異常事態である。２節を終えたＡＦＣチャンピオンズリーグ（以下ＡＣＬ）で、Ｊリーグ勢の４チームが１勝しかあげられていないのだ。

　ＡＣＬのグループステージは、アジアを東西に分けて行われる。東地区は実質的に日本、韓国、中国、オーストラリアのクラブの争いだが、ガンバ大阪、浦和レッズ、鹿島アントラーズ、柏レイソルの成績を合計すると、あろうことか１勝１分６敗（！）となる。

　レイソルがあげた１勝も、慰めにはならない。ホームで５対１と大勝した一戦は、ベトナムのクラブが相手だったからだ。韓国、中国、オーストラリアのクラブとの対戦では、悲劇的と言っていいほどの劣勢を強いられている。

　日本と同じく４チームが出場している韓国勢は合計４勝を、中国勢はすでに６勝をあげている。オーストラリアの２チームは、いずれも１勝１敗だ。Ｊリーグ勢の不振が際立つ。

　昨年もスタートは苦しんだ。サンフレッチェ広島、セレッソ大阪、川崎フロンターレ、横浜Ｆ・マリノスの２節終了時の合計成績は、１勝３分４敗だった。今年はさらに成績が後退している。これを危機と言わずして、何と表現すればいいのだろうか。

　３月４日に行われた浦和対ブリスベン・ロアーは、ＡＣＬにおけるＪリーグ勢の不振を象徴する。ホームで０対１の失点を喫したのだ。

　直接的な敗因は、キックオフ直後の失点だ。後半開始早々の那須の一発退場も、主導権を掌握していた時間だけに勝敗に影響した。

　試合後のペトロヴィッチ監督は、「負けてはいけないゲームだった」と切り出し、「10人になっても選手は最後まで戦った」と続けた。数的不利のなかで勝利を求めたチームの姿勢を、指揮官は繰り返し讃えた。

　選手が頑張ったのは間違いない。だが、頑張るのは当然である。頑張れない者は、そもそもピッチに立つ資格がない。だとすれば、選手の姿勢ではなく戦いぶりに焦点をあてるべきだ。

　過日のゼロックス杯と同じように、この日もボールポゼッションが得点の手段ではなく目的となる時間帯があった。ゴールを奪うという目的が、置き去りにされていた。

　自陣からしっかりとビルドアップをして、ボールを大切にするサッカーをしていたのかもしれない。だが、相手には怖くないサッカーである。

　チャンスは作った。内容は良かった──そうやって敗戦をオブラートで包んできた結果が、アジアにおける失墜を招いている。ＡＣＬでの敗戦を正面から受け止める姿勢が、Ｊリーグ勢には欠落していると思うのである。

　ところで、サッカーはエンターテインメントだと、僕は考えている。クラブレベルにおいては、楽しいサッカーを見せてくれれば負けても納得する。試合後に満足感を得られれば、次の試合も観に行こうと思う。

　ブリスベン戦の浦和は、観衆の心を動かすサッカーをできていたのだろうか。自分たちのスタイルを維持すること、自分たちのスタイルで勝つことに拘泥し、どうすれば相手を脅かせるのか、どうしたら観衆を魅了できるのかが、ぼんやりとしたものになっていなかっただろうか。

　浦和だけでなくＪリーグのサッカーを観ていると、「日本らしさ」や「自分たちらしさ」というフレーズが必要以上に輝きを放ち、サッカーの本質が見失われているように感じられてならない。勝負への執着もなく、エンターテインメント性も薄い。そんな試合が多いのだ。このままではクラブレベルにおいても、アジアの頂点から遠ざかるばかりである。