パニックの先で深まった絆、ミシンで紡ぐ9人の未来――Next☆Rico雛瀬ひいなが描く新生グループのかたち
9人組アイドルグループ「Next☆Rico」が30日に2ndシングル「TickTack」をリリースした。新体制となって初のシングルは、爽やかな王道感とグループらしい個性が詰まった一枚だ。ライブでは予想外のハプニングを乗り越え、新たな4人を迎えたグループはさらににぎやかさを増した。そんな9人だからこそ生まれる強さとは何か。メンバーカラー「ぴよぴよイエロー」を背負う雛瀬ひいなに、仲間への思いと現在のNext☆Ricoについて聞いた。(「推し面」取材班)
全員が同じ曲を思い浮かべながら立ち位置についていた。
その日、会場では複数回のライブが予定されていた。何度も確認したセットリスト。身体に染み込んだ曲順。いつも通り始まるはずだったステージで、予想とは違うイントロが流れた。
新曲「TickTack」の歌詞には「アタマ思わず クルクル パニック」というフレーズがある。その言葉をなぞるような出来事だった。
「これはきっと違う日の曲順だよねって。ライブ中なので大きな話し合いはできないんですけど、次のMCでどうにか取り返そうって話してました」
目を合わせる。状況を確認する。だが本番中に立ち止まっている余裕はない。セットリストを確認しに向かうメンバーがいた。スタッフとの連携を取るメンバーがいた。そして、止まりかけた時間をつなぐ役割を引き受けた声があった。
「ありがとうございますって言って、ネクストリコの自己紹介を始めました」
普段からMCを回すことが多い。その経験が自然と身体を動かしたのだろう。客席から見れば予定通り進んでいるように映ったかもしれない。しかしステージの裏側では、それぞれが違う役割を担いながらライブを守っていた。
「マホちゃんがスタッフさんのところに走っていってくれて。私たちがMCでつないでいる間に、その後どうするかを伝えてくれてました」
青海マホがスタッフと状況を整理し、ステージへ情報を戻す。メンバーはその間を埋める。誰か一人の判断で乗り切ったというより、全員ができることを持ち寄って切り抜けた時間だった。
後になって振り返れば笑い話になる。「勘のいい人は気づいていたかもしれないです」。そう言って笑った。
ただ、その笑顔の裏には6年間積み重ねてきた経験がある。
活動を始めたばかりの頃なら同じようには動けなかったかもしれない。思わぬ出来事が起きた時、誰が何をするのか。どこをフォローするのか。長い時間をかけて身についた対応力が、あの数分に凝縮されていた。
「徐々に対応力がついているなというのは感じました」。その言葉は、現在のNext☆Ricoそのものを表しているようにも聞こえた。
今年、新たに4人のメンバーが加わった。グループは5人から9人へ。人数が増えただけではない。空気そのものが変わったという。
「一番はとにかく明るいところだと思います」
レッスン場で響く「よろしくお願いします」の声が大きい。楽屋では絶えず会話が飛び交う。もともとにぎやかなグループだったが、新メンバーが加わったことで、その熱量はさらに増した。
「声が一際大きい子たちが集まってきているので、レッスンだったり楽屋とかもにぎやかになっています」
6年目のメンバーとして迎える側の立場にいる。しかし話を聞いていると、一方的に教える関係ではないことが分かる。
最近撮影したミュージックビデオでは、演技経験のある新メンバーたちの存在が印象に残ったという。ドラマ仕立てのシーンが多く求められる中、それぞれが自然に役へ入り込んでいく姿を間近で見た。
「私も負けないように頑張らなきゃと思って」
撮影現場で見た緊張した表情や真剣なまなざしは、デビュー当時の記憶も呼び起こした。
「新メンバーのドキドキしている姿を見て、私も入った時はもっと新鮮な気持ちがあったのかなって思いました」
慣れは安心を生む一方で、いつしか薄れていく感情もある。その意味で、新しい4人は刺激であり、鏡でもある。忘れかけていた初心を思い出させてくれる存在なのだ。
そんな雛瀬を語る上で欠かせないのが、メンバーカラーの「ぴよぴよイエロー」である。
もっとも、その始まりは黄色へのこだわりではなかった。「黄色よりもピヨの方が先でした」。自己紹介では「ひなピヨ」。あだ名も「ひなピヨ」。とにかく“ピヨ”で覚えてもらおうと思っていた。
実際、当時は青色も希望していたという。それでも最終的に黄色になったことで現在のキャラクターが形づくられていった。
「黄色になったからこそ、自分の明るさが出せているのかなと思います」
今では遠征先へ持っていく小物まで自然と黄色が増えた。意識して集めたというより、気が付けばそんな感じ。色はただの目印ではない。活動を重ねる中で、自分自身の一部になっていった。
そして最近、その“自分らしさ”に新しい自信が加わった。
裁縫である。
昨年の生誕祭では、自らデザインした衣装を完成させた。家庭科の授業以来ほとんど触れていなかったミシンだったが、教室へ通いながら一着を作り上げた。職業用ミシンやロックミシンの使い方も覚え、衣装のほつれを見ればどんな補修が必要なのか分かるようになったという。
「特技ってこれまではなかったんですけど、自分の自信につながってます」。そう話す表情は少し誇らしげだった。
もっとも、グループの中では何でも任されるタイプではないらしい。
「私は結構メンバーに甘えることが多いので」
そう笑いながらも、言葉の先には新しい目標があった。
「9人分作りたいですね」
衣装かもしれない。髪飾りかもしれない。まだ具体的な形は決まっていない。それでも、今の9人のために何かを作りたいという思いははっきりしていた。
ライブ中、予定外の曲が流れたあの日は、言葉で時間をつないだ。そして今は、針と糸で仲間をつなごうとしている。
楽屋に響く笑い声も、レッスン場に飛び交う元気なあいさつも、それぞれ違う色を持っている。その色をひとつずつ拾い上げ、縫い合わせるように。9人になったNext☆Ricoは、今日も新しい形をつくり続けている。

