MF西村の足首へDF奈良がタックルに東城氏が言及【写真:Getty Images】

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MF西村の足首へDF奈良がタックル、カード提示“なし”の事象を検証

 日本サッカー協会(JFA)は10月7日にオンラインでレフェリーブリーフィングを開催し、扇谷健司審判委員長と東城穣Jリーグ審判デベロプメントシニアマネジャーがJ1第31節までの主な事象について説明した。

 そのなかで、9月10日のJ1第29節・横浜F・マリノスとアビスパ福岡のゲームにおいて、レッドカードとすべき事象が見逃された場面が「VARを含めたコミュニケーションが課題」とされた。

 この試合では前半6分、横浜FMの攻撃でMF西村拓真がパスを受け、さらに味方へパスをつないだタイミングで遅れて福岡のDF奈良竜樹が西村の足にタックルをする形になった。御厨貴文レフェリーはファウルを認識したがアドバンテージを採用している。ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)からはオンフィールドレビューの進言がなく、奈良にはカードが提示されることなくゲームが進んだ。

 東城シニアマネジャーはこの場面を「退場とすべき事象」であるとして、その根拠に「(奈良の)膝が伸びきっていて、足裏がくるぶしの上付近に接触。(西村の)地面についている足で力が逃げない。(奈良の)全体重が相手に掛かっている。(西村の)足首が極度に曲がっている。(タックルが)やや遅れたタイミング、ボールに触れられていない」といった理由を挙げた。

 一方で「レフェリーとしては見極めが難しい。ボールがプレーされた後で先を追ってしまうこと。アプローチの勢いが高いわけではないこと。アドバンテージを採用しているので、ファウルの認識はある。ただし、足裏が強く入っていることは認識していない」として、その先にVARとのコミュニケーションに問題があったという認識を示した。

 このブリーフィングではVARとの交信音声も公開されたが、高山啓義VARは御厨レフェリーに「どう見えたか」を質問しているものの、御厨レフェリーがピッチ上で両チームの選手たちとコミュニケーションを取るような声が聞こえてくるものの、奈良と西村の接触について映像と符合するような言葉はなかった。御厨レフェリーはプレーを再開しようとする選手に「チェックを待ってほしい」という言葉を繰り返していて、全体的には両者の確認ができていないまま「チェック・コンプリート」と高山VARが発声している。

VARがどのようにアプローチするかの課題も顕著に

 東城レフェリーは一連の流れについて「コミュニケーションのところ。チェックをどのように伝えるか。レフェリーが見えていないのを伝えたうえで、足裏が入っていないとレフェリーが言っているなら、それは違うと伝えたうえで次のステップに進めるべきだった。このシーンはオンフィールドレビュー(OFR)を勧めるべき。現場のレフェリー、色々と話しかけられる中での対応はあるが、どこかでVARと話す時間も必要。コミュニケーションの課題。現場は無視できないが、どこかで話す時間を作る。選手にも協力をしてもらうことが必要」と、落ち着いて主審とVARがコミュニケーションを取っていないことが問題の根にあるとした。

 また、この場面では奈良の接触の仕方が映像からは明らかに危険な形だったこともあり、東城シニアマネジャーは「明らかなのであれば、(どう見えたかを)レフェリーに聞くのではなく事実を伝えるのも重要」と、VARがどのようにアプローチするのかにも課題があったと話した。

 全体的には、チェック中に執拗にプレーを再開しようとする選手をレフェリーが制止する声も多かっただけに、VARとのコミュニケーションを確立するために選手側の理解も必要な場面でもあった。なるべくチェックの時間を短くして円滑にプレーが流れるようにしたい意向と、必要な場面では確認の時間を確保することのメリハリが重要なことが浮き彫りになった場面と言えそうだ。(FOOTBALL ZONE編集部)