2003年にチェルシーを買収し、クラブのオーナーに就任したロマン・アブラモビッチ。ロシアでも有数の大富豪は、潤沢な資金を惜しげもなく戦力補強に費やし、チェルシーを欧州の強豪チームに生まれ変わらせた。しかし、『オブザーバー』紙のインタビューに答えたアブラモビッチ・オーナーは、チェルシーの強化方針が転換期を迎えていることを示唆した。

 海外の資産家によるクラブ買収が続く、近年のプレミアリーグ。巨額の資金が流入し、クラブ間の格差が拡大しつつある現状を危惧したUEFA(欧州サッカー連盟)は、資産家による投資を制限する方針を打ち出し始めている。このUEFAの動きもあってか、今後はアカデミーにおける選手育成に力を注ぐと、アブラモビッチは語っている。

「アカデミーで有能な選手を育てて、トップチームに引き上げるのが我々の戦略だ。近い将来、移籍マーケットにおける補強費用は減っていくはずだ」

 一方で、メンバー選考に対する一切の口出しを否定したアブラモビッチ・オーナー。ただし、ジョゼ・モウリーニョ監督が最終的な決定権を持つと強調しながらも、戦力補強においては、自らもある程度の影響力を持つことを認めている。

「試合におけるメンバー選考には一切関わっていない。だた、選手の獲得にまったく関与していないと言えば嘘になる。それでも、私が監督以上に影響力を持つことは決してない。監督が欲しがらない選手を、私の一存で獲得するようなことはあり得ない」

 オーナー就任後、何百億円もの資金を投入してきたアブラモビッチ・オーナーだが、すべてのタイトルを獲得した時点で、クラブから関心を失うのではないかとの声も聞かれている。しかし本人は、「試合前はいつも興奮する。その興奮度は毎年増している。タイトルという結果よりも、そこに至るプロセスが重要だ」と、チェルシーのオーナーを務める喜びを素直に表現。「資金は重要だが、それがフットボールを支配することはない」と断言するアブラモビッチは、今後もスタンフォード・ブリッジのVIP席からチームを見守り続けるつもりのようだ。