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 特別背任疑惑では、為替スワップ取引で巨額の追証を求められた直後に、ゴーン容疑者の指示で「CEOリザーブ」勘定が創設され、その後にハリド・ジュファリ氏の信用保証がなされている。ジュファリ氏に巨額の費用の支払いが行われたのは更にその後だ。特に、「CEOリザーブ」勘定が設定されていた子会社の「中東日産」の幹部はジュファリ氏の活動実態を否定し、1470万ドル(当時のレートで約16億円)の支払いは「必要なかった」と疑問を唱えているという。

【前回は】日産の西川社長グループとゴーン容疑者との、瀬戸際の死闘が始まった! (4) 違法なのか、違法ではないのか?

 ゴーン容疑者は拘置理由の開示を求める東京地裁の法廷で、当時の日産に対するジュファリ氏の貢献を大きく讃え、「同氏の会社から請求された相応な対価を支払った」と「販売促進費」であったことを証言しているが、ジュファリ氏の会社の事業目的に「自動車関連」の項目がなかったと報じられている。会計処理に苦慮した中東日産の担当者は、ゴーン容疑者の指示を仰ぎ支払い理由を「環境問題対策」に変更したという。事実関係の解明が進められなければならないが、法廷での証言が虚偽であったと確認されれば、ゴーン容疑者の失点は少なくない。

 ジュファリ氏が約30億円分の信用保証をした翌年、オランダにベンチャービジネスへの投資を目的として、資本金60億円の日産の子会社が設立されている。目立った投資実績は確認されていないというが、既報のブラジル・リオの高級マンションとレバノン・ベイルートの高級住宅はこの子会社の資金で購入され、ゴーン容疑者に無償で提供されている。購入費や維持費、改装費を含めると20億円を超えるようだ。リオもベイルートもゴーン容疑者と関わりの深い土地で、どちらにもアライアンスを構成するルノー、日産、三菱自動車の主要拠点は存在しない。

 問題は日本の捜査権が及ばないところにある。東京地検特捜部は国連加盟国のほとんどが参加している国際組織犯罪防止条約(TOC条約)に基づいて、条約加盟国の捜査当局に捜査共助を要請して証拠の収集を行っている。有効な証拠がどの程度集められるかがポイントである。集まり具合によってはゴーン容疑者の主張から生じるほころびは、修復不能の破綻を見せるかも知れない。