「坐骨神経痛」を発症する原因はご存知ですか?医師が監修!

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お尻から足にかけて痛みがある、腰を反らすとしびれを感じるといった症状がある場合は坐骨神経痛かもしれません。

坐骨神経痛とはお尻から足にかけて痛みやしびれを感じる症状の総称です。

坐骨神経痛を引き起こす原因にはさまざまな病気がありますが、主に腰部脊柱管狭窄症腰椎椎間板ヘルニアの2つが原因となります。

悪化すると歩行困難など重篤な症状につながる危険性があるため、痛みが1週間以上続く場合は早めに医療機関を受診しましょう。

この記事では、坐骨神経痛の原因・治療方法・予防方法などを詳しく解説します。

坐骨神経痛の特徴

坐骨神経痛の特徴や症状を教えてください。

坐骨神経痛は下肢に現れる症状の総称で、お尻から足にかけて痛み・しびれが続きます。坐骨神経は坐骨からお尻の筋肉である「梨状筋(りじょうきん)」から足へと向かう末梢神経であり、人体のなかで一番太く長い末梢神経です。腰からつま先まで伸びているのが特徴です。

末梢神経は脳と脊髄からなる「中枢神経」と体の各部を結ぶ役割のほか、身体を自由に動かしたり温度を感じたりする伝導路の役割もあります。坐骨神経痛の主な症状は下記です。

お尻から足にかけての痛み

長時間立っているのが苦痛

腰をそらすと足に痛みやしびれを感じる

お尻の痛みで座り続けることが苦痛

歩くと足に痛みがある

体をかがめると痛みが増す

このような状態にひとつでも当てはまる場合は坐骨神経痛の可能性があります。痛みの感じ方や程度は人それぞれですが、お尻や太もも・ふくらはぎ・すねにかけて鋭い痛みやしびれるような痛み・強い張り・冷感・灼熱感・締めつけ感が代表的な症状です。下肢の一部に感じることもあれば、下肢全体に感じる場合もあります。

坐骨神経痛は病名ではなく症状の1つなのですね。

坐骨神経痛そのものは病名ではありません。足腰やお尻の痛み・しびれ・筋力の衰えなどの症状を総称して坐骨神経痛と呼びます。

症状を引き起こす病気は別にあり、代表的な病気が「腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)」と「椎間板ヘルニア」の2つです。

腰部脊柱管狭窄症は50歳以上の中高年世代に多い病気で、加齢により脊柱管が狭くなることで坐骨神経痛を引き起こします。体を反らせる動作が脊柱管を狭めて神経を圧迫することが原因です。

腰椎椎間板ヘルニアの場合は20代が最も多く、続いて30~40代や10代に多い病気です。椎間板が潰れて飛び出すことで腰椎の神経を圧迫して坐骨神経痛が起こります。

坐骨神経痛の原因が知りたいです。

坐骨神経痛の原因となる病気はさまざまなものがあります。主な原因として腰椎疾患が挙げられ、下記が代表的な病気です。

腰部脊柱管狭窄症

腰椎椎間板ヘルニア

椎間関節炎

梨状筋症候群

仙腸関節障害

とくに多いのが腰部脊柱管狭窄症と腰椎椎間板ヘルニアです。また、長時間のデスクワークや運動不足が坐骨神経痛を引き起こすこともあります。腰椎疾患以外が原因の場合は下記の病気が挙げられます。

中毒性疾患(アルコールなど)

帯状疱疹

糖尿病

下肢の動脈閉塞

子宮内膜症など婦人科疾患

坐骨神経痛の診断と治療方法

受診を検討する目安が知りたいです。

お尻から足にかけて強い痛みやしびれを感じ、症状が続く場合は坐骨神経痛の可能性があるため早めに受診することをおすすめします。整形外科で検査を受け、坐骨神経痛の原因を調べましょう。

坐骨神経痛ではどのような検査を行いますか?

坐骨神経痛の検査では主にレントゲン検査・MRI検査・CT検査などの画像検査を行います。

坐骨神経はお尻からつま先まで長く伸びているため、症状が出る部位も広範囲です。どの神経が圧迫されているのかを調べるため、神経学的検査を行います。

ラゼークテスト:腰椎椎間板ヘルニアの疑わしい部位を調べる(お尻・ももの後側・足先)

FNSテスト:腰椎椎間板ヘルニアの疑わしい部位を調べる(太ももの前面・外側)

ケンプテスト:圧迫されているのが椎間板の内側か外側かを調べる

反射検査:神経が正常に働いているかどうかを調べる

徒手筋力検査:筋肉を支配している神経が正常かどうかを調べる

知覚検査:感覚に異常がないかを調べる

診断基準があれば教えてください。

坐骨神経痛の診断は問診・診察レントゲン検査・MRI検査の結果と患者本人が訴える症状・年齢を考慮して総合的に診断します。感染症や腫瘍による坐骨神経痛かを判断することが重要です。

坐骨神経痛の治療方法が知りたいです。

原因となる病気がある場合は病気の治療をし、症状が坐骨神経痛だけの場合は痛みを取り除く治療をします。

坐骨神経痛の治療方法には保存療法手術療法の2つがありますが、基本的には保存療法が行われます。保存療法では薬物療法理学療法が主な治療方法です。薬物療法では下記のような薬が用いられます。

非ステロイド性消炎鎮痛薬:一般的な痛み止め

神経障害性疼痛治療薬:発作的な鋭い痛み(伝激痛)への対処

筋緊張弛緩剤:筋肉の緊張を和らげる

血管拡張薬:血流改善で症状を和らげる

理学療法では下記のような治療を行います。

運動療法:ストレッチで筋肉の緊張をほぐして血流を改善

温熱療法:温めることで血管を広げ痛みの原因物質を除去

電撃刺激療法:低周波の電気刺激で神経の働きを抑制

痛みや痺れが酷い場合は手術することもありますか?

主な症状が坐骨神経痛だけの場合は手術が行われることはほとんどありません。2~3ヶ月の保存療法で改善がみられない場合膀胱・直腸に障害がみられる場合は手術をすることもあります。

坐骨神経痛を根本的に改善するためには骨を削るなどの手術が必要です。坐骨神経痛によって仕事ができないなど、生活に影響が出ている場合は医師に相談してみましょう。

坐骨神経痛の予防と日常生活の注意点

原因を取り除けば坐骨神経痛も治りますか?

軽症の場合は自然に治癒することもありますが、骨の変形やヘルニア等の原因がある場合は完全に治ることはありません。

適切な治療を行うことで痛みは1~2週間程度で治まります。

薬物療法・理学療法を行った場合の治療期間は平均3ヶ月程度です。

坐骨神経痛の予防方法があれば教えてください。

筋肉の衰えも坐骨神経痛の原因となります。筋肉量は20代がピークで後は減少していき、とくに衰えが早いのが下肢の筋肉です。

軽症の坐骨神経痛はお尻の筋肉の衰えが原因となる場合があり、お尻の筋肉には下記の役割があります。

坐骨神経の保護

坐骨神経につながる血管の保護

坐骨神経の血流の維持

また、腰の負担を和らげることも大切です。日常生活で中腰や前かがみになる姿勢をとらないなど動作に気をつけるだけでも痛み・しびれの緩和につながります。

治療中や治療後に気をつけることはありますか?

坐骨神経痛を改善するためには腰の負担を軽減することが大切です。原因となる疾患にもよりますが、軽度の場合は日常生活で下記の点に注意しましょう。

長時間同じ姿勢をとらない

重いものを持たない

激しい運動をしない

腰周りの筋肉をつける

肥満の場合は減量する

最後に、読者へメッセージがあればお願いします。

坐骨神経痛という病気は、いわゆる腰付近に存在している坐骨神経に沿ってお尻辺りの臀部から下肢のうしろ面などにかけて電撃のように引き起こされる痛みを呈する状態です。

一般的に、坐骨神経は腰の辺りから足先までに伸びている神経束であり、この坐骨神経が何かしらの原因によって物理的に刺激されると下半身に痛みやしびれ症状が引き起こされます。

坐骨神経痛による代表的な症状としては、お尻や脚の後面にかけて電撃のような痛みやしびれ感が生じると考えられています。

腰椎椎間板ヘルニアが原因の坐骨神経痛では局所的な疼痛症状を訴えることが多い一方で、腰部脊柱管狭窄症が原因のケースでは間歇性跛行という症状を生じることが往々にして認められます。

坐骨神経痛に対する治療策はさまざまであり、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症が原因となるケースでは、まずは患部安静や固定、薬物療法、理学療法などを中心とした保存療法が勧められます。

編集部まとめ

坐骨神経痛は下肢に痛みやしびれを感じる症状で、人によっては動けないほど強い痛みを感じます。

原因となる病気はさまざまなものがありますが、腰部脊柱管狭窄症と腰椎椎間板ヘルニアが代表的です。

重いものを持たない、長時間同じ姿勢を取らないなど日常生活で腰に負担をかけないように注意しましょう。

また、痛みを放置すると歩行困難や排せつ障害など重篤な症状を引き起こす可能性があるため、自己判断はせず早めに整形外科を受診することをおすすめします。

参考文献

日本薬師堂

疼痛.jp

日本薬師堂

野中腰痛クリニック

恩賜財団済生会

YO-TSU MEDIA

つかはらペインクリニック

疼痛.jp

お医者さんオンライン

総合南東北病院