トナカイの群れを見守る先住民族サーミの女性。スウェーデン・ディカナス近郊で(2016年10月27日撮影、資料写真)。(c)JONATHAN NACKSTRAND / AFP

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【AFP=時事】フィンランドで20日、政府は先住民族サーミ(Sami)の権利を侵害し続けており、過去10年の間に和解に向けた前提条件が後退したとする報告書が公表された。

 サーミはロシア北部からフィンランド、スウェーデン、ノルウェーにかけて「サプミ(Sapmi)」と呼ばれる居住地に8万〜10万人が暮らしている。フィンランドには約1万人が居住しており、三つの異なる言語を話す。

 フィンランドではサーミは1995年に先住民族として憲法に規定され、固有の文化を維持する権利を与えられた。

 しかし、報告書をまとめた人権専門のマルティン・シェイニン(Martin Scheinin)教授は記者会見で、「最高行政裁判所ではサーミの権利がさまざまな面で不当な扱いを受けている」と指摘。

 教授は特に、同裁判所が2011年以来、サーミ議会選挙における立候補・投票資格に関する同議会の考え方を退けてきた点を問題視。さらに、漁業やトナカイの飼育といった伝統的生活手段やサプミにおける新産業プロジェクトなどをめぐり、同裁判所はサーミの主張を却下したり、調査すら怠ったりしてきたと批判した。

 報告書は2021年に設置された真実和解委員会(Truth and Reconciliation Commission)の委託でまとめられた。

【翻訳編集】AFPBB News

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