古いPCは1台で約35万円の損失! なぜMSはWindows 7を終了し、Windows10に切り替えるのか?

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Windows 7のサポートが2020年1月14日に終了することはご存じだろうか?

Windows 7自体は2015年1月13日にメインストリームのサポートが終了しており、2020年1月14日まで延長サポートとして期間を設定している。




マイクロソフトは、サポート終了に合わせて2016年7月29日までWindows 7や現在メインストリームのサポートが終了しているWindows 8およびWindows 8.1も対象とした、Windows 10への無償アップデート期間も設けていた。

普通にパソコンが使えているのに、OSを切り替えるアップデートをする必要ないだろうと思ったユーザーもいるのではないだろうか。

実は筆者も古い周辺機器がWindows 10で動作しなかったため、Windows 7からアップデートしていないパソコンがある。2020年までにこれをどうするか決めなくてはいけない。

2020年にWindows 7のサポートが終了すると、どうなるのか?
・Windows Updateによる不具合の修正が終了
・セキュリティアップデートが終了

この中でも、セキュリティに関するアップデートが終了するとパソコンのぜい弱性を狙ったマルウェアのターゲットになる可能性が高まるのである。

一般の人の中には、OSのセキュリティアップデートがなくなっても、別途セキュリティソフトを入れておけば安心だろうと思うかも知れない。

しかし、それは大きな間違いだ。

市販のセキュリティソフトは、現行のOSを対象としているのがほとんどだ。
例えば、考えてみてほしい。
既にサポートが終了しているWindows XPに対応している最新のセキュリティソフトがあるだろうか? 

答えはノー、ないのだ。

1年以上過ぎたころにはWindows 7もWindows XPと同じように、セキュリティ対策は、まともにできなくなってしまうのである。

個人のパソコンでは、単にWindows 10のパッケージを購入したり、古いPCの買い換えのタイミングで最新のWindows 10搭載PCに買い換えたりすることも可能だ。




ところが企業ともなると、そんなに簡単なことではない。
OSの入れかえだけでもメンテナンスコストと時間が必要となる。
部署によってはOSの入れかえだけではなく、対応するソフトやハードなどの再検証も必要となる。

業務専用のアプリケーションをPCにインストールしている部署などは、その動作検証やプログラムの修正など作業が発生する。開発を外部に委託している場合はコストが積み重なっていく。

実は、こうした重荷や負担が、Windows 10への移行を先送りにしてきたといえる。
まさに、今動いているものに「手間」や「費用」を付けたくないという悪しき思いだ。

そう、いま動いているからが、誤解の元なのだ。

ではなぜマイクロソフトは、
いま動いているWindows 7のサポートを終了し、
Windows 10に移行を促しているのか?

その一つはWindows 10の思想がこれまでのWindows XPやWindows 7とは大きく異なるからだ、

旧来のWindowsでは、ナンバリング付きのOSパッケージで提供、必要があればアップデートを提供し、利用者が更新をしていた。

しかしWindows 10は、Windowsの最新版は自動更新され、常に最新版が利用できる。
こうした方向に大きく転換しているのだ。

つまり、Windows 10を使っている限り常に最新のOSにアップデートされ、アップデートを受ける権利を永年獲得できると言うわけである。


ではWindows 7にその機能を付ければ良いのではないか?
そう思う人もいるかも知れない。

まさにその通りだが、現実には簡単ではない。
およそ10年前に登場したWindows 7の設計思想では、旧来のWindows OSの仕組み通りにハードとソフトをつなげるシステムソフトと言って良い。




当時は、それでも良かったが、それから時が過ぎ、今やネットに繋がることが当たり前の時代となっている。
そしてスマートフォンが情報端末の中心となり、Windows 10も常にクラウドやAIの分野などを介して、ソフトとハードを結びつけるという思想に変わっているのである。

世界には、デスクトップPCやノートPCだけでなく、スマートフォンやタブレットPCなど、様々なデバイスが登場し、こうしたモダンデバイスの良さを引き出すようにOS事態も新しい環境に適応した新機能を備え、提供をしなければならなくなっている。


例えば、大事なデータがあるとしよう。
現在では、ハードディスクのトラブルやSSDの故障で破損や消失してしまっても、クラウド上に同期していたデータがあれば、クラウドのデータから復元することが可能となっている。

以前であれば、
こうした機能は、バックアップソフトなどを利用するなど、手間や時間をかけて利用者が用意をする必要がある。
しかし、現在のWindows 10であれば、特別な設定は不要でOSがサポートするOneDriveフォルダに入れておくだけですむ。

Officeアプリケーションも単体の販売ではなく、月額課金制で常に最新のフルバージョンが利用できる。

つまり。だれでも導入やメンテナンスの知識も不要で、使えるようになっているのだ。

クラウドサービスであるOneDriveもOfficeに含まれているため、大事な文書ファイルや画像なども1TB分バックアップしておくことができる。
もちろん、クラウドサービスはマイクロソフト以外にもあるので、自分の用途に合ったものを選ぶことも可能だ。

前述した業務専用のアプリケーションも、インストールベースではなくクラウドベースのアプリケーションとするなど改革のチャンスでもある。こうすることで、オリジナルアプリーケーション特有の専門的な操作が必要とされていたものが、誰でも使いやすくなるオープンな環境へ移行できるかも知れないのである。

Windowsの更新そのものも、旧来はWindowsのメジャーアップデートの度に、アップデートパッケージを購入する必要があった。
Windows 10では、アップデートパッケージを購入する必要はなく、必要なクラウドサービスに予算を使うなど、お金の使い方も新しい時代に突入している。


さて、企業のWindows 10への移行へ話しを戻そう。

マイクロソフトが10月17日に行った記者説明会では、中小企業ほどWindows 7サポート終了の周知が遅れていることを問題点としてあげていた。

その原因の一つに、経営者のITリテラシー不足があるという。
マイクロソフトはWindows 7サポート終了について、日本全国でイベントやセミナーを通じて啓蒙活動を行っている。




Windows 7からの移行に対しては、ネガティブな声ばかりが大きく取り上げられている印象がある。
しかし冷静に考えてみてほしい。
・4年以上使用してる古いPCは経年劣化から故障率も上がる
・数年前のストレージやCPUの処理能力では、作業時間のロスも大きくなる
これらを経費で見積もると1台当たり349,983円の損失となるとしている。

最新デバイスとシステムに比較して、現状の環境のコストがこれだけかかっているのであれば、最新のデバイスに切り替えるたほうが、経費を抑えられる絶好のタイミングであるというわけだ。

Windows 7からの移行は、初期導入コストだけを見てデメリットと思われがちだが、従業員の労働負担の軽減など、モダンデバイスを導入することは、働き方改革への取り組みの一環となるのだ。

サポート終了後もWindows 7を使い続けるは可能だが、前述したようにセキュリティのぜい弱性を突かれた場合、企業における損失は、個人の損失とは比べものにならないほど大きく、企業としての信頼を失い、企業の存亡にもかかわる問題となる。




ギリギリまで現実から目をそらし、2020年に慌てて移行するリスクに比べれば、ピンチはチャンスと捉えてこれからの1年をかけてしっかりと移行していくことのほうが経営者の判断としては正しいことは、言うまでもないだろう。


執筆  mi2_303