「3 異文化同士の摩擦」の続き。3−5 まとめ

 前回は、二国間の違いを分かりやすく見るために、変化が分かりやすいものをアンケートの結果から抜き出して考察を加えたものである。以下、それらを踏まえアンケート全体から観察できた結果をまとめたい。

 質問2に関して。日本人が交通ルールに関心を示しているのは私も容易に納得出来た。交通ルールに関して、日本と中国とでは根本的に考え方が違っている。日本の交通ルールは基本的に歩行者を優先させたものである。反対に中国は自動車が優先に進むので、歩行者は道を歩く際に一時も気が抜けない。逆に日本の様に譲り合いの精神からお互いがタイミングを失い、両方が同時に出てしまい事故を起こすのも珍しくない。一口でどちらが良いとは言えない印象を受けた。

 反対に質問2での中国人の関心は、ごみ処理問題に向いている。確かにこの問題も、中国と日本では大きな違いがある。私は、それを大連では肌で感じた。中国人は道端にごみをポイ捨てすることに何も問題を感じていない様だった。ごみの分別に関しても大連では全くそれを見ることがなかった。私は亜細亜大学で部活動の一環として、大学の清掃活動に参加したことがある。とても細かく一つ一つ分別し、指導も行っていた。日本では、ごみ箱も、あき缶用や燃えるごみ用等に分けられている。そういったことを知っている中国人は交通ルールよりもごみ処理の問題に関心を示したのかもしれない。しかし日本でも多くの人々が社会的常識として分別を行おうとしても、一部に分別を行わない者や、ポイ捨てをする者が絶えないなどの問題も残っている。

 この様に見てみると、中国の人はマナーに全く興味がないわけではない。現在でも、中国の改善点すべき点を意識し、彼ら自身、今後どうしていくべきかを考えていることは、すべての質問に対する回答結果からも観察することが出来た。中国の人々たちは、中国の現実を受け止め、それらが国のイメージに反映しないまでも、いかにすれば中国も環境的に住みやすくなるかを考えていた。

 私は日本人なので、日本で身に付けたマナーを基に今回のアンケートを実施した。アンケートを実施した際に、中国の学生からは、私に対してアンケートの選択項目の決定について質問や意見が無かった。このことからは、中国でも日本のマナーや規則の厳しさに対して、強い反対意見や考え方はないことが推測出来よう。実際、ルームメイト達と過ごした数カ月間の間にそういった場面を幾つも垣間見ることが出来た。

 反対に逆に日本人の中には中国が住みやすいと言う人がいた。このように日本人であっても日本のマナーや規則をうるさいと感じる人が多くいるようだ。「そう思わない」という答えと僅差ではあったが、日本人の間に日本のマナーは「うるさい」と感じる人のほうが多かったことのほうが、私にとって残念な結果だった。マナーや規則と言うのは多少のうるささを感じて然るべきではないだろうか。それを、うるさく言うことが無くなればここまでにつくり上げたものが、簡単に崩れてしまう。うるさく言いつづけ、習慣として定着させていくことが大切なのだと感じた。

 日本人と中国人の間には様々な考え方の相違があるが、互いに受け入れあうことを忘れてはいけない。日中はこれまで幾多の摩擦を経て和解し、今日では、相手の違いをお互い受け入れようとする考え方が強くなっている。良い面も悪い面も互いにあるが、それらを理解し受け入れることが出来れば、相互のイメージの改善へと繋がるのだとアンケート、そして実体験から確信を持った。

おわりに

 今回の留学で私は沢山の人に出会った。そして、出会うたびに沢山の知識を授かった。日本にいるだけでは気が付けなかったことを、人々の繋がりを通して教わった。私はこの留学で出会った人々とのつながりを一生大切にしていきたい。永遠の宝として自分の中に留めておきたい。

 そして、今回の留学で私は多くの経験をし、学んだ。インターンシップ先では日中間の法律の比較に始まり、中国での法廷がいかなるものか、日本と中国の弁護士同士のチームワークはいかにあるべきか等、仕事の仕方を学んだ。嬉しい事にプライベートでは堅い話から砕けた話までできた。この中に、無駄な事は一つも無かったと私は考えている。ほんの些細な話でも、自分がこれからどの様に生きていくべきかを考えさせてもらえた。

 自己研究テーマでは、自分が生きてきた世界の小ささを実感した。世界には多くの考え方があり、そこにはさまざまな規則やマナーが存在している。私達は、自国を一歩外に出たら、変化する環境に適応していかなければならない。そのためには、自分が小さな世界で留まっていてはいけない。日本から飛び出し、自分が持っている小さな考え方を捨て、日々変わってゆく世界に適応していかなければならない。なによりもこのことを学ぶことが出来た。

 最後に、沢山の方々の協力があって初めて、今回この留学がこれほどまでに輝けるものになったと考えている。多忙な中、我々のために貴重な時間を割いて講義を行ってくださった協賛企業の方々、私たちを受け入れて下さったインターンシップ先の企業の方々、私達の留学が輝かしく且つ有意義なものになるように体をすり減らし、駆けずりまわって下さった先生方、優しく送り出し辛くなったら相談にのり、帰った時には温かく出迎えてくれた家族、こういった人々の支えの下に自分達が留学生活を送れた事実を忘れてはならない。皆さんに心より感謝しています。ありがとうございました。

(執筆者:古澤翔・亜細亜大学 国際関係学部3年<アジア夢カレッジ>)