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秋田県美郷町の作業小屋に長時間立てこもっていたクマ3頭が10月5日、駆除された。これに対して、秋田県庁には「なぜクマを殺したのか」という苦情の電話が県外から殺到しているという。

県自然保護課によると、今年はクマによる人身被害が過去最高となっており、特に山から人里まで下りて住民と接触するケースが増えているという。

美郷町の現場近くには、認定子ども園があり、山に返しても再び現場に戻ってきて人に被害を与える恐れがあることから、県と町が協議のうえで、クマ3頭の駆除をおこなった。

県は10月1日から「ツキノワグマ出没警報」を発令している。また、ホームページでも情報を発信して、クマを寄せ付けないような工夫や環境づくりをするよう呼びかけている。

⚫️クマによる人身被害が今年は過去最高

県内では例年、クマによる人身被害は10件に満たなかったが、今年はすでに30件も発生している(10月4日現在)。その多くが、農作業中や散歩中であり、人の生活圏内で起きている。

県自然保護課の担当者は、弁護士ドットコムニュースの取材に対して「高齢化で山と人里の境にあった田畑が使われなくなり、クマの生息地域が広がっていることが、人里に下りてくるようになった背景にあるのではないかと推測しています」と話す。

クマとの接触は、人命や農作物への被害があるといい、今年は県内で過去最高のペースである590頭が駆除されているという(9月19日現在)。美郷町のクマも駆除の対象となったが「人命を守るためにご理解いただければ」(県自然保護課の担当者)。

⚫️OSO18駆除でも抗議殺到、北海道が異例の「投稿」

増え続けるクマ被害に、秋田県はチラシを作成して「いつどこでもクマに遭遇する可能性があります」と住民に注意を呼びかけている。

たとえば、クマが人里の果樹や農作物などの食べものを覚えないよう電気柵で覆ったり、家の周辺や通学路のヤブを刈って見通しをよくするなどの対策が有効だという。

また、事故の大半はバッタリ出くわしてしまったときに発生するため、バッグに鈴をつけたり、スマホで音楽をかけながら歩いたりするようアドバイスしている。

今夏には、北海道で牛66頭を襲った「OSO18」が駆除されたが、駆除したハンターに抗議が殺到した。そのため、北海道は公式エックス(旧ツイッター)で、理解を求める異例の投稿をして反響を呼んだ。

「【#ヒグマ 有害捕獲へのご理解のお願い】 人や農業などの被害防止のため、やむを得ず捕獲する場合があります。 この捕獲は地域の安全に欠かせないもの。捕獲への非難は、その担い手確保の支障となりかねません。」

秋田県庁にも、美郷町のクマを駆除したことについて、県外から苦情が殺到しているが、自然保護課の担当者は「クマを駆除する以前に、とにかく対策が大事です」と述べ、人への被害が出ないような対策を呼びかけている。