MBA取得者は会社から評価されるのでしょうか(写真:プラナ / PIXTA)

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30代前半の会社員です。学生時代からさまざまな自己投資に励み、20代後半のときに国内でMBAも取得しました。知識はあるし、モチベーションも高いと考えています。しかしなぜか勤務先ではあまり評価されず、苦悩しています。社内でもMBA取得者はほぼいませんし、取得者はたいてい転職をしていることもあり、自分も職場を変えるべきか悩んでいます。

自己投資はお金がかかるのでその分の回収も早めたいです。何よりも有資格者を生かせない会社にいるのは、やはりだめなのでしょうか。同期と給与水準が同等というのも納得がいきません。MBAが評価される会社や職種はありますでしょうか?

MT 会社員

何の資格を持っているかは、関係ない


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MBA取得者であるから評価されるのではなく、MBA取得時の学びを生かして仕事ができるヒトが評価されるのです。

職場における評価は、あくまでも仕事の結果としての評価です。

何の資格を持っているとか、どこの学校を卒業したとか、そういったことは本来まったく関係のない話なのです。

もちろん「本来は」というくらいですから、例外はあります。仕事の結果によらず、評価や待遇が同一という会社もあるにはあります。

頂戴した相談からは、MTさんが勤務されている会社の評価体系や、同期との報酬などの差がどの程度あるのか、または上位の役職者の待遇がこの先MTさんが目指す報酬水準に照らし合わせるとどうなのか、といったようなことはわかりかねます。

しかしながら「あまり評価されず」、と書いていらっしゃることから、MTさんの自己評価と会社からの評価に著しい差異が生じているのは事実でしょう。

問題はその差異がどこに起因するか、です。

仮にMTさんが、「MBAまで取得したのに評価されない」と考えているとすると、先に述べたように、MBA取得者というだけで評価を求めること自体が間違えているように思います。

繰り返しですが、「今現在あなたは何ができますか」「具体的にどんな貢献をしていますか」、という点で、仕事における評価が決まります。「過去にどんな努力をしましたか」ではないのです。

MBA取得や、ほかの学歴、資格の勉強は「過去のもの」です。

過去の実績が通用する場面は、仕事においてはほとんどありません。

仕事においてはつねに、それらを取得した経験などを生かして「今どんな付加価値を組織に提供できますか」、が問われるのです。

したがって、本来評価される対象ではない過去の努力の賜物を持ち出して「評価してくれない」というのはお門違いというものですし、それを期待してはいけません。

また、MTさんはご自身を「自己投資もモチベーションも高い」と評価されていますが、その自己投資やモチベーションの方向性は、会社の求めている方向と合致していたか否かを考えたことはありますでしょうか?

世の中には報われる努力と、そうではない努力があります。

少なくとも自分が今、または今後所属するかもしれない業界や会社において、「結局何が求められているのか」を考えずに努力しても、報われない可能性は非常に高いのです。

会社が求める方向と自分の努力は合致している?

自分が目指す方向と、会社が目指す、または求める方向性は合致している必要があります。

求められていないことを努力しても、本人は頑張ったつもりでも、そもそも評価の対象外、という話になりかねません。

ですから「評価されない」と嘆き、よそを探す前に、そもそも論として何が評価されるのか、どんな結果を出すべきなのか、といった評価体系や方針をまずはキチンと理解したうえで、ご自身がどのように振る舞うべきかを考えたほうがよいでしょう。

これは現在の職場でもそうですし、仮に将来転職されることがあるのであれば、そのあたりのことはキチンと理解したうえで、努力の方向性を探ったほうがよいです。

向かうべき方向性をキチンと理解したうえで行動するのは、仕事において結果を出すための基本中の基本です。

さて、反対に仮にそういった状況ではなく、周りも認めるほど仕事で結果を出しているのに、同期と横並びの報酬や評価だ、ということであれば話は別です。

その場合は、恐らくMTさんが求める職場環境とそもそも違うという話でしょうから、転職も視野に入れて、ということになろうかと思います。

いずれにせよ、「評価されない」の原因がどこにあるのかをキチンと理解することが先決です。

評価や仕事に対する認識の相違なのか、評価システムそのものなのか。

原因がどこにあるのかによって当然のことながら打つ手も変わりますから、まずはそこがスタートになるわけです。

戦略的目線を、キャリア形成で生かす

キャリア形成は、戦略的目線をいかに持てるかの勝負、という側面もあります。

MTさんもMBAで勉強された、ということですから各種戦略論なるものも勉強されたハズです。

そしてそういった戦略論の基本の一部として、市場や顧客、競合を知り、自分自身(自社)を知り、その関係において打つ手を考える、といった思考回路を繰り返し学んできたハズです。

ここでいう市場や顧客、競合というのは、会社であり上司や同僚です。もっと広い視点でいうと労働市場という場であり、世の中全般の職業人であるわけです。

何が求められていて、周りはどんなスキルや結果を出しているのか。そしてそれらは今後どう変化していくことが予想されるのか。その中で自分はどう差別化を図り、どの場面でどういった結果を出すべきなのか。

そういった戦略性や思考をぜひご自身のキャリア形成に生かしたほうがよいでしょう。

ご自身の理論だけでは戦略や行動計画が立てられないのは、MBAでさんざん勉強されてきたことと思います。

ぜひ訓練した思考などを応用し、報われる努力をするクセをつけてください。

そしてもう1つ大事な事を最後に。

「有資格者を生かせない会社」という件ですが、これはちょっと受け身的な印象を受けてしまいます。

会社に何かをしてもらうのではなく、自分がどんな貢献ができるのか、を考えるのが先です。

学生であれば「与えられること」が前提でもよいのですが、社会人であり、また今後キャリアを発展させていこうとお考えのようですから、そういった受け身ではいけません。

自分の道を自分で切り開いていく、という気概が必要です。

自分の付加価値を高めることが大切だ

待っていれば誰かが何かをしてくれるわけでもありませんし、魅力的な仕事やキャリアがどっかから降ってくるわけではありません。

仕事を自分なりの創意工夫で魅力的なものにし、具体的な貢献をすることで、社内外の評価を自ら高める、すなわち労働市場における自分自身の付加価値を高める、ということが大切です。

受け身のスタンスでキャリアにおいて輝かしい功績をあげることはできませんし、自分にあった仕事を見つけることもできません。

能動的に、積極的に切り開いた結果として、そういった理想の仕事やキャリアを見つけるのです。

MTさんがそのような考え方で、積極的にご自身の未来を切り開かれるであろうことを応援しております。

(安井 元康 : 『非学歴エリート』著者)