日本オラクルは3月23日、マルチクラウド活用に関する調査結果を発表した。同調査は、北米で1,000人以上、日本を含むその他の地域で500人以上の従業員を有する企業を対象とし、合計1,500人から回答を得たもの。

グローバルと日本で異なるマルチクラウドを利用する動機

日本オラクル株式会社 事業戦略統括 事業開発本部 本部長 佐藤裕之氏は、調査結果のポイントとして、「98%の企業がマルチクラウドを導入済みまたは導入する予定」「96%の企業が複数のSaaSプロバイダーを使用中または使用する予定」「83%の企業がマルチクラウド相互接続を導入済みまたは導入する予定」などを挙げた。

日本オラクル 事業戦略統括 事業開発本部 本部長 佐藤裕之氏

「Multicloud in the Mainstream(主流となるマルチクラウド活用)」の調査結果のポイント

佐藤氏は、日本特有調査結果を主に紹介した。まず、上図にもあるように、今回の調査では、日本企業がマルチクラウド戦略を推進する際、グローバルよりもコストの最適化を重視していることが明らかになったという。例えば、パブリッククラウドを利用する動機は、グローバルでは「データ主権と場所」が最も多いが、日本は「コスト最適化」が最も多い。

複数のパブリッククラウドを使用する重要な動機は何か

また、マルチクラウド利用において直面している課題においても、日本の回答はグローバルの結果と異なっている。グローバルは「クラウドプロバイダーの管理」が最多であるのに対し、日本はセキュリティが最多となっている。その背景について、佐藤氏は「日本はセキュリティにシビアに取り組んでいるからではないか」との推測を示した。

複数のパブリッククラウドを使用して直面する課題は何か

さらに、現在のユースケースにおいても、日本はグローバルと異なる結果が出ている。グローバルは「クラウド環境間のコスト最適化」が最多であるのに対し、日本は「開発者の選択支持」が最多となっている。

そのほか、プライマリのクラウドプロバイダーを選定する要因にもグローバルと日本の差異が見られる。グローバルは会社のブランディングや評判が最多であるのに対し、日本は地理的なフットプリントが最多となっているほか、サービスと機能の多様なポートフォリオを支持する回答も多い。この点について、佐藤氏は「日本企業は実績があるサービスを使いたいという意向が大きく、容易な移行が望まれている。上位の要因はいずれも当社が顧客から受ける質問が並んでいる」と語っていた。

オラクルのクラウド戦略、国内における分散クラウドの採用進める

続いて、常務執行役員 クラウド事業統括 竹爪慎治氏が、同社のクラウド戦略について説明した。同氏は、「エコシステムの構築に力を入れるなど、クラウド事業においては、他の事業とスタンスを変えている。いわば、われわれのほうからドアを開ける姿勢をとっており、従来とは違うアプローチをとっている」と、クラウド事業の進め方がとかくベンダーロックインと評されがちな同社の評判とは異なることを強調した。

日本オラクル 常務執行役員 クラウド事業統括 竹爪慎治氏

また、竹爪氏は企業がマルチクラウドを進めていくに際してはさまざまな課題があるとし、これらの課題解決に向けては、他社を含めた連携が必要であり、最適なインプリメンテーションに向けてパートナーとの関係構築が重要と説明した。

竹爪氏はクラウドに関する同社の戦略として、分散クラウド戦略を紹介した。この戦略はマルチクラウド、パブリッククラウド、ハイブリッドクラウド、専用クラウドから構成される。同氏は、「分散クラウド戦略の下、各ソリューションのポートフォリオを拡張する中で、他社との連携が重要になっている」と、改めて他社との連携の重要性を訴えた。

オラクルが掲げる分散クラウド戦略

マルチクラウドにおける施策として、マイクロソフトとの提携が紹介された。両社は2019年よりマルチクラウドの取り組みを推進しているが、今年の2月には、「Oracle Database Service for Microsoft Azure」の国内提供を開始した。

「Oracle Database Service for Azure」は、Microsoft AzureからOracle Cloud Infrastructure(OCI9上のOracle Databaseを利用できるサービスだ。

そして、竹爪氏は日本において分散クラウドの採用を進めていきたいと述べた。同氏によると、分散クラウドによって、「ITコストの最適化」「データ主導のDX(デジタルトランスフォーメーション)」「統一されたビジネスサービス基盤」といったメリットを得られるという。「現在、バックエンドを当社のクラウドに移行し、他のシステムは他社のクラウドを活用しているという形態が多い。分散クラウドで統一されたビジネスサービス基盤を構築し、データドリブンな形でクラウドを活用してもらうことを実現していきたい」(同氏)