阪神・才木(左)の自主トレをサポートする中野トレーナー

写真拡大

 阪神・才木浩人投手(25)が今季、自己最多13勝を挙げるなど飛躍した。3完封&4完投は、いずれも巨人・戸郷と並びリーグトップタイ。猛虎の柱としてフル回転している。自身初の規定投球回も達成した24年シーズン。急成長の要因を阪神担当の直川響記者が「見た」。

 * * * * * * *

 才木の送った一通のメッセージが飛躍につながった。トミー・ジョン手術から復帰した直後の22年8月。ロッテの荻野貴司(38)を指導した経験を持つプロトレーナー・中野崇氏(44)にSNSを通じ長文で思いをぶつけた。「もう二度とけがをしたくない。日本で一番の投手になりたいです」。面識はなかったが、現状打破へ必死だった。3年計画を組み、二人三脚の日々が始まった。

 まず着手したことは、潜在能力を最大限発揮するため、無駄な力みを取る作業。数種類の呼吸法を伝授された。オフを中心に、横隔膜を鍛え、脱力できるポイントを探った。約2年の訓練を共にした中野氏は「精度が上がった。試合の中ですぐ修正できている」。今季は25戦中20戦でクオリティースタート(QS、6回以上自責3以下)を記録した。QS率は80%と昨季の66・7%から上昇。大崩れしない新たな強みを確立した。

 体重は4キロ増量し、過去最重量92キロで臨んだ今季。食事に入浴と、ありとあらゆる日常生活まで指導を仰いだ。他競技の日本代表経験者にも指導経験がある中野氏は「これだけ忠実にやってくれる選手はなかなかいない」と感心する。

 シーズン中も月2、3度は面会。才木は「ありがたい存在。すごくいい感じで、きている」と感謝する。中野氏は「まだ下半身の強化は始めたばかり。伸びしろたっぷり」と力を込めた。12日開幕のCS第1ステージ(甲子園)で先発見込みの25歳。最高到達点は、もっと先にある。(直川 響)

 ◆中野 崇(なかの・たかし)1980年、大阪・堺市生まれ。44歳。大教大で準硬式野球部所属。13年に株式会社「JARTA international」設立。代表取締役を務め、アスリートへの身体操作トレーニング指導およびスポーツトレーナー育成を行う。15年からブラインドサッカー日本代表フィジカルコーチ。これまで指導した日本代表選手はサッカーGK前川黛也(神戸)、DF熊谷紗希(ASローマ)、ラグビーFB山中亮平(神戸)ら。

 ◆横隔膜 肺の下にあり、肺を動かす筋肉。息を吸い込む時に最も重要な役割を果たす。上下する働きにより、肋骨などに囲まれた胸腔内の圧力が変化し、肺が膨らんだり縮んだりして呼吸ができる。