湖南省湘潭市昭潭村で8月28日、近くの高速道路料金所に勤務する所長を住人多数が取り囲んで殴る事件が発生した。所長は乗りつけた乗用車に空気銃を積んでいた。近くで羊1頭が銃で撃たれて死んでおり、住民は「所長が羊を撃ち殺した」と激怒した。警察が捜査したが、村人は殺された羊をすでに食べてしまっており、証拠の銃弾は見つからなかった。中国新聞社が報じた。

 同村住民のひとりが8月28日午後4時半ごろ、銃で撃たれて死んだ羊を見つけた。1キロメートルほど離れた場所にアウディの乗用車が止まっており、そばに男性1人がいた。車内に空気銃があるのが分かった。

 同村では羊を放牧している人が多い。半年ほど前から外部から来たと見られる者に羊が空気銃で撃たれて死ぬ事件が続いており、住民は怒っていた。空気銃を持っている人を見るたびに問いただすが、いずれも「鳥を撃つだけ」などと答えるという。

 8月28日、「また羊が撃たれた。近くにアウディが止まっていた」との情報がまたたく間に広がった。住民数百人がつめかけ、乗用車を取り囲んだ。乗用車が高級車であったことも「金持ちの遊びで羊を殺された」と、怒りに火を注いだという。

 住民の何人かが、乗用車のそばにいた男性を殴った。別の住民は、男性の身分証などを取り上げた。職員証も出てきた。見ると「潭邵高速公路湘潭料金所所長 李特強」と書かれていた。男性が身分がある人間と分かり、住民はさらに激怒した。「羊泥棒を殴りころせ」と言うものも出はじめ、男性は「袋だたき」状態になった。

 李所長は最初「鳥を撃ちにきただけだ」と言っていたが、住民をなだめられないので、身をかばいながら携帯電話で警察に通報した。駆けつけた警察は、男性を保護して現場から連れ出すとともに、乗用車の内部を調べた。乗用車の内部からは、空気銃や銃弾、空気銃で撃たれたハト2羽が見つかった。

 李所長は、全身打撲や血尿などで病院に入院した。

 李所長によると、8月28日には気晴らしに散歩をしていた。時おり、鳥を撃っただけで、羊は撃っていない。「私がいた場所から羊が倒れていた場所まで1キロメートルはあったはずだ。空気銃でそんな遠くの羊は撃てない」などと主張した。

 空気銃は、高速道路の料金所にネズミが大量に出るため、退治するために購入したと説明した。

 警察は、李所長が羊を撃った事実があるかどうか調べたが、証拠は出てこなかったと発表した。羊の体に銃弾が残っていれば「動かぬ証拠」になるはずだったが、その前に住民は羊を解体して食べてしまい、銃弾は見つからなかったという。

 潭邵高速公路湘潭料金科は李所長を「取り扱いに許可が必要な空気銃を違法に扱った」として、停職と罰金2000元の処分を科した。定められた手順に従い反省させ、今後の扱いを決めるという。(編集担当:如月隼人)