家庭内の「電力線通信」 他の機器に悪影響?
家庭内の電気配線を使う電力線通信(PLC)が日本でも始まったが、2006年12月7日にアマチュア無線愛好家ら115人が国を相手取りPLCサービス認可の取り消し訴訟を東京地裁に起こした。アマチュア無線に影響を与えたり、電化製品のノイズ源となるなど、トラブルが心配だ、というのだ。
「PLCは家庭内ネットワークの本命になる」(松下電器産業)と期待されている通信で、日本では06年10月に総務省が利用を解禁した。パソコンにつながったモデムの電源プラグをコンセントに差し込むと、屋内の電気配線が通信回線になる。理論上の通信速度は最大毎秒190メガビットと、無線LANやADSLを大きくしのぎ、無線LANのように壁などの障害で通信が途切れる心配もない。将来的にはエアコンや照明、DVDレコーダーなどの家電がPLCを仲介しネットにつながり、外出先から携帯電話などで操作できるようになるらしい。
PLCと無線は同じ周波数だから、影響を受ける
その一方で、問題点も指摘されている。全国のアマチュア無線愛好家らが、国を相手取り、東京地裁に提訴した。アマチュア無線の電波が妨害され、通信が出来なくなるおそれがあるという理由だ。アマチュア無線団体は5年ほど前から家庭への導入に反対し、国側と協議してきた。
PLC行政訴訟原告団事務局団長の草野利一さんはJ-CASTニュースの取材に、
「PLCと無線は同じ周波数だから、影響を受け、住み分けができないんですよ。そして、PLCから出るノイズ電波は10メートル範囲内に伝わる計算ですから、隣の家がPLCを使ったとすれば自宅での無線はアウトになる。影響はアマチュア無線だけではありません」
というのだ。
パナソニックから発売されるPLCは、アマチュア無線への影響を無くすプログラムが組み込まれているという。
ただ、パナソニックの「注意書き」を見ると、こうなっている。
「PLC製品は以下の電化製品の電気ノイズ源となる場合があります」
とし、短波ラジオ、調光機能付き照明器具やタッチランプ、通信方式が異なるPLC製品、無線を利用した遠隔操縦機器、ワイヤレスマウス。さらに、
「医療機器に影響を及ぼすことがあり、誤動作による事故の原因になります」
そして、
「アマチュア無線、短波放送、航空無線、海上無線、電波を利用した天文観測などと同じ周波数を使用した高周波利用設備であり、これらの無線設備の近傍で使用した場合、これらの業務の妨害となる可能性があります」
「継続的かつ重大な妨害の原因が本製品であると確認された場合は、電波法に基づき妨害を除去する必要な措置をとることを総務大臣から命じられることがあります」
「念のために、注意書きを付けた」
アマチュア無線だけでなく、医療機器などは本当に大丈夫なのか。パナソニックマーケティング本部はJ-CASTニュースの取材に、
「総務省から認可が下りた製品です。別の機器と同じ周波数帯を使うため、念のために、総務省の指示をいただいた上で、あの注意書きを付けたんです。ただ、今回が初めての製品で、仮に何か不都合な事が起こったとすれば、改良していかねばならないでしょう」
と答えた。
一方、総務省は、
「PLCに関しては、全てにおいて『訴状が届いていないのでコメントのしようがない』と言うしかないですね」
とだけ答えた。