by Steve Jurvetson

テスラのイーロン・マスクCEOが設立した宇宙企業・SpaceXの提供する人工衛星を利用したインターネットサービスが「Starlink」です。通信インフラが整っていない地域でも高速なインターネット回線にアクセスできるというStarlinkで、ユーザー数が増えたことで通信速度が低下しているというデータが、調査企業のOoklaによって公開されました。

Starlink Slowed in Q2, Competitors Mounting Challenges | Ookla®

https://www.ookla.com/articles/starlink-hughesnet-viasat-performance-q2-2022

Starlink Speeds Drop Significantly in the US Amid Congestion Woes | PCMag

https://www.pcmag.com/news/starlink-speeds-drop-significantly-in-the-us-amid-congestion-woes

以下の折れ線グラフは2021年第2四半期(4〜6月)から2022年第2四半期までの1年でStarlinkの通信速度の中央値(縦軸、Mbps単位)の推移を示したもの。実線は下り通信速度、点線は上り通信速度を示しています。「All Provider Combined」は固定ブロードバンド事業者すべてを対象に調査した中央値で、「SpaceX Starlink」はStarlinkのみの推移を示しています。

上記のグラフを見ると、下り通信速度の中央値はカナダ(CA)・フランス(FR)・ドイツ(DE)・ニュージーランド(NZ)・イギリス(UK)・アメリカ(US)で、2021年第二四半期から2022年第二四半期にかけて9%〜54%の低下を見せています。ただし、アメリカでは2022年第二四半期中にも中央値で60Mbps以上の下り通信速度を記録しており、動画閲覧やゲームのダウンロード、ビデオチャットなど、インターネットが必要な一般的な作業を行うには十分なレベル。上り通信速度も過去1年ですべての国において低下しています。OoklaはStarlinkの通信速度低下の原因について、「Starlinkのユーザー数が増加したから」と分析しています。

また、Ooklaによれば通信遅延については固定ブロードバンドと比較すると大きいものの、ほとんどの国で比較的変化がなかったとのこと。ただし、ニュージーランドだけは23ミリ秒減少していたそうです。Ooklaは「インターネットサービスがない、あるいは遅い、もしくは高速インターネットを利用するための手頃な選択肢がほとんどない地域では、たとえ速度が低下していてもStarlinkにまだ価値があると思われます」とコメントしています。

以下は北米エリア各国の固定ブロードバンド事業者と衛星インターネットサービスを、下り通信速度の中央値(青緑)が高い順に並べた図。一番右にある数字(黄緑)が遅延です。衛星インターネットサービスの中ではどの国でもStarlinkの下り通信速度が最も高速で、メキシコとプエルトリコでは固定ブロードバンド事業者合計を上回っていました。上り通信速度の中央値(紫)については固定ブロードバンドの方がやや速いといったところ。

上記と同様に、ヨーロッパエリア各国の通信速度の中央値で並べたもの。ルーマニア・スペイン以外では、Starlinkの下り通信速度の中央値が固定ブロードバンド事業者を上回っています。ただし、上り通信速度ではポルトガル以外ですべて固定ブロードバンド事業者合計の方が高い中央値を示しています。また、遅延についてはやはり固定ブロードバンドと比較すると、Starlinkは大きいことが判明。

南米の場合が以下。中央値で上りも下りも最も高速なのがチリの固定ブロードバンド事業者でしたが、Ooklaによればチリの固定ブロードバンドは世界で2番目に高速とのこと。なお、南米でStarlinkが提供されているのはブラジルとチリのみです。

オセアニア地域では、オーストラリアとトンガでは固定ブロードバンドがあまり高速ではなく、Starlinkの通信速度中央値が上回りました。ニュージーランドでは固定ブロードバンド事業者合計の方が高速で、特に上りの通信速度で大きな差が見られます。

Ooklaは「StarlinkがT-Mobileと提携し、新しいスマートフォンが衛星通信に対応するようになることで、衛星通信がモバイルの領域に導入されることになります。世界へのアクセスはもはや接続方法ではなく、体験の良し悪しが問われることとなるでしょう。特に、より多くのプロバイダーが最速かつ最高の衛星通信体験を競い合う、真にグローバルな宇宙開発競争が始まれば、消費者にとって有利になることが期待できます」とコメントしました。

なお、マスクCEOによれば、2022年9月26日時点でStarlinkの端末生産台数が100万台を超えたそうです。