《地震に強い家》にするために。木造住宅の耐震工事のポイントと工事費用の目安。予算が限られる場合は、一部屋だけ補強してシェルターにする方法も
『婦人公論』8月号(7月15日発売)では、「豪雨、地震、台風……今すぐ見直すわが家の防災」という特集を組み、自然災害への備えについて特集しました。そのなかから、選りすぐりの記事を配信します。*****大地震が起きたときに心配なのが、自宅が倒壊するリスクです。建て直さずに、地震に強い家にすることは可能でしょうか。木造住宅の耐震に詳しい建築士が、住まいの安全性の調べ方や対策をアドバイスします(構成=村瀬素子 イラスト=青山京子)
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<前編よりつづく>
強い家のポイントは壁の量と配置
家の耐震補強が必要なことがわかったとき、何をどのように進めていけばいいのか、大まかな流れを説明しましょう。
まずは、建築士が診断結果をもとに耐震補強設計を行います。建物のどの部分をどのように補強するか考え、依頼者の要望を聞きながら改修計画と設計図を作成。なお、耐震診断と設計は同じ業者に依頼するほうがスムーズに進みます。
設計が決まったら、いよいよ耐震補強工事です。耐震診断から工事まで一貫して行う業者もありますが、そうでない場合は工務店など施工業者に依頼することになります。
金額や工事の内容などを比較・検討できるよう、できれば複数の業者に見積もりを出してもらいましょう。
木造住宅の耐震工事では、主に、壁・基礎・屋根・柱を補強します(上図参照)。なかでも重要なポイントが壁です。
木造住宅は、長い材木を組み合わせて骨組みをつくります。強い水平力が加わっても崩れないようにするには、材木の接合部を金物でしっかり繋げることと、壁を強化することが大切。
水平力に対抗して建物を支える壁を「耐力壁」と言い、耐震工事では柱と柱の間に筋交いを入れたり構造用合板で補強したりして、耐力壁を増やします。
少し専門的な話になりますが、耐震に重要なのは建物のバランスです。たとえば、東西の壁量に比べ、大きな窓のある南北には壁量が少ない、という家はバランスが悪く崩壊しやすい。改修では、弱い部分を補うように耐力壁の配置を検討します。
ここで皆さんが特に気になるのは、工事費用でしょう。日本建築防災協会の調査によると、木造住宅の場合は半数以上が200万円未満で行われています。
部位ごとの目安は、壁1枚(幅910mm)あたり外壁が13万〜15万円、内壁が9万〜12万円。屋根(1平米)が1.5万〜2万円、基礎(1m)が4万〜5.5万円です。
家の規模や評点によって費用は大きく変わりますが、壁の修復であれば150万〜200万円ほどが目安。基礎を補強したり屋根を軽い素材に葺き替えたりすると、プラス200万円以上かかります。
費用を抑えるには、水回りなどのリフォームと家の補強を一緒に行うのがおすすめです。たとえば古いお風呂をユニットバスに替えるタイミングで補強工事をする。そうすれば解体や復旧が一度にすみ、別々で行うより割安になります。
また、予算が限られる場合、リビングや寝室などよく使う一部屋だけ補強してシェルターにするという手も。いざというときは、その部屋に逃げればいい。
耐震工事の一番の目的は、「家」ではなく「住人」の命を守ることなのです。
なお、耐震工事に関しても、多くの自治体が助成金制度を設けています。東京都の例を挙げると、江東区は上限150万円、中央区は300万円まで支給。区内業者に工事を発注するなどの諸条件がありますので、上手に活用してください。
耐震診断や工事を依頼する業者選びも、お住まいの市区町村に相談して、自治体の名簿に登録されている耐震診断資格者などを紹介してもらうと安心です。「屋根を直しますよ」と親切を装い、高額な工事代を請求するといった悪質な訪問業者もいますから気をつけましょう。
最後にお伝えしたいのは、今後の暮らし方と家の改修について、家族で話し合っておいてほしいということ。改修を行うかどうかは、各家庭や個人の判断です。すでに高齢で家にお金をかけたくない、という方もいるでしょう。
家族で話し合った結果、そのまま住むのであれば、家具が倒れないように固定する、ドアの前に物を置かず避難経路を確保するなど、防災意識を日頃から持っておくこと。そして、いざというときは速やかに屋外に逃げることが大切です。
家をリフォームするには、時間や気力、体力を要します。だからこそ元気なうちに着手し、自身と家族の命を守りましょう。