歯の「ホワイトニング」は“白目の色”が鍵 歯科医師がワケを解説
歯の表面に付着した着色汚れを落とし、薬剤を使って歯を白くする「ホワイトニング」と呼ばれる施術を行う歯科医院があります。歯の黄ばみや着色汚れが気になるときにホワイトニングの施術を受けようか迷った経験はありませんか。
そもそも、歯のホワイトニングはどのような方法で行われるのでしょうか。ホワイトニングの施術を受けても、歯が白く見えない人はいるのでしょうか。ホワイトニングのポイントについて、幸町歯科口腔外科医院(埼玉県志木市)院長で歯科医師の宮本日出さんに聞きました。
神経治療を行った歯には効果が見られない場合も
Q.そもそも、「ホワイトニング」とはどのような施術なのでしょうか。
宮本さん「文字通り、歯を白くするための施術です。一般的にイメージされるのは歯を化学的に漂白することだと思いますが、歯の表面の着色を除去することもホワイトニングと呼ばれています。
ホワイトニングの方法は、その原因によって主に2パターンに分けられます。1つは歯の表面への着色が原因のときに行う『クリーニングホワイトニング』です。ホワイトニング効果のある歯磨き粉で付着した着色を除去し、本来の歯の白さを取り戻します。これは自宅でのケアが可能です。
もう1つは、歯の黄ばみが原因のときに行う『漂白ホワイトニング』です。歯、特に象牙質の水分を抜いて漂白することで、本来の歯よりもさらに白くします。歯の黄ばみは表面を覆っている半透明のエナメル質が徐々にすり減って透明感がなくなり、歯の内部の黄ばんだ色の象牙質が厚くなることから起こります。象牙質は水分を11%ほど含んでおり、黄ばみはこの水分が濁ることが原因だといわれています。
消毒や漂白の際は『オキシドール』と呼ばれる過酸化水素水が使われますが、歯を漂白する際も過酸化水素を主成分とする薬剤を使用します。また、歯科医院専用の薬剤と反応を高めるライトを併用する『オフィスホワイトニング』は、短期間で歯を白くできます。自宅で同様の薬剤を入れたマウスピースを装着する『ホームホワイトニング』もあります。
『オフィス』と『ホーム』を並行する『デュアルホワイトニング』であれば、短期間での歯の白さの向上が期待できるだけでなく、効果も長持ちします。
ただし、漂白ホワイトニングに向かないのが神経の治療をした歯です。黄ばみは神経の治療によって内部の循環が悪くなり、象牙質の色が濃くなることで起こりますが、原因が内部にあるため、歯の表面から行う漂白ホワイトニングでは高い効果が期待できません。
この場合は歯の内部に薬剤を入れてホワイトニングを行う『ウォーキングブリーチ』という治療が必要になります。また、差し歯の黄ばみが気になる場合は、新しい差し歯に入れ替えることになります」
Q.ホワイトニングの施術を受けても、歯が白く見えない人はいるのでしょうか。
宮本さん「ホワイトニングをしても、歯が白く見える人、白くなったように見えない人に分かれます。実はホワイトニング希望の患者が来院したとき、私たち歯科医は歯の色を見ていません。ホワイトニングの効果があるかを判断するために見ているのは、『白目の色』です。
人は、色がより白いものに目を引かれます。顔の白い部分は『目』と『歯』なので、歯の白さを目立たせるためには、白目より歯を白くする必要があります。つまりホワイトニング効果が高いのは、自身の白目より歯の色が黄ばんでいる場合となります。白目より歯の色が白くならなければ、周囲の人にはホワイトニング効果が伝わらないのです。
また、ホワイトニング後、歯が元の状態の色に戻るまでには数カ月かかります。再度、ホワイトニングをするタイミングも、歯が白目よりも黄ばんだかどうかで判断できます。ホワイトニングは繰り返し行うことで効果が長く続き、歯の白さが定着します」
Q.コーヒーや紅茶をよく飲む人は歯が着色しやすいと思います。ホワイトニングの施術を受ける場合、これらの飲料の摂取をできるだけ控えた方がよいのでしょうか。
宮本さん「歯の着色は歯の表面の汚れのほか、毎日摂取している飲食物や嗜好(しこう)品の色素がエナメル質表面の膜と結びつくことが原因です。コーヒーや紅茶に含まれるカテキンやタンニン、ワインやチョコレートに含まれるポリフェノールは着色の原因になります。
こうした食べ物や飲み物の摂取を控えるのが賢明ではありますが、コーヒーや紅茶は嗜好品であり、ワインは健康に良いことが知られています。あくまでも生活の質を落とさない範囲で気を付ければよいでしょう。また、歯の着色は適切な歯磨き粉の選択や定期的な歯科医院でのクリーニングによっても対策できます。
カレー粉やしょうゆ、ソース、ケチャップなどの調味料に含まれる着色料で着色することもあります。このほか、喫煙家で、タバコのヤニ(タール)が歯にこびりつき、歯の表面が茶色くなる人も少なくありません」