「多発性骨髄腫の進行速度」はどのくらい?症状・診断についても解説!

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日本では毎年10万人に6人が多発性骨髄腫を発症するといわれています。

年齢とともに発症率も上昇しますので高齢化が進む日本では、今後ますます多発性骨髄腫に関わる方が増えると予測されます。

多発性骨髄腫は聞き慣れない病名のため不安を感じる方も少なくないでしょう。本記事では、多発性骨髄腫の進行速度症状について解説し、検査や治療についても詳しく紹介していきます。

多発性骨髄腫に関する適切な知識を持つことで不安が軽減する一助となれば幸いです。

≫「多発性骨髄腫の検査方法」はご存知ですか?症状や原因についても解説!

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

多発性骨髄腫とは

多発性骨髄腫とは、血液のがんの1つです。私たちの脊柱(背骨)のなかには脊髄が存在しており、脊髄のなかには免疫機能を持つ形質細胞が含まれています。その形質細胞ががん化すると多発性骨髄腫を発症します。
通常、形質細胞は病原体から体を守るための抗体をつくりますが、がん化した形質細胞は異常増殖し正常な抗体を生成しません。代わりにM蛋白と呼ばれる無効な抗体をつくり、体を守る役割を果たさずにさまざまな健康問題を引き起こしていきます。

多発性骨髄腫の進行速度はどのくらい?

多発性骨髄腫の進行度を評価する新しいスケールは改訂国際病期分類(Revised-International Staging System:R-ISS)です。この分類法はステージが1から3まであり、体内のがん化した形質細胞(骨髄腫細胞)の量を反映しています。ステージの決定には、血清β₂ミクログロブリン値・血清アルブミン値・血清LDH値・高リスク染色体異常の有無が考慮されます。
では、それぞれのステージについて見ていきましょう。

ステージ1

多発性骨髄腫のステージ1には以下の条件の方が該当します。

血清β₂ミクログロブリン値<3.5mg/L

かつ血清アルブミン値≧3.5g/dl

かつ高リスク染色体異常なし

かつ血清LDH正常範囲

この段階の5年生存率は82%とされています。

ステージ2

多発性骨髄腫のステージ2は、ステージ1またはステージ3に該当しない症状の方に診断されます。このステージの5年生存率は62%です。

ステージ3

多発性骨髄腫のステージ3には以下の方が該当します。

血清β₂ミクログロブリン値>5.5mg/L

かつ高リスク染色体異常

かつ血清LDH高値

このステージの5年生存率は40%となります。多発性骨髄腫の予後に大きく影響を与えるのは、高リスク染色体異常の有無です。ステージごとに年齢や症状を踏まえて、医師は治療方針を決定していきます。

多発性骨髄腫の症状

多発性骨髄腫の初期は無症状で進行して初めて症状が現れることがあります。ここでは、どのような症状が見られるか詳しく解説していきます。

骨病変

多発性骨髄腫は骨病変を引き起こします。増殖した骨髄腫細胞は骨を分解する破骨細胞を刺激し、生体が正常に骨を破壊していくプロセスを早めるからです。同時に骨髄腫細胞は、骨を形成する骨芽細胞の機能を抑制し骨の再生や修復のサイクルに遅れを生じさせます。
このように骨の新陳代謝のバランスが崩れると、骨粗鬆症骨折のリスクが高まります。

腎臓の機能低下

腎臓の機能が徐々に低下していくのも多発性骨髄腫の特徴です。骨髄腫細胞からM蛋白が大量につくられると、腎臓に蓄積し濾過機能に影響を与えます。尿細管が詰まり損傷を受けると腎機能障害や最終的には腎不全に至る可能性もあります。
脱水高カルシウム血症なども、腎臓への負担が強まるので注意が必要です。

出血・貧血

多発性骨髄腫では出血や貧血の症状に注意が必要です。骨髄内で骨髄腫細胞が増え、造血機能に障害が起こると貧血になります。
また、血液凝固因子の血小板が減少することで出血のリスクも高まるでしょう。これらの症状は骨髄腫の進行とともに悪化していきます。

免疫機能の低下

多発性骨髄腫は免疫機能の低下も一般的な問題です。がん化した形質細胞(骨髄腫細胞)がつくるM蛋白は正常な抗体とは異なり、病原体に対抗する免疫反応を示しません。
さらに、骨髄腫細胞が骨髄内で増え続けると正常な形質細胞の数が減ります。このような理由から多発性骨髄腫では体の免疫機能が低下します。

多発性骨髄腫の診断

多発性骨髄腫の確定診断ステージの評価には複数の検査が必要です。ここからは、検査について詳しく解説します。

M蛋白(ベンズ・ジョーンズ蛋白)

多発性骨髄腫の患者さんの尿にはM蛋白が含まれています。M蛋白があるか調べたり1日の尿量からM蛋白の量を測定したりします。また腎臓の機能も確認ができるため定期的な検査が大切です。

血液検査

多発性骨髄腫の患者さんの血液検査では、主に以下の項目を調べます。

造血機能:赤血球・ヘモグロビン・白血球・血小板

腎機能:クレアチニン

骨髄腫の進行度:免疫グロブリン・M蛋白・カルシウム・アルブミン・β2ミクログロブリン

骨髄腫の進行度や造血・腎臓の残存機能を調べる目的で血液検査は行われます。

骨髄検査

骨髄検査とは、腰の骨に針を刺し骨髄液や骨髄組織を採取して確定診断を行う検査です。骨髄腫細胞の種類や悪性度の確認のほかに、治療方針の決定にも関わる重要な検査です。

画像診断検査

画像診断検査も多発性骨髄腫の検査で重要です。X線検査では骨の変形や骨折がないかを確認し、CT・MRI検査では骨髄腫細胞の広がりを調べます。ほかの臓器への転移や治療効果を確認する場合に、PET検査を行うこともあります。

多発性骨髄腫の進行速度についてよくある質問

ここまで多発性骨髄腫の進行速度・症状・診断・検査などを紹介しました。ここでは「多発性骨髄腫の進行速度」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

多発性骨髄腫の初期症状について教えてください。

中路 幸之助(医師)

多発性骨髄腫は、長い経過をたどる病気でM蛋白や骨髄腫細胞が見つかっても初期に症状はありません。定期的に検査を行い、経過観察が続く場合もあるでしょう。高カルシウム血症・腎不全・貧血・骨病変による骨折などの症状が1つ以上ある場合は、症候性多発性骨髄腫と診断され治療が始まります。

多発性骨髄腫の治療にはどのようなものがありますか?

中路 幸之助(医師)

骨髄腫の治療には薬物療法造血幹細胞移植があります。細胞障害性抗がん薬と分子標的薬が骨髄腫への主要な薬物療法です。細胞障害性抗がん薬は骨髄腫細胞を直接攻撃し増殖を抑え、分子標的薬はがん細胞の生存に関連する分子経路を標的にして間接的に骨髄腫細胞の成長を妨げます。造血幹細胞移植は大量化学療法や全身放射線治療などを組み合わせて体内の骨髄腫細胞を消滅させた後、造血幹細胞を点滴で注入する治療法です。多発性骨髄腫の寛解や再発防止を目的にしていますが、完治を目指すこともあります。治療には重篤な合併症のリスクも伴うため、年齢・病状・患者さんご自身や家族の方の望みなどを慎重に考慮して選択されます。

編集部まとめ

多発性骨髄腫の初期は症状がなく早期に発見するのは困難な病気です。

進行速度も患者さんにより異なるため改訂国際病期分類(R-ISS)で進行度を評価し、主治医と相談しながら治療法を決めていくことが重要となります。

骨髄腫細胞は全身に影響を与えていき、多様な症状を引き起こしてきました。

しかし新薬の開発とともに近年では病気のコントロールが格段に向上し、患者さんは長期間より自分らしく日常生活を送ることができてきています。

多発性骨髄腫と関連する病気

「多発性骨髄腫」と関連する病気は11個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

赤血球減少

白血球減少

血小板減少

M蛋白の増加

免疫機能低下

腎障害

過粘稠度症候群

アミロイドーシス

高カルシウム血症

病的骨折

圧迫骨折

脊髄圧迫症状

骨髄腫細胞は造血機能に影響を与え、大量のM蛋白が免疫機能の低下や腎障害などを生じさせます。また骨破壊は高カルシウム血症や骨折の要因になります。

膵臓がんと関連する症状

「多発性骨髄腫」と関連している、似ている症状は6個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

感染症のリスクの増加

骨病変

過粘稠度症候群

腎臓病・アミロイドーシス

貧血

出血

多発性骨髄腫の症状は患者さんによってさまざまです。これらの症状から病院を受診し多発性骨髄腫と発覚することもあるため、日頃から健康状態に注意を払い身近な医師にいつでも相談できる環境を整えることが大切です。

参考文献

多発性骨髄腫の病気について(国立がん研究センター)

多発性骨髄腫の診断と治療の現況

多発性骨髄腫の検査・診断について(国立がん研究センター)