



<検証4>

寝る前に甘い物を食べるとむし歯になる?



江上先生 起きているときよりも、なりやすいでしょう。むし歯の発生を抑える役割をする唾(だ)液の分泌量は、寝ている間には激減します。砂糖が歯に付着したまま寝ると、むし歯菌は喜んで酸をつくり、歯に打撃を与えます。



<検証5>

カルシウム入りのお菓子は歯によい?



江上先生 砂糖が添加されていなければ、よいと言えるでしょう。歯は酸の攻撃を受けると少しずつ溶け始め、これを「脱灰(だっかい)」といいます。食後しばらくたつと、唾液の効果によって口の中が中性に戻ります。

すると酸によってとけた歯の表面に、唾液中のカルシウムがくっついて修復をし始めます。これを「再石灰化(さいせっかいか)」と呼び、早期のむし歯はこの再生力でもって自力で治っていきます。カルシウムを含む食べものは、この再石灰化を促します。



江上先生はこう説明を加えます。

「むし歯になるのは、砂糖や酸が歯に付着することです。極端に言えば、砂糖をオブラートに包んで飲み込めば歯に付着しないため、むし歯にはなりません」



つまり、砂糖や酸が歯に付着しないために、唾液の力で流し込む、まめに歯磨きをする、食後にキシリトール入りのガムをかむなどをすれば、むし歯にはなりにくいということです。歯の表面に付着する食べものに注意したいものです。



監修:江上一郎氏。歯学博士。専門は口腔(こうくう)衛生。歯科・歯科口腔外科の江上歯科院長。

江上歯科 大阪市北区中津3-6-6 阪急中津駅から徒歩1分、御堂筋線中津駅から徒歩4分 TEL:06-6371-8902 http://www.egami.ne.jp/



(藤井空/ユンブル)