過剰報道に対する処分の背景には空き巣被害なども(写真/USA Today/時事)

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 大谷翔平選手(29才)のニュースが連日のように大きく報じられるなか、メディアの暴走が当人の怒りを買う事態が発生した。『現代ビジネス』が6月12日、大谷が日本テレビフジテレビを“出禁”にしたと報じた。原因は今年5月に大谷が購入した新居に関する報道で、在米ジャーナリストによると「特に大谷選手が怒り心頭に発したのはフジテレビの報道だったようです」とのこと。新居の所在が分かるフジテレビの報道内容に大谷が激怒し、“過剰報道をした人を出入り禁止にして欲しい”と球団側に要望したという。なぜ大谷はそこまで怒ったのか。【前後編の後編。前編を読む

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 大谷の「メディアへの不信感」はもともと根強かった。昨年3月、日本中が熱狂したWBCでは、メディアに「家族取材NG」のお達しを出した。

「東京ドームの試合には両親やお姉さんが応援に駆け付けましたが、大谷選手は『家族が中継映像や報道写真に映り込むのは避けてほしい』としたのはもちろん、家族へのメディア側の接触も禁じていました。母親への取材を許可したヌートバー選手とは対照的でした」(テレビ局関係者)

 また今年2月には、ドジャースのクラブハウスで大谷や、ほかの選手たちを無断で撮影した上、その動画をYouTubeにアップした韓国メディアが「無期限取材活動禁止」という厳罰処分を受けた。親しい人をメディアから守ろうとする大谷の姿勢は、日本球界に在籍していた頃から見られた。

「日本ハム時代、大谷選手が花巻東高校の同級生への取材を避けるよう注意したのに、なかなかやめない番記者がいました。しびれを切らした大谷選手はその記者に『ぼくの同級生をよく合コンに誘っているらしいじゃないですか。そんな人は信用できません』と強い口調で叱咤しました。大谷選手は、近しい人間に迷惑をかけることを極端に嫌うタイプなんです」(スポーツ紙記者)

 さらに、「大谷騒動」は、大谷と並ぶほどの世界的アスリートにまで影響を与えていた。日本時間6月8日、プロボクシング王者の井上尚弥(31才)がニューヨークを訪れ、ヤンキースタジアムで行われたドジャースの試合を観戦した。その際、井上はドジャースの山本由伸投手(25才)との面会を果たし、大谷との対面も見込まれていたが、日本メディアに取材の機会は与えられず、球団は後日、公式Xに写真を掲載するにとどまったのだ。

「シーズン当初から、日本の取材陣が殺到して現場が混乱することがあったんです。ほかの選手からクレームが入ることがあった。ボクシング界のスーパースターの訪問はビッグニュースですが、現場が収集がつかなくなることを恐れて、ドジャースは最初から日本メディアに取材のGOサインを出さなかったそうです」(在米ジャーナリスト)

多発しているペットの誘拐

 そうした背景とともに勃発した今回の「出禁騒動」。大谷が厳しい処分を求めたのは「大切な存在」である真美子夫人と愛犬のデコピンを守りたかったからにほかならないだろう。

 近年、ロサンゼルスでは増加する集団強盗が社会問題になっている。特に狙われやすいのは富裕層で、メジャーリーガーもターゲット。昨年はドジャースの選手だけで3人が留守中の自宅で窃盗被害にあった。

「そのうちの1人は、ドジャースタジアムの試合を終えて車で帰宅する最中に自宅の防犯アラームが作動。防犯カメラには自宅に侵入して室内を物色する2人組が映っていました。不幸中の幸いで家族は留守でしたが、もし家にいて強盗と鉢合わせていたらと想像するとゾッとします」(前出・在米ジャーナリスト)

 3選手の自宅を襲った犯人グループは現時点で逮捕されていない。日本人もターゲットになった。2021年、ツインズの前田健太投手(36才)のロサンゼルス近郊の自宅に窓ガラスを割って3人組が押し入ろうとしたことがあった。早穂夫人(38才)ら家族は外出中で、大きな被害はなかったという。

 加えて気にかかるのは、近年のアメリカでは身代金を目的とした「ペットの誘拐」が多発していることだ。2021年、レディー・ガガの愛犬のフレンチブルドッグ3匹を散歩させていたペットシッターが銃撃され、犯人が犬2匹を奪って逃走した事件が起きた。

 異次元の富裕層が暮らすアメリカでは、日本では考えられないレベルの犯罪が多発している。いくら用心しても足りない国柄だけに、日本のテレビ局の報道には、現地の警察当局も呆れているという。

「もしかしたら、犯罪集団が近隣住民を装って高級住宅街を物色していたかもしれません。そうした人間に“大谷がここに住んでいる”と教えれば、凶悪犯罪者に標的を提供したようなものです」(現地警察関係者)

 とりわけ心配されるのが、真美子夫人の存在だ。銃社会で生まれ育ったアメリカ人は防犯意識が高いが、大谷の愛する伴侶は日本で生まれ、日本で育った。

「バスケ選手として現役時代の真美子さんは、熱心なファンのSNSにコメントを送るなど、ファンとの距離が近かった。ファンに自分のスマホを渡して写真撮影に応じることもありました。無防備で純粋な部分を持つだけに、犯罪がより身近な社会で、しかも住み慣れないアメリカでの生活には心配が募ります。

 ましてや大谷選手は、自宅に真美子さんとデコピンだけを残して遠征に行くことも多い。野球選手はスケジュールが明白で“遠征中で試合に出ている大谷は自宅にいない”ことは全世界が知る事実なので、自宅に真美子さんとデコピンしかいないときを凶悪犯に狙われたら……。愛する人を危険にさらすフジテレビの報道を、大谷選手が許せなかったのは当然でしょう」(前出・在米ジャーナリスト)

 自分のためではなく、真美子夫人のために声を上げた大谷。そこには、家族を守ろうとする大黒柱としての覚悟が滲んでいた。

(了。前編から読む)

※女性セブン2024年7月4日号