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「苦手なママ友の家に、匿名で苦情のメモを投げ入れてしまったのですが、訴えられることはあるのでしょうか」。こんな相談が、弁護士ドットコムに寄せられています。

相談者の女性は、あるママ友が「仕事やワンオペが大変」などの愚痴ばかりで、夫と離婚するつもりがないのに相談を持ちかけてくるところにうんざりしていました。

そこで、女性は「周りが不快に思っている」という主旨の内容のメモを、ママ友の家に投げ入れてしまいました。匿名のメモではあるものの、「犯人」として特定されたり訴えられたりする可能性はあるのでしょうか。新保英毅弁護士に聞きました。

●脅迫罪になるか?

--今回の行為はどのような法的問題がありますか。

今回のメモは、相手方やその家族の生命、身体、財産や名誉を害する直接的な表現はないため、刑法上の脅迫罪に該当する可能性は低いと思います。

ただ、「周りが不快に思っている」という記載は、解釈の仕方によっては、相手方の悪い評判を言いふらす予告を含んでいると読めるため、場合によっては、名誉に対する害悪の告知として脅迫罪になる可能性もあるでしょう。

また、今回のような匿名の投書は、陰湿であり、意見表明の態様として社会通念上許容される限度を超えているため、民事上の不法行為として慰謝料を支払う責任を負う可能性もあります。

ただし、今回のメモは、直接的な加害の告知ではないため、刑法上の脅迫罪、民法上の不法行為と評価される場合であっても、法益侵害の程度は比較的僅少といえるので、刑事責任の程度や支払う慰謝料額は比較的小さいと思われます。

--メモを投げ入れた場合、特定されますか。

目撃者や防犯カメラがない場合、筆跡鑑定や指紋採取をしない限り現実的には困難でしょう。そして、法益侵害の程度が僅少であることもあわせて考えると、現実的に、刑事上、民事上の責任を問われる可能性は低いと思われます。

【取材協力弁護士】
新保 英毅(しんぼ・ひでたか)弁護士
2004年弁護士登録。相続・遺産分割事件、中小企業の法務の案件を多く取り扱っている。モットーは「依頼者ひとりひとりに適したオーダーメイドのサービス」。
事務所名:新保法律事務所
事務所URL:http://shinbo-law.com/