終了間際に同点弾。PK戦ではGK野口の活躍もあり、3−2で制して3回戦に駒を進めた。写真:森田将義

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[インハイ2回戦]静岡学園 1(3PK2)1 東山/7月28日/JヴィレッジP2

 昨年、一昨年はプレミアリーグWESTで上位争いを繰り広げた静岡学園だが、今季は前期を終えて3勝1分7敗と黒星が先行し、12チーム中9位。主軸となる選手もまだ固まっておらず、川口修監督は「今年のチームはまだまだ発展途上」と口にする。

 厳しい県予選の戦いを勝ち上がって参戦する今大会も、まだチームとしての幼さが見え隠れする。1回戦の興國戦も前半20分に先制点を許し、追いかける展開を強いられた。後半の2ゴールで逆転勝ちを収めたものの、テクニックとインテリジェンスに長けた“静学らしさ”は感じる場面は少なかったという。

 迎えた東山との2回戦も苦戦は続く。

 主将の右SB野田裕人(3年)は初戦に出場したが、怪我明けとあってこの試合はベンチスタート。SBは静岡学園の攻撃の生命線と言えるポジションで、サイドでビルドアップのスタート地点となりつつも、相手のプレッシャーを上手く剥がし、ドリブルで前進していく仕事が求められる。この日は頼れる主将がいなかったうえに、東山は立ち上がりから猛プレッシャーをかけて仕事をさせない。

 川口監督はこう振り返る。「サイドバックのところに全てプレッシャーがかかっていた。あそこからしっかりゲームを作って、前に行けなかったら、中へグッと運んでゲームを作らなければいけない。なのに、全部引っかかっていたので、サイドバックが慌てていた」。
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 もう一つ苦しんだのは、東山のDF沖村大也(3年)が徹底して放り込み続けたロングスローだ。距離は飛んでもふわりとした弾道であるチームも多いが、沖村のボールは鋭くて速い。

「うちは相手を分析しない。ノープランで行ったので、ロングスローがあるのも分かっていなかった。強い時の青森山田のロングスロー。あの弾道だとキーパーが出られない」(川口監督)。

 ゴールマウスを託されたGK野口晟斗(3年)もこう振り返る。「前半はロングスローの数も多かったのですが、自分の処理ミスがとても多かった。勇気が出ずに前に出られない場面が多くて、味方に任せてしまった」。

 CKも含めたリスタートの圧力に押し込まれると、前半26分には先制点を許し、1回戦に続いて追い掛ける展開を強いられた。ハーフタイムに入ると戦い方を軌道修正。

「前から守備をして、ロングスローやロングボールの数を減らすことに重点を置いて守備をやっていった。ロングスロー、コーナーキックになったとしても、前半の借りを返そうと自分が勇気を持って前に出ることができた」と野口は話すが、東山の迫力のある攻撃は止まらない。

 それでも何とか粘り強い守備で追加点を与えないまま試合を進めると、攻撃の打開策として、突破力に長けたMF原星也(3年)をサイドに投入。左SBに入れたDF鵜澤浬(3年)の働きを含め、外からの仕掛けで盛り返す場面が出てきた。

 すると、後半35+8分には左から上げたクロスがファーに流れる。これを拾った原が個人技で打開し、中に折り返すと、最後はMF天野太陽(3年)がヘディングシュート。このゴールが決まるとともにタイムアップを迎え、PK戦となった。
 
 ここで活躍したのは、今季途中にBチームから昇格した守護神の野口。「キッカー目線から見て、全て利き足の引っかける方向にシュートが飛んできていた。それに2、3本目で気付けて、それが上手く当たったので良かった」と話す通り、読みを的中させ3本のキックをセーブ。その結果、1−1(PK3−2)での勝利となった。

「自分たちのスタイルをちゃんと表現できなかった」「静学は静学のスタイルを出さないと駄目。ここに来た意味がないので、それを次の試合で表現できるように準備したいと思います」。川口監督が試合後に発した言葉通り、内容には満足できていないが、それでも勝てていることに価値はある。
 
 指揮官はこう続ける。「選手たちが諦めない気持ちだったり、最後までベンチも含めて“みんなで行けるぞ!”という気持ちが最後に出た。そこらへんはトーナメント使用で、すごく大事。あそこで諦めちゃうチームと、最後まで行くチームとでは全く違うと思う。そういうところが昨日も含めて身に付いてきた」。

 発展途上のチームは、苦しみながらも少しずつ福島の地で成長している。次の試合では静学らしさを表現しながら、またさらに成長するはずだ。

取材・文●森田将義