9月で7年目に突入する『新R25』。

しかし、編集部は“ある悩み”に直面していました

その悩みを解決すべく、編集部の天野、森久保を会議室に集めた編集長の渡辺。

これからの『新R25』はどんなメディアになっていくべきなのか

今まで陥っていた“メディアの闇”とは?

長文になりますが、今回は「編集部の会議パート」と、「有識者への取材パート」、2部構成でお届けいたします。



渡辺:
最近考えていた次の『新R25』のコンテンツ方針について共有したいんだけど…

結論から言うと、「現代のビジネスパーソンの悩みに寄り添ったコンテンツ」を改めて頑張りたい

森久保:
僕ら、「悩み相談」はずっとしてきたというか、一応僕らがビジネスパーソンの代弁者になるってことはしてましたよね…?

渡辺:
それをやってきてたんだけど、本質的じゃなかったなと思って。

まず、今はめちゃめちゃ悩みが多い時代なんじゃないかという仮説があるのね。SNSでまわりと自分を比べる、AIが台頭してきて自分は大丈夫なのか、価値観が多様化してコミュニケーションが難しい…あらゆる悩みが出てきている時代。

そういう悩みって本当は複雑で深いのに、我々がこれまでやってきたのは、悩みを単純化して投げかけて、出演者の方もコンテンツになりそうなウケのいい回答をするみたいな。

あと、俺が“20代の悩みを代弁して…”って取材するのとかもリアルじゃないじゃん。

天野:
前に箕輪さんに言われたのが、「いつまで新R25編集部がバカなふりをするのかが問題だよね」って。

渡辺:
まさに。まあ、バカはバカなんだけど…

天野:
いろんな人に取材してたら成長してるはずなのに、ずっと同じような視点から取材・質問しているという…

渡辺:
コンテンツになりやすいパンチライン的な回答とか生存者バイアス的な回答が来て、我々も「たしかに!」とか言って、迎合したリアクションをしちゃって、みたいな。

“リアルじゃない悩み相談”になってたんじゃないかっていうのが課題感で。これを打破したい。

森久保:
確かに、裏側の話ですけど、「この人にインタビューする」っていうのが先にあって、「じゃあこういう悩みを当てよう」みたいに後から悩みをつくってましたもんね…

天野:
ウソだよね、そんなの。メディアの闇

渡辺:
ありもしない悩みをでっちあげて

だから、まずは複雑な悩みを我々がちゃんと言語化するところをやらないといけない。で、その深さまで理解してもらって先輩方からアドバイスなりヒントがほしいなと。

なので、これからみんなの悩みをじっくり語っていこうと思います。



と、いうことで…編集長・渡辺の最近の悩みは?

渡辺:
俺、7月20日で41歳になるんだけど

森久保:
おー、おめでとうございます。

渡辺:
俺も、40代に突入していろいろ考えることが多くなったわけですよ。

天野:
そうなんですね…

渡辺:
「40代が一番悩みが多い世代」っていうデータが出てるんだけど、すごくわかる。

たぶん、キャリアとプライベートンチで一番しんどいタイミングで。

でね、自分が最近すごく気になるのが、「自分の伸びしろが知りたい」ってことなの。「40代からでも成長できるのか?」っていう。できればエビデンスベースで知りたい。

森久保:
実際に衰えを感じることとかあるんですか?

渡辺:
自分個人としては、まだその実感はない。思考力とか発想力が落ちてるとは感じないんだけど。

でもよく、個人としての成長は止まるとか言われるじゃん。

キングコングの西野さんもよく「20代ですべて決まって、その差は取り返せない」とか言う。

森久保:
しきりに言ってますよね。

渡辺:
あれも絶望を生む話でさ。

「人脈も固定化されるから、20代の時点で選ばれる人になってないと」みたいな主張なんだけど…救いがないじゃない。

天野:
ないっすね〜。

渡辺:
ただ、昔みたいに、単純な定量目標でがむしゃらに頑張ることができなくなってて…社会的意義とか、自分は何をすべきかみたいなことを考えがちになった。

あとは、深夜に仕事するのがキツいとかはある。ちょっと昔より馬力が下がってるのかな。

まだプレイヤーとしてバリバリ第一線でやれる年齢なのか、エビデンスベースとかで教えてもらえたらと思ってる。

天野:
僕、一回取材した青田努さんっていう方がいて。

LINEの元人事の方なんですけど、「40代でもう一回人生をやる」と言って、美大受験していま普通に美大生やってるんですよ。そういうのシンプルにかっこいいなと思いますよね。

森久保:
スゴすぎる。

渡辺:
だから最近、そういう人ばっかり追っかけてる。

格闘技とか観てても、ベテランで活躍してる人にやたら感情移入しちゃうし。

若手には、正直負けてほしいのよ。



森久保:
老害や!

天野:
でも、「カーネル・サンダースは65歳でケンタッキーつくった」みたいな話もあるじゃないですか。

渡辺:
それは希望なんだよね。ライフネット生命をつくった出口(治明)さんとか。

…これ、鈴木祐さんとかに聞いて相談してみようかな。

森久保:
ガチのエビデンスの人だ。

でもいまだにとんでもない数の論文を読んで、本も執筆してるすごい人ですよね。

渡辺:
うん、そうしよう。聞いてきます。



「40代からの可能性」を鈴木祐さんに相談!

渡辺:
今日は暑いなか自転車で来ていただいて、ありがとうございます。


【鈴木祐(すずき・ゆう)】
慶應義塾大学SFC卒。16才のころから年に5,000本以上の科学論文を読み続けている超文献オタク。アンチエイジングなどについて発信するブログはメンタリストDaiGoさんも愛読。著書『最高の体調』は20万部を超えるベストセラーに

鈴木さん:
はい。もう汗だくで(笑)。

渡辺:
僕の悩みを事前にお送りしていたので、そのうえで、鈴木さんに教えていただけることがあれば聞きたいなと。

ちなみに、鈴木さん自身ももう40…?

鈴木さん:
48歳ですね。


「信じられない」と言われ続けてると思います

「成功率は年齢によって変わらない」

鈴木さん:
まず、「成果を出す確率」っていう観点で言えば、歳をとっても若いときでも変わらないですね。データがあるんですよ。

科学者、映画監督、経営者などを対象に、年代別にどれだけ世の中にインパクトを与える仕事ができたかを調べた調査結果があって。

結論、20代でインパクト出す人もいるし、70代で出す人もいて、その発生率って全然変わらないんですよ。

渡辺:
へえ〜〜。



鈴木さん:
たしかに、若いころのほうが「成果の数」が多い傾向はあるんです。

ただ、なぜかと言えば、歳を取ると試行回数が減るから。それさえ変えなければ、インパクトが高い仕事は全然できる。統計的にはそうなってますね。

渡辺:
めちゃめちゃ有益な情報だ。それって「成功」の定義は何なんですか?

鈴木さん:
科学者だったら論文の引用回数であるとか、映画監督だったら賞をとった回数とか興行収入とかですね。

渡辺:
なるほど。

鈴木さん:
「ホットストリーク」っていう言葉があって…

どんな科学者でもどんな映画監督でも、「成果が何にもない時期」と「立て続けに成功する時間」が偏るんですよ。



渡辺:
たしかに、そういうイメージはありますね。

鈴木さん:
そういう人は成果が出ない時期に、何もやっていないように見えて、いろんな新しいことに手を出してるんですよ。

映画監督だったら、今までと全く違うジャンルの映画を撮ってみたり。

それが時間差で実になって、成果を爆発的に出せる時期に突入する。で、また成果が一段落したら、また別ジャンルのチャレンジをして…ということを繰り返す

渡辺:
そういうことか…

鈴木さん:
結局年齢は関係なくて、“その繰り返し”ができるかどうかなんです。

渡辺:
ってことは、よく堀江さんとかも言ってるけど、「体力が一番大事」みたいな結論になりますね。ベースの体力があって、トライを重ねられるかという。

鈴木さん:
まさに、試行回数を重ねるための体力は大事ですね。

老害にならない「スーパーエイジャー」になる方法とは?

渡辺:
逆に、「40代から衰える能力」っていうのはあるんですか?

鈴木さん:
それはありますね。たとえば「情報処理能力」

情報を素早くスピーディーに処理していく力は、20代くらいでピークが来て、あとはもう下がっていく一方なんですよね。

ただ、そういった数字を扱うような仕事は、もはやAIに任せちゃえばいい

渡辺:
たしかにそうかも。今後はあまり成功に関係ない能力かもしれないですね。

鈴木さん:
そう思います。

あと、最近の研究のトレンドだと、「知恵」って概念があるんですよ。

知恵とはすなわち、「自分が今まで得てきた知識を生かして、いろんな問題を解決できる能力」のことなんですが、その研究をしている人の論文を読むと、それに関してはもう、歳を取った人が断然有利なんですよ。

渡辺:
そうなんだ!

経験がものを言う世界ってことなんですかね。

鈴木さん:
ですね。「知恵」は年齢を重ねただけ右肩上がりに上がっていく傾向があります。

だから、「これからは年寄りのほうが有利なんじゃないか」と思ってます(笑)。

渡辺:
それは勇気をもらいます(笑)。

僕も仕事をするうえで「想像力」ってすごく大事だと思ってて。たとえば本を書くときも、読んでいる人の気持ちを想像しながら書くのと、そうでないのとで仕上がりが全然違うはずじゃないですか。

「想像力」って結局自分のなかでのデータの蓄積なので、明らかに歳がものを言うなと思ってたんで…

鈴木さん:
間違いないですね。それは死ぬまで上がりつづけるでしょうね。

「共感力」とかも、やっぱり中年以降のほうが上がる可能性がありますし。

渡辺:
そうですよね。でも、いわゆるジェネレーションギャップで共感力が落ちて、“老害化”する人もいるじゃないですか。

鈴木さん:
そうですね。40代は、「歳を取って一つのバイアスにとらわれつづける人と、逆に想像力が広がっていく人と、極端に分かれる時期」ではあります。

老害化する人と、下の世代から信頼を集める人とに分かれていく

渡辺:
後者はイヤですね…そこを分けるものは何なんでしょう?

鈴木さん:
よく言われるのは、好奇心の有無ですよね。

80、90代なんだけど50、60代の人の脳を持っている「スーパーエイジャー」と呼ばれる人たちがいるんですけど。

彼らに共通するのは「新しいことをずっとやりつづけている」こと。それによって老害化も防げると思います。

渡辺:
コンフォートゾーンを出ていろいろやることで、新しい想像力のベースになるようなネタが取得できるんですね。

ちょっと“負荷がかかる”ようなことをやらなきゃいけない感じがしますよね。

鈴木さん:
おっしゃる通りです。

「スーパーエイジャー」も、毎日自分の脳に少しずつ負荷をかけているんですよね。

目安としては、「自分ができると思うことにプラス10%の負荷をかけるとよい」と言われてます。

渡辺:
なるほど、10%ぐらいは新しいことに時間を使ってみようみたいな感じですかね?

鈴木さん:
そうですね。多少は負荷やストレスがないと、脳が衰えてくるんですよね。

運動と同じなんです。やりすぎたらダメだけど、10%ぐらい肉体を酷使していくと健康を維持できる。



渡辺:
他にも年齢とともに衰えていく能力はありますか?

鈴木さん:
一般的には、「集中力」も落ちますね。

ただ、これも“負荷に耐える訓練”ができれば、維持できるんです。

集中力が維持できない原因って、感情のコントロールなんですよ。不快さに気を取られて嫌になっちゃう。その不快さに耐える体力が必要になるんですよね。

渡辺:
ああ、そんなイメージはありますね。結局集中できないときは、ストレスに負けてるのかも。

鈴木さん:
「瞑想で集中力が鍛えられる」と言われますが、これは“不快さに耐える能力が養われる”ということなんですよ。

幸せに働くために必要な「3つの基本欲求」とは

鈴木さん:
悩みのメモに、「最近は仕事の意義など考えがち」って書いてあるじゃないですか。

「数値を追うことのモチベーションが下がった」って。

渡辺:
そうなんですよ。

鈴木さん:
これ、いいことだと思いますよ。

まさにデータがあって、40代ぐらいから、みんなお金は追わなくなってくるんですよね。お金ってそんなに幸福に結び付かないっていうのが実感できてくる年代でもある。

それで、「仕事の意義」を考える人が増えます。

で、この時期に「仕事の意義」を深く考えた人のほうが、その後の幸福度は高いですね。いろんな研究でデータが出ています。



渡辺:
そうなんですね。

幸せなキャリアを歩むためにはいいことなのか。

鈴木さん:
ここで分析して自分の価値観が明確になった人ほど、その後の幸福につながる。感情的にすごいポジティブになっていく傾向があって。

渡辺:
40代で会社にいると、「仕事の意義」に悩む人が多いと思うけど、健全な悩みだし、その悩みは持っていたほうがいいってことですね。

鈴木さん:
そうですね。

「中年の危機」と言うじゃないですか。40〜50代から悩みが増えてメンタルがへこみがちになる時期だっていう。

最近の研究だと、その時期に仕事の意義を見定められた人は、70代ぐらいまでは幸福度がどんどん上がっていくことがわかってます。

渡辺:
“サラリーマン的”というのをネガティブな言葉として言うなら、“サラリーマン的なマインド”だとキツいのかもしれないですね…

与えられたことをただやっていて、そこに「仕事の意義」を見出せない、重ねていけない人は。

鈴木さん:
それは「自律性」がない状態ですよね。

人が幸せに働くための基本的な心理的ニーズは「自律性」 「有能性」 「関係性」の3つだと言われてまして。

渡辺:
ぞれぞれどんなものなんですか?

鈴木さん:
「自律性」は、自分で自分の人生をコントロールできている感覚のこと。

「有能性」は自分の能力を“大したもの”だと思えている感覚、「関係性」は人間関係でよい仲間をつくれている感覚のことです。

会社で働くにしても、独立するにしても、これらに注意して働く環境を決めるといいと思うんですよね。「自分に何が足りないか」を常に考えながら。

渡辺:
なるほど。これから幸せに働くための観点が完全にインプットされました。



40代のモヤモヤは、決して悪い反応ではない

渡辺:
お話を聞いてると、40代は脳やカラダが必要なことをいろいろ教えてくれる年齢なのかなと思いました。

そこに乗っかったほうが、幸せになれるのかなと。

鈴木さん:
そうですね。正常な反応ですから、抗わないほうがいいです。

渡辺:
ですよね。でも、今回そういうことをちゃんと教えてもらえて、よかったなぁ。

今後の自分のキャリアに勇気がもらえたし、スイッチが入ったというか。

自分のカラダに正直に生きながら、体力づくりとトライの回数を増やして…40代以降も頑張ろうと思えました。

鈴木さん:
それはよかったです!

新コンテンツ第一回は、編集長・渡辺のリアルなお悩み相談をお届けしました。

40代以上の読者も多い新R25ですが、我々がターゲットとする「R25世代」とは、年代問わず自分のキャリアや人生をより良くしたいと思っているビジネスパーソンのこと。「40代以上のR25世代」には励まされる事実も多かったのではないでしょうか。

体力と健康第一で、いつまでも仕事と人生を楽しんでいきましょう。

〈文=天野俊吉(@amanop)/執筆協力=池田さのみ〉

本インタビューの動画はこちら

出典 Youtube