早大・武藤真吉(カメラ・臼井 恭香)

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◆東京六大学秋季フレッシュトーナメント▽第4日 早大9―0東大(15日・神宮)

 早大の「3番・DH」でスタメン出場した武藤真吉内野手(2年=早大学院)が初安打と初盗塁で勝利に貢献。自身最後となる神宮球場での試合に花を添えた。

 「いいぞ!いいぞ!武藤!」

 雨が降りしきるなか、武藤が左前安打を放つと、2階席で観戦していた上級生が一斉に武藤コール。声援に応えるように、すぐさま二盗。再び、武藤コールが鳴り響いた。

 武藤は1学年に1人が務める学生コーチになるため、神宮球場でプレーするのはこの日が最後と決まっていた。「今までバッティングとかいろいろ悩んだけど、こういう機会をいただいたので、迷いなく1球1球全力で振り切ることを意識して臨みました」と試合前を回顧。「悔いが残らないように、何が何でも結果を出すという思いで打席に入った。それがかたちになってすごく嬉しかった」と晴れやかに語った。

 選出されてから、同期1人1人に「A4の紙に、自分にやってほしいことを書いて」と頼んだ。そのなかで、印象に残った言葉を明かした。「『選手としてプレーしていた頃の行動をみんなが評価してお前を推薦したから、学生コーチになっても変わらず選手と同じ目線でやってほしい』という言葉がすごく刺さりました」。同期の本心を知り、身が引き締まった。

 決断を現在の学生コーチ(川内脩平、4年=八王子)に報告したのは2、3日前。「正直、選手としての未練は4年間ある」と言われた。「自分もそうなるとは思っているんですけど」と武藤は前置きしつつ「ただ、春秋と優勝して報われた気がしたと話していたので、そこを目指して頑張りたいと思っています」とすでに決意は固かった。

 最後の打席は、空振り三振。「1球も迷いがなく振れたし、後悔はないです」と言い切った武藤は今後の抱負を述べた。「最終学年になったときに上に頼っていたことを自分たちがする自覚をしてもらいたいし、自分も自覚させられるように選手1人1人とコミュニケーションを取ってやっていきたい」。チームは今年、9年ぶりに春秋連覇。役割は変わっても、強い早稲田に貢献し続ける。