J2リーグ第39節 東京V 3(0-2)2 千葉
14:03キックオフ 味の素スタジアム 入場者数13,144人
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壮絶な試合だった。

プレーのスピードと強度を上げることで、シーズン途中にチームを劇的に変貌させた千葉と、シーズン当初から強度の高いスタイルで上位をキープし続けてきた東京V。どちらが相手の強度を上回るかが焦点の戦いで、主導権を握ったのは東京Vだった。ボールへの寄せの速さと個々の戦いで千葉を上回り、前半途中からスピーディな攻撃でしばしば千葉ゴール前に迫った。

ところがシュートが枠に飛ばない。試合は完全に東京Vのペースだったが、リードしてハーフタイムを迎えたのは、ドゥドゥがロングシュート2本をゴールに突き刺した千葉であり、内容と結果が必ずしも一致しないサッカーという競技のひとつの特性でもあった。

後半12分にドゥドゥがハットトリックとなるPKを決めていたら、千葉は東京Vの圧力にも最後まで冷静に対処して試合を終えていたかも知れない。だが千葉のPK失敗の直後に、城福監督は最初の戦術的選手交代を行う(ハーフタイムの交代は選手の負傷によるもの)。そして試合を決めたのは、両チームの控えベンチの長さ(選手層)だった。交代選手たちの力で、さらにプレーの強度を上げる東京Vと、徐々にその対応が遅れる千葉。その状況から逆転劇は生まれた。決勝ゴールとなるミドルシュートを決めたのが、試合開始からダイナモの動きでチームをけん引していた中原であったのが、この試合を象徴していた。

まさにチームが一丸となり、魂の勝利ともいえる勝利を手にした東京Vと、7連勝中に示した強度と集中度ではまだ十分ではないことを、身をもって突きつけられた千葉。恐らく両者はJ1昇格プレーオフでも再び顔を合わせる。そのときにどんな戦いが繰り広げられるのか。今後に注目したい。

田村修一(たむら・しゅういち)
1958年千葉県千葉市生まれ。早稲田大学院経済学研究科博士課程中退。1995年からフランス・フットボール誌通信員、2007年から同誌バロンドール選考(投票)委員。現在は中国・体育週報アジア最優秀選手賞投票委員も務める。