都道府県「年金月受給額」最新ランキング…〈1位神奈川県〉と〈47位青森県〉に生じる「あまりに凄い年金格差」

写真拡大

厚生労働省『令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』が発表され、最新の年金受給の実態が明らかになりました。地域別の年金事情をみていきましょう。

統計資料が紐解く、最新「年金受給」の実態

日本の公的年金は、20歳以上60歳未満のすべての人が加入する「国民年金(基礎年金)」と、会社員・公務員が加入する「厚生年金保険」の2階建て構造となっています。

国民年金には、職業などにより、第1号被保険者(農業者・自営業者・学生・無職など)、第2号被保険者(会社員・公務員など)、第3号被保険者(第2号被保険者に扶養されている配偶者)に分かれ、第1号被保険者と第3号被保険者は国民年金に、第2号被保険者は国民年金と厚生年金に加入。第1号被保険者は保険料を自身で納めますが、第2号被保険者は勤務先を通じて納付(給料から天引き)。また第3号被保険者は第2号被保険者の加入制度が負担し、自己負担はありません。

厚生年金保険は、適用事業者に常時使用されている70歳未満が被保険者となります。また平成27年10月に旧共済年金が厚生年金に統合され、従前の厚生年金被保険者の類型に属する人は第一号厚生年金被保険者、旧共済年金の加入者で国家公務員共済加入者だった人は第二号厚生年金被保険者、地方公務員共済だった人は第三号厚生年金被保険者、私立学校共済だった人は第四号厚生年金被保険者と分類されています。

ここからは厚生労働省の資料から、最新の年金受給の実態をみていきましょう。

厚生年金平均受給額…月14万4,982円

厚生労働省『令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、公的年金被保険者数は、2022年度末に6,744万人となり、前年度から14万人増加しました。公的年金受給者の延べ人数は7,709万人で、前年度から11万人の増加。実受給権者数は3,975万人で47万人の減少。これは令和4年度に、男性の特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢が64歳に引き上げられたことが影響していると推測されます。

厚生年金被保険者は4,618万人で、前年度から82万人の増加。標準報酬月額の平均は32.1万円(男性36.5万円、女性25.5万円)で、前年度から0.7%増。標準賞与額の1回当たりの平均は44.1万円(男性52.2万円、女性31.1万円)で、こちらは前年度から1.8%との増加でした。さらに1人当たり標準報酬額(総報酬ベース・年額)は454.3万円(男性520.3万円、女性352.6万円)で、前年度から1.4%の増加となっています。

給付状況をみていくと、厚生年金保険(第1号)の老齢給付の受給者*の平均年金月額は、併給の老齢基礎年金を含めて老齢年金が14万4,982円。前年から683円の減少となりました。また65歳以上の受給権者*の平均年金月額は、男性が16万7,388円、女性が10万9,165円でした。

*裁定手続きにより年金もしくは一時金を受ける権利(受給権)が確定した人を受給権者、受給権が確定し実際に給付を受けている人を受給者という

国民年金平均受給額…月5万6,428円

国民年金の被保険者は1,405万人で、前年から26万人の減少。男女別にみると、男性は741万人で前年度1.2%減、女性は664万人で2.6%減でした。また第3号被保険者である専業主婦(夫)は721万人と、前年度から42万人の減少。男女別にみると、男性は12万人で前年度から4.1%増、女性は709万人で5.6%の減少でした。

給付状況をみていくと、国民年金の老齢年金受給者の平均年金月額は5万6,428円。また基礎のみ、共済なし・旧国年の老齢年金受給者の平均年金月額は5万1,607円でした。

「厚生年金」と「国民年金」の受給額…老後20年で広がる年金格差

都道府県別に年金の受取額をみていきましょう(関連記事:『都道府県「厚生年金」「国民年金」受給額ランキング…2023年3年度末現在 』)。

老齢厚生年金受給者の平均受給月額が最も多いのは「神奈川県」で16万4,088円。前年から1,233円減少しました。2位以下は「千葉県」「東京都」「奈良県」「埼玉県」と続きます。一方で最も平均受給月額が少ないのは「青森県」で12万2,134円。

また老齢基礎年金受給者の平均受給月額が最も多いのは「富山県」で59,940円。最も少ないのは「沖縄県」で5万1,864円でした。

【都道府県別「厚生基礎年金受給額」上位5】

1位「神奈川県」16万4,088円(▲1,233円)

2位「千葉県」15万8,918円(▲1,099円)

3位「東京都」15万7,478円(▲1,183円)

4位「奈良県」15万6,630円(▲971円)

5位「埼玉県」15万5,412円(▲907円)

【都道府県別「国民基礎年金受給額」上位5】

1位「富山県」59,940円(▲94円)

2位「福井県」5万9,250円(▲89円)

3位「島根県」59,211円 (▲65円)

4位「長野県」58,965円(▲85円)

5位「石川県」58,898円(▲99円)

厚生年金『令和4年 賃金構造基本統計調査』によると、厚生年金受給額トップの「神奈川県」の平均給与(男女計、学歴計)は、月収で33万5,600円、年収で539万2,500円。一方、47位の「青森県」の平均給与は、月収で24万7,600円、年収で375万4,200円。この調査の平均給与は当該地域の事業所に勤めている人のものなので、年金受給者と完全一致するわけではありませんが、現役時代に月9万円、1年で160万円ほどあった給与格差は、月4万円、1年で48万円ほどの年金格差となります。

65歳から年金を受け取ると、75歳までに480万円、80歳までに720万円、85歳までに960万円と、老後が20年続けば、1,000万円近くもの年金格差が生じる計算です。

地域によって物価や生活費が異なるので、年金差=生活水準につながるものではありません。ただ2階建て構造の公的年金。サラリーマンで平均16万円程度ということは、税金等が2万円ほどひかれて、手取りは14万円ほどになる計算。これで「老後の生活は十分」かといえば心許ない金額で、不測の事態に耐えられるかといえば難しいでしょう。

今後、高齢化が進み、高齢者を支える現役世代が先細りになるのは確実。2070年には現役世代1人で1人の高齢者を支えなければいけないといわれています。

2070年、ちょうど、これから社会に出ようとする若者がちょうど高齢者となる時代。いまと同水準の年金がもらえるかといえば、難しいと言わざるを得ません。社会に出た瞬間から「年金がもらえたらラッキー」くらいの気持ちで資産形成に励むしか、老後の安心は掴めそうもありません。

[参考資料]

厚生労働省『令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』

厚生労働省『介護現場におけるハラスメントに関する調査研究事業実態調査』