オリックス・吉田正尚【写真:荒川祐史】

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投手陣は新人の山岡&黒木が躍動、高卒新人の山本も存在感

 3・4月を15勝8敗と勝ち越して上々のスタートを切ったものの、最終的に3年ぶりのAクラスを逃した今季のオリックス。しかし、新戦力の台頭がめざましく、チームにとって非常に収穫の多いシーズンだったと言うことができるだろう。

 今季のオリックスを支えた新戦力と言えば、やはり社会人出身のドラフト1位ルーキー・山岡の名前が浮かぶ。プロ初登板となった4月13日の千葉ロッテ戦でいきなりクオリティ・スタート(6回以上を投げて自責3以下)を達成。その後も好投を続け、初勝利こそ7試合目まで持ち越されたものの、7月7日の千葉ロッテ戦で初の2桁奪三振、8月26日には埼玉西武を相手にプロ初完封を記録するなど、「社会人ナンバーワン右腕」の力を惜しみなく発揮した。

 開幕からチームを支えたルーキーと言えば、背番号「54」、黒木の存在も忘れてはならない。150キロ前後のキレのある直球を武器に、開幕当初から1軍に帯同。勝ちパターンとして定着を果たす。主に守護神・平野につなぐ8回を任されると、5月中旬まで防御率0点台と抜群の安定感を見せた。夏場以降は疲れからか失点するシーンが目立ったが、55試合に登板。25個のホールド、2つのセーブを記録し、ブルペン陣の一角として確かな存在感を示している。

 球団の高卒新人としては23年ぶりの勝利投手となった山本や、シーズン終盤に8回を託された2年目の近藤など、期待の新鋭が続々と芽を出し始めた今季。金子や西といったベテラン・中堅を軸として、来季は充実の陣容となる予感がする。

吉田正尚を筆頭に野手陣も期待の若手が続々と…

 野手陣を見ると、やはり吉田正尚の活躍が光る。昨季同様、腰痛に悩まされて1軍初出場は7月までずれ込んだが、昨季より1試合多く出場し、打率、本塁打、打点などの打撃成績は軒並み昨季を超えた。打率は.290から.311に、本塁打は10本から12本に、打点は34から38に、かつ三振数は34から32に減らしつつ、四球数は25から38に増やしており、打撃技術は着実にレベルアップしていることが分かる。来季、フルシーズンを戦うことができたら一体どのような成績を残してくれるのか、期待は高まるばかりである。

 吉田正尚やロメロ、T-岡田と長距離砲を擁しているオリックス外野陣において、堅守・強肩・巧打で着実に存在感を増してきたのが、5年目の武田だ。昨季までは1軍出場通算26試合にとどまっていた若武者は、4月中旬に1軍登録されると、限られた打席で結果を残し、4月の月間打率4割をマークする。5月に入ると徐々にスタメンでの起用も増加。前述の通り役者揃いの外野陣で、駿太や宮崎らとともに、来季のレギュラー争いに割って入れるか。注目していきたい。

 チームの根幹を担う正捕手争いも、さらに激化している。今季は伊藤が三塁手に挑戦したこともあって、若月がスタメンマスクを被る機会が多くなった。しかし、シーズン後半にはベテランの山崎勝や、ルーキーの飯田にその機会を譲るなど、まだまだその地位を確立できてはいない。打率.202、本塁打1本と振るわなかった打撃面でレベルアップを果たし、攻守でチームをけん引する正捕手になれるのか。はたまた、伊藤が再びその座に返り咲くのか。この2人の争いからまだまだ目が離せない。

 このほかにも、オリックスの将来を担うレギュラー候補たちが、着々と経験を積んでいる。プロ3年目、21歳の宗は10試合に出場。9月27日の北海道日本ハム戦でついにプロ初安打を放った。来季は内野のポジション争いに割って入りたい。また、高卒4年目の吉田雄人はプロ初の1軍試合出場を果たし、2年目の杉本はプロ初安打を先頭打者本塁打で飾るなど、若手外野手たちも虎視眈々と出場機会を窺っている。

 今季は3位の楽天に15ゲーム差を離されて4位に終わったオリックス。しかし、ここまで見てきたように、各ポジションで若い力が着々と育っている。高卒ルーキーながら1軍の試合を経験した吉田凌や岡崎など、まだまだフレッシュな面々が今か今かと自らの出番を狙う。若い力が躍動すること間違いなしの来季の猛牛軍団に、期待せずにはいられない。(「パ・リーグ インサイト」成田康史)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)