冷奴にみそ汁と、日本の食卓に欠かせない「豆腐」。しかし、ひと口に豆腐といっても、その分類にはさまざまなものがあります。とりわけ、代表的なのが「木綿」「絹ごし」。その見た目や食感には明確な違いがありますが、実はその製法や栄養分にも大きな違いがあります。日本豆腐協会の町田秀信専務理事に聞きました。

「豆乳を固める」工程に違い

 町田さんによると、基本的に豆腐とは、1日水に浸して柔らかくした大豆をすりつぶして「呉(ご)」を作り、煮沸後にこして絞った豆乳を固めたものです。木綿と絹ごしには、この「豆乳を固める」段階の工程に違いがあります。

「豆乳をそのままニガリなどの凝固剤で固めたものが絹ごしですが、木綿は絹ごしを型箱に入れておぼろ状に崩し、その上に重石を乗せて固めたものです。木綿の表面には格子状の模様が付いていますが、これは型箱に木綿の布が敷いてあり、重石で圧力を加えることでその布目がつくことによるものです」

 なお、絹ごしは木綿よりも濃い豆乳を使ったり、ニガリを加えた後、水分を切らずに仕上げたりと、木綿とは製法がやや異なります。絹ごしの名称は、水分をたっぷり含んでいるため食感が柔らかく、絹のように滑らかで、きめ細かいことに由来しており、製造工程で木綿の代わりに「絹」を使うわけではありません。

 一方、水分が少ない木綿は、食べ応えのあるしっかりとした食感が特徴です。

木綿のカルシウムは絹ごしの3倍

 以上のように、見た目や食感、製法が異なる両者ですが、実は栄養面にも大きな違いがあります。

 まず、木綿は水分を絞るため、栄養分が圧縮されているのが特徴。絹ごしと比較すると、カルシウムが約3倍、ビタミンEが約2倍、タンパク質や脂質、鉄分、食物繊維は約1.3倍も多く含まれています。ただし、ビタミンB1やB2、カリウムなどの栄養素は、絞った水分と一緒に流れ出てしまうため、水分を絞る工程の少ない絹ごしの方が若干豊富です。

 ちなみに、豆腐のパッケージの中に入っている水は、豆腐が壊れないようにクッションとして入れているものであり、栄養分は含まれていません。

 最後に、木綿と絹それぞれの特徴を生かせる調理法について聞きました。

「木綿は弾力があって崩れにくく、煮物や炒め物、揚げ物など加熱調理向きといえます。ボリュームと食べ応えのある食感は肉の代わりに使われることも多く、しっかりと味付けをすることでメインのおかずにも。加熱すると栄養成分が多少壊れますが問題ありません。一方、絹ごしは冷奴やサラダ、スープなど、水分の多い柔らかな食感をそのまま楽しめる食べ方に最適です」

(オトナンサー編集部)