記事のポイント
Z世代男性のあいだでクォータージップが広がり、ビジネスカジュアル志向が強まっている。
黒人若者発の流行として自己定義や大人像の表明と結びつき、文化的意味を帯びている。
検索数2000%増を背景に、ファッション内外のブランドが商機として参入している。


ここ数週間で、Z世代のメンズウェアに新たなトレンドが押し寄せている。そのスタイルは、明らかにビジネスカジュアル寄りだ。

これまで教師や若手ビジネスパーソンの定番だった控えめなクォータージップが、高校や大学にも広がり、全米の若い消費者のあいだで広く受け入れられるようになっている。

11月、いくつかの動画がバイラル化したことを受け、ファッションブランドもようやくこの流れに追いつき、自社版のクォータージップを打ち出し、このトレンドにどう乗るかを模索しはじめた。

@imdavisssyt The quarter zip movement has changed my life @damii 🇳🇬 ♬ original sound - :)


だが、その前に疑問が浮かぶ。なぜクォータージップは、これほどまでに魅力的なのか。

すでに多くの仮説が提唱されている。雇用市場が崩れつつあるなかで、若者が、ますます手に入れにくくなっているビジネスキャリア像を自己投影しているのかもしれない。あるいは、パンデミック以降、ファッション全体を覆ってきたカジュアル化への反動とも考えられる。

若い黒人男性による「自己定義」としてのクォータージップ



ブラック・メンズウェア(Black Menswear)のCOOであり、Amazonやディックス・スポーティング・グッズ(Dick’s Sporting Goods)、NBA、インドチーノ(Indochino)などの大手ブランドと仕事をしてきたエヴァン・マーシャル氏は、Glossyに対し、特に有色人種の若い男性のあいだで強く支持されているクォータージップは「自己定義の物語」として捉えることができると語った。

このトレンドは、黒人であるヴィンセント・ギャムフィ氏の投稿を起点としており、スレート(Slate)やシカゴ・サンタイムズ(Chicago Sun-Times)などのメディアが指摘するように、若い黒人男性のあいだで急速に広がった。

「若い黒人男性たちは、自分たちがどう見られたいのか、そして何より、自分自身をどう捉えているのかについて、意図的な選択をしている」とマーシャル氏は述べた。

「彼らはプロフェッショナル、起業家、クリエイター、リーダーとしての姿で現れることを選んでいる。それは、ステレオタイプへの静かな拒絶であり、自分自身の物語を自分で書いているという宣言でもある。クォータージップは、静かな自信を示すものだ。責任を引き受ける準備ができており、秩序を受け入れ、成長に向かう姿勢があることを示している」。

「パフォーマティブ・メール」との親和性



このクォータージップのトレンドは、もうひとつの関連するトレンドとも重なっている。それが「パフォーマティブ・メール(演出的男性)」だ。

過剰な洗練さと結びつけられることの多いこの男性像は、抹茶ラテを飲み、クレイロ(Clairo)を聴き、トートバッグを持ち歩く。ギャムフィ氏による元祖クォータージップ動画でも、彼は抹茶ラテを手にしている。

ファッションブランドの対応



ファッションブランドはこの流れに気づき、ここ数週間でクォータージップをテーマにしたスタイルやプロモーションを次々と展開している。一部は偶然の一致だった。

たとえば12月初めのシャネル(Chanel)のショーは、キャメルカラーのクォータージップで幕を開けたが、これはトレンドが生まれる前にデザインされていたことは確実だ。

一方で、意図的な動きもある。ゴルフおよびライフスタイルブランドのサンデー・スワッガー(Sunday Swagger)は、ドール(Dole)との最新コラボレーションにクォータージップを含めた。

CMOのカイル・モルー氏は、このトレンドが同社の既存の美学とよく合致しているとGlossyに語っている。

「クォータージップシャツは、スタイルと快適さを無理なく融合できるため、人気が高まっている」と同氏は述べた。「ゴルフコースでも、特別なパーティーでも、社交の場でも使える汎用性の高さがある」。

バブアーに見る検索増加と「大人化」への橋渡し



12月8日には、ワックスドジャケットやアウターで知られる一方、ニットウェア事業も強い英国ブランド、バブアー(Barbour)が、クォータージップのラインアップがこのトレンドに合致していることを強調するPRメールをメディア向けに配信した。

北米におけるバブアーのマーケティング担当バイスプレジデントであるポール・ステファン氏は、ここ数週間で、同社のホームページ上におけるクォータージップの検索数が顕著に増加したとGlossyに語った。

こうした動きと、継続的なソーシャルメディア上の話題性を受け、バブアーはセーターの訴求を強化した。現在、クォータージップは同社のオンラインストアのトップページにあるメンズ向けギフトガイドにも掲載されている。

「若者は常に、クラシックで伝統的なスタイルに根ざしたルックを取り入れつつ、それをアップデートしたいと考えている。クォータージップは、フーディーやスウェットシャツから、より洗練され、大人びたアイテムへと移行するための手段なのだ」とステファン氏は語った。

同氏はまた、トレンドを活用する場合でも、タータンチェックの素材やプリントといった、ブランドならではの独自性を強調することが重要だと述べた。

非ファッションブランドにも波及するクォータージップ現象



さらに、非ファッションブランドまでもが、このクォータージップのトレンドに乗っている。

ウェンディーズ(Wendy’s)は12月14日まで、「クォーター・シップ(Quarter Sip)」と題したプロモーションを実施し、ソフトドリンクを25セントで提供している。

一方、保険会社のステート・ファーム(State Farm)は、クォータージップに関するTikTokの投稿でトレンドの火付け役となった若者、ジェイソン・ギャムフィ氏と提携した。

12月10日に投稿された動画では、ギャムフィ氏がステート・ファームのマスコットである「ステート・ファームのジェイク」に、定番の赤いポロシャツを脱ぎ、クォータージップに替えるよう勧めている。

このようなトレンドには、明確なビジネスチャンスが存在する。Googleトレンドによると、過去12カ月で「男性用クォータージップ」の検索数は2000%以上増加している。

このトレンドをめぐる予想外の課題のひとつが、呼称の問題だとステファン氏は指摘する。Googleトレンドでは「1/4 Zip」と表記されているが、ブランドによっては「quarter-zip」と綴ったり、ハイフンを入れたり入れなかったりと、表記が統一されていない。

「我々のグローバルなデザイン言語では、実はこれを『ハーフジップ』と呼んでいる」とステファン氏は語った。

[原文:Fashion Briefing: How fashion brands (and non-fashion brands) are jumping on the quarter-zip trend]

Danny Parisi(翻訳、編集:藏西隆介)