証券記者が続ける。
 「政府=金融庁にとって、外資からの資金調達に活路を求めかねない彼の復帰は歓迎できません。同じことが東証にもいえる。もし上場廃止を決定すれば、これを機にオリンパス株は猛然と売り浴びる。そのタイミングを捉えて外資が二束三文となった株を買いあされば乗っ取りに王手が掛かる。ただでさえ金融庁に首根っこを押さえられている東証が、お上の意向に逆らえるわけがありません」

 東証を発信地とする上場維持のフライング報道と、ウッドフォード元社長の“敗北宣言”は、ほぼ同じタイミングでのことだった。言い換えれば当局の強い意向をくんだ国内の主要株主が“ウッドフォード外し”を画策、その厚い壁を痛感した同氏が自らの社長復帰を断念したのが真相だろう。

 しかし東証が、堂々たる粉飾決算に手を染めたオリンパスの上場を認めれば、世界の目には「日本の市場は粉飾天国」としか映らない。確かに決算発表のタイムリミットや債務超過など上場廃止についての線引きはあるものの、虚偽記載の目的や規模が市場にどれだけの影響を与えたから上場を廃止し、どの程度ならば条件つきで上場維持を認めるのかについて、東証には明確な規定がない。それを良いことに関係者のサジ加減がまかり通れば、市場への信頼は失墜する。
 「昨年暮れ、米ゴールドマン・サックスが、マネースキャンダルの混乱に乗じて大量のオリンパス株を空売りし、ボロ儲けした。これに激怒した金融庁は、増資後の経営に海外企業が介入することなどもってのほかとなり、ウッドフォード氏復帰にも不快感をあらわにした。ゴールドマン・サックスのえげつない商法は問題ですが、その分を割り引いたとしても、外国の投資家は『政府主導の露骨な海外排除シフト』とささやきあっています」(金融情報筋)

 実際、そんな政府=金融庁の腹のなかをくみ取ったのか、東証は昨年暮れに1部・2部市場の上場基準を大幅に緩和すると発表した。直前の決算が赤字であっても「2年間トータルで経常利益が5億円以上」であれば上場を認めるなど、質の低下には目をつむるという奇策に打って出たのである。
 「このところ経営統合やMBO(経営陣による企業買収)などで上場企業の数が減っている。これに危機感を募らせた東証が恥も外聞もなく『赤字会社、大歓迎』とぶち上げ、オリンパスの上場維持に対する世間の批判をかわそうとしているのだろう。まさに厚顔無恥だね」(地場証券役員OB)

 東証がどんなに奇策を弄したところで「日本の常識は世界の非常識」である。