19日発売の「フランス・フットボール」誌(毎週火曜、金曜発売)の表紙をティエリ・アンリが飾っている。手にしているのは「バロン・ドール」(欧州年間最優秀選手)ではもちろんなく、「ニュメロ・アン」(フランス年間最優秀選手)。

 同誌のインタビューに答えたアンリは、バロン・ドールを惜しくも逃したことについて「今回は最初から自分がもらえるとは思っていなかった。だから落胆していない」と淡々と答えている。

 今年度の「バロン・ドール」をアンリでなくカンナバーロが受賞したことは、フランスでかなりの論議を呼んだ。“身びいき”といえばそれまでだが、フランス代表のドメネク監督やリヨンのウリエ監督をはじめ「不快感」をあらわにしたサッカー関係者は多い。ファウルすれすれのフィジカルなコンタクトを武器とするカンナバーロのプレースタイルがはたして“最優秀”に値するかという議論もあった。

 しかしアンリ自身は「W杯の年はたいてい優勝チームの選手が受賞するもの」とサバサバした反応。世界王者の主将という象徴的な立場に票が集まったのだろうと冷静に分析している。一方で「ピルロが受賞するのではないかと思った」と“本心”をのぞかせた。

「よい年とは勝った年のこと」。アンリはこの1年を振り返って、チャンピオンズ・リーグ、W杯とそれぞれ決勝で敗れた悔しさを噛みしめつつも、「そこに至ったチームの軌跡を忘れるわけにはいかない」と語り、「よい年だった」と結んでいる。

「フランス・フットボール」誌の「ニュメロ・アン」は、過去の受賞者34人が審査員となり、1位(5ポイント)〜5位(1ポイント)の選手を選んで投票、その得点を集計する。今回のアンリは127ポイントを獲得し、2位のフランク・リベリ(67ポイント)、3位のジダン、マケレレ(48ポイント)を大きく引き離しての受賞となった。2000年、2003〜05年に続いて今回が5度目の受賞。アンリのほかにはアラン・ジレスの3度が最多で、プラティニ、ジダンですら2度の受賞にとどまっている。

 ちなみに今回、自身も審査員だったアンリの投票の内訳は、1位ジダン、2位マルダ、3位リベリ、4位ビエラ、5位ギャラス。