逆に沖縄がトップレベルのサッカーもある。ビーチサッカーだ。そのパイオニアであり、日本代表戦士をもっとも輩出するクラブ「SOL MAR PRAIA(ソーマプライア)」のホームビーチであるアラバビーチへ向かった。
 ソーマプライアのメンバーは毎朝9時にビーチに集合し、濃度の高い練習をした後は、三々五々、仕事に出かける。日本では南米や欧州ほど、ビーチサッカーのスポーツとしての人気は高くないので、収入も多くは望めない。
 
 日本代表で、チームでは監督兼GM兼広報兼キャプテン兼ゲームメーカー兼ホペイロの河原塚毅さんは言う。
「ビーチサッカー、やるのはつらいけど観るのは絶対、おもろいっすよ。ピッチが狭いから展開も早いし、派手なプレーもたくさん出るから」
 本場ブラジルで開催されたW杯はとんでもないレベルと熱狂だったそうだ。
「でも、あれは日本でもできるし、やるべきなんですよ。日本は島国なんですから」
 W杯のアジア予選を沖縄に誘致する運動はすでに起きている。そしてゆくゆくはW杯の本戦の沖縄での開催を目指す。
「沖縄は観光資源も受け入れ体勢もあるから絶対、できるはずなんです」
 世界を見据えているかぎり、まだまだ県外のチームに不覚を取ることはなさそうだ。
 
 先の天皇杯3回戦では、FC琉球をしりぞけて本戦に出場した沖縄代表のかりゆし琉球FCがJ2の横浜FCと対戦し、敗れはしたが、鋭いカウンターから先制ゴールを挙げ、Jリーガーを慌てさせた。FC琉球にも刺激になっただろう。
 
 高校サッカー選手権の沖縄代表は11月8日に決まる。第85回、86回大会と2年連続で全国ベスト16に残っている。沖縄県勢初の“国立”が期待される。
 
 ビーチバレーの“浅尾効果”でビーチスポーツが注目を浴び始め、競技人口が少しづつ増えているビーチサッカー。「沖縄で一番=日本一」の公式がまだまだ不動なのは、10月に行われた「全国ビーチサッカー大会2008」で証明された。
 
 それぞれのステージで琉球サッカー、そろそろブレイクの兆候が見えてきた、というのは僕の単なる希望的観測だろうか。オリオン片手に波布リーグ、Jリーグ、ビーチサッカーW杯のはしごを堪能する、そんな贅沢な旅ができる日を待ち望んでいる。琉球サッカー、ちばりよー。(了)
 
 
竹田聡一郎 Soichiro Takeda
 黄金世代と同じ1979年生まれ、神奈川県出身。湘南ユースでプロを目指した元DF。04年にフリーランス宣言以来、情報誌、グルメ誌、トラベル誌などに寄稿している。