「うっかり上書き」を救出、アウトプットも進化した「ポメラ」はメモツールとしても復活なるか?
ポメラ最新モデル「DM250」(直販価格60,280円)。外観はDM200とほぼ変わりません
キングジムから、パカッと開いてすぐにタイピングできるデジタルメモ、「ポメラ」の最新モデル「DM250」が発表されました。発売は7月29日。
前モデルにあたる「DM200」が発売されたのが2016年10月なので、キーボードを折りたたまないストレートタイプでは、実に6年ぶり。2018年6月に発売された、キーボードが3つ折りの「DM30」から数えても、4年ぶりの新製品になります。「DM200」も「DM30」もすでに製造終了となっているため、待ち望んでいたユーザーも多いのではないでしょうか。
フットプリントは約幅263×奥行き120mm。厚さは18mmで重さ約620gと、一般的なPCに比べて携帯性に優れる点も人気の秘密です
○外観そのまま、書きやすさや充電周りを強化
「ポメラ」は文章を書くことに特化したデバイスで、開くとすぐに使えてバッテリーの持ちも良い機動力の高さと、コンパクトながらしっかりしたストロークと余裕のキーピッチを備えた、打ちやすいキーボードが特徴です。
日本語入力には「ATOK for pomera[Professional]」を採用。前モデルからはWi-Fiにも対応し、作成した文章をメール等に書き出せるようにもなっています。
新製品の「DM250」ではこれらの機能を引き継ぎつつ、文章の書きやすさやアウトプットのしやすさが大きく強化されました。
外観は一見しただけでは違いがわからないくらい、形も大きさも「DM200」とほぼ同じですが、色は黒ではなくダークグレーを採用。ディスプレイは7.0インチのTFT液晶で、解像度はWSVGA(1,024×600ドット)と変わっていませんが、充電およびPC接続用のコネクタはmicro USBからUSB type-Cに変更されました。ユーザーから要望があったという、充電状況が確認できるLEDランプも搭載されています。
電源ボタンの配置が左に変更されているほか、キータッチも「DM200」に比べて少しソフトになった印象。タイピングのしやすさは相変わらず抜群です。発表会では静音化されたという説明もありました
SDカードスロットは据え置き。SDカード経由、またはUSB type-CケーブルでPCとつないで、ファイルをアプトプットすることもできます
ローバッテリー時は赤、充電中はオレンジ、満充電時は緑から消灯と、LEDの色で充電状況が確認できるようになりました
○スマホへのアウトプットが簡潔&素早くなった!
連続使用時のバッテリー駆動時間が前モデルから6時間も延びていたり、逆に充電時間が1時間短くなっていたり……。1つのファイルに保存できる文字数が10万字から20万字へ2倍になるなど、進化のポイントは数多くあります。
中でも筆者が注目したのは、うっかり上書き保存してしまったときにも、遡って元に戻せる機能が追加された点と、スマホへのアウトプットがより簡単かつ素早くできるようになった点。特に前者は筆者を含め、過去に上書き保存で痛い目にあった経験のあるユーザーには本当に有り難い、これだけで買い換える価値のある機能だと思います。
従来の本体メモリーのほかに、「バックアップ」と「ゴミ箱」のメモリー領域が新たに追加され、バックアップから前回の保存を復元できるようになりました。削除したファイルもゴミ箱から復活できます
アウトプットの方法も大きく変わっています。Wi-Fiに接続してメールで送信(アップロード)できるほか、スマートフォンとWi-Fiダイレクトで接続して、専用アプリ「pomera Link」からポメラの本体メモリーを参照できるようになりました。
カメラとスマホをつなぎ、スマホからカメラ内の写真データを参照するのと同じような感覚。専用アプリはiPhoneだけでなく、Androidスマートフォン向けにも提供されます。
pomera Linkと接続中のポメラ
スマホのWi-Fi設定でポメラにつなぐひと手間はあるものの、専用アプリを使った接続は、従来のアウトプット方法に比べてスピーディーです
ファイルをスマホにコピーして内容を編集し、ポメラに戻すのも簡単。スマホのシェア機能を使ってSNSやメールで送ることもできます
書くことに集中できるというメリットの一方で、書き上がった文章がアウトプットしづらいのは、ポメラのデメリットだと筆者は思ってきました。それがより簡単に、しかもスマートフォンの機種を問わずにできるようになったのは本当にうれしい限り。
ほかにも縦書きのシナリオモードが追加されたり、「ATOK for pomera[Professional]」の予測変換が賢くなって、うろ覚えの言葉でも正しく変換し直してくれるようになっています。
シナリオモードは、シナリオ作家さんや構成作家さんにうれしいモード。一方で、もうひと声大きなディスプレイが欲しくなるモードでもあります
○文字数やバッテリー残量表示も。利用者の声を反映
このほか、かゆいところに手が届くアップデートとして、画面下に文字数とバッテリー残量が常時表示されるようになりました。常に文字数を気にしながら文章を書いているライターにとっては大変有り難いアップデートです。前述の充電中のLEDランプもそうですが、こうしたアップデートのもとになっているのはすべて、多く寄せられるユーザーからの声だと言います。
初代ポメラ「DM10」の企画開発を担当した、キングジム 執行役員 開発副本部長の立石幸士さんによれば、ポメラは当初、ビジネスマン向けのメモツールとして企画されました。
しかし実際に製品を支持してきたのは、筆者のようなライターや作家、論文を書く研究者など、文章を書くことを仕事にするユーザーだと言います。そうしたターゲットに向けて、「文章を書くことに特化することをぶれずに続けてきたおかげで、発売から12年を超えるロングセラーになれた」と立石さんは分析します。
キングジム 執行役員 開発副本部長の立石幸士さん
○コロナ禍のメモツールとしても見直されるのでは?
コロナ禍を経て働き方が変わっても、「文章を書く人に寄りそっていくのは変わらない」とのこと。その姿勢はたとえば、付属のキートップシールと設定によって、US配列だけでなく親指シフト入力を複数パターンサポートするといった入力へのこだわりにも現れています。
一方で、最近はPCがビデオ会議に占有されることが多くなっていて、タブレットや外付けディスプレイなど、サブデバイスへのニーズが高まっているようにも感じます。今後は文章を書く仕事の人だけでなく、ビデオ会議時のメモツールとしても、改めてポメラが見直されるのではないかと筆者は予測しますが、どうでしょうか?
直販ではホワイトカラーの「ポメラ」DM250も、250台限定で販売します
著者 : 太田百合子 おおたゆりこ テックライター、エディター。インターネット黎明期よりWebディレクションやインターネット関連のフリーペーパー、情報誌の立ち上げに携わる。以降パソコン、携帯電話、スマートフォンからウェアラブルデバイス、IoT機器まで、身近なデジタルガジェットと、それら通じて利用できる様々なサービス、アプリケーション、および関連ビジネスを中心に取材・執筆活動を続けている。 この著者の記事一覧はこちら
キングジムから、パカッと開いてすぐにタイピングできるデジタルメモ、「ポメラ」の最新モデル「DM250」が発表されました。発売は7月29日。
前モデルにあたる「DM200」が発売されたのが2016年10月なので、キーボードを折りたたまないストレートタイプでは、実に6年ぶり。2018年6月に発売された、キーボードが3つ折りの「DM30」から数えても、4年ぶりの新製品になります。「DM200」も「DM30」もすでに製造終了となっているため、待ち望んでいたユーザーも多いのではないでしょうか。
○外観そのまま、書きやすさや充電周りを強化
「ポメラ」は文章を書くことに特化したデバイスで、開くとすぐに使えてバッテリーの持ちも良い機動力の高さと、コンパクトながらしっかりしたストロークと余裕のキーピッチを備えた、打ちやすいキーボードが特徴です。
日本語入力には「ATOK for pomera[Professional]」を採用。前モデルからはWi-Fiにも対応し、作成した文章をメール等に書き出せるようにもなっています。
新製品の「DM250」ではこれらの機能を引き継ぎつつ、文章の書きやすさやアウトプットのしやすさが大きく強化されました。
外観は一見しただけでは違いがわからないくらい、形も大きさも「DM200」とほぼ同じですが、色は黒ではなくダークグレーを採用。ディスプレイは7.0インチのTFT液晶で、解像度はWSVGA(1,024×600ドット)と変わっていませんが、充電およびPC接続用のコネクタはmicro USBからUSB type-Cに変更されました。ユーザーから要望があったという、充電状況が確認できるLEDランプも搭載されています。
電源ボタンの配置が左に変更されているほか、キータッチも「DM200」に比べて少しソフトになった印象。タイピングのしやすさは相変わらず抜群です。発表会では静音化されたという説明もありました
SDカードスロットは据え置き。SDカード経由、またはUSB type-CケーブルでPCとつないで、ファイルをアプトプットすることもできます
ローバッテリー時は赤、充電中はオレンジ、満充電時は緑から消灯と、LEDの色で充電状況が確認できるようになりました
○スマホへのアウトプットが簡潔&素早くなった!
連続使用時のバッテリー駆動時間が前モデルから6時間も延びていたり、逆に充電時間が1時間短くなっていたり……。1つのファイルに保存できる文字数が10万字から20万字へ2倍になるなど、進化のポイントは数多くあります。
中でも筆者が注目したのは、うっかり上書き保存してしまったときにも、遡って元に戻せる機能が追加された点と、スマホへのアウトプットがより簡単かつ素早くできるようになった点。特に前者は筆者を含め、過去に上書き保存で痛い目にあった経験のあるユーザーには本当に有り難い、これだけで買い換える価値のある機能だと思います。
従来の本体メモリーのほかに、「バックアップ」と「ゴミ箱」のメモリー領域が新たに追加され、バックアップから前回の保存を復元できるようになりました。削除したファイルもゴミ箱から復活できます
アウトプットの方法も大きく変わっています。Wi-Fiに接続してメールで送信(アップロード)できるほか、スマートフォンとWi-Fiダイレクトで接続して、専用アプリ「pomera Link」からポメラの本体メモリーを参照できるようになりました。
カメラとスマホをつなぎ、スマホからカメラ内の写真データを参照するのと同じような感覚。専用アプリはiPhoneだけでなく、Androidスマートフォン向けにも提供されます。
pomera Linkと接続中のポメラ
スマホのWi-Fi設定でポメラにつなぐひと手間はあるものの、専用アプリを使った接続は、従来のアウトプット方法に比べてスピーディーです
ファイルをスマホにコピーして内容を編集し、ポメラに戻すのも簡単。スマホのシェア機能を使ってSNSやメールで送ることもできます
書くことに集中できるというメリットの一方で、書き上がった文章がアウトプットしづらいのは、ポメラのデメリットだと筆者は思ってきました。それがより簡単に、しかもスマートフォンの機種を問わずにできるようになったのは本当にうれしい限り。
ほかにも縦書きのシナリオモードが追加されたり、「ATOK for pomera[Professional]」の予測変換が賢くなって、うろ覚えの言葉でも正しく変換し直してくれるようになっています。
シナリオモードは、シナリオ作家さんや構成作家さんにうれしいモード。一方で、もうひと声大きなディスプレイが欲しくなるモードでもあります
○文字数やバッテリー残量表示も。利用者の声を反映
このほか、かゆいところに手が届くアップデートとして、画面下に文字数とバッテリー残量が常時表示されるようになりました。常に文字数を気にしながら文章を書いているライターにとっては大変有り難いアップデートです。前述の充電中のLEDランプもそうですが、こうしたアップデートのもとになっているのはすべて、多く寄せられるユーザーからの声だと言います。
初代ポメラ「DM10」の企画開発を担当した、キングジム 執行役員 開発副本部長の立石幸士さんによれば、ポメラは当初、ビジネスマン向けのメモツールとして企画されました。
しかし実際に製品を支持してきたのは、筆者のようなライターや作家、論文を書く研究者など、文章を書くことを仕事にするユーザーだと言います。そうしたターゲットに向けて、「文章を書くことに特化することをぶれずに続けてきたおかげで、発売から12年を超えるロングセラーになれた」と立石さんは分析します。
キングジム 執行役員 開発副本部長の立石幸士さん
○コロナ禍のメモツールとしても見直されるのでは?
コロナ禍を経て働き方が変わっても、「文章を書く人に寄りそっていくのは変わらない」とのこと。その姿勢はたとえば、付属のキートップシールと設定によって、US配列だけでなく親指シフト入力を複数パターンサポートするといった入力へのこだわりにも現れています。
一方で、最近はPCがビデオ会議に占有されることが多くなっていて、タブレットや外付けディスプレイなど、サブデバイスへのニーズが高まっているようにも感じます。今後は文章を書く仕事の人だけでなく、ビデオ会議時のメモツールとしても、改めてポメラが見直されるのではないかと筆者は予測しますが、どうでしょうか?
直販ではホワイトカラーの「ポメラ」DM250も、250台限定で販売します
著者 : 太田百合子 おおたゆりこ テックライター、エディター。インターネット黎明期よりWebディレクションやインターネット関連のフリーペーパー、情報誌の立ち上げに携わる。以降パソコン、携帯電話、スマートフォンからウェアラブルデバイス、IoT機器まで、身近なデジタルガジェットと、それら通じて利用できる様々なサービス、アプリケーション、および関連ビジネスを中心に取材・執筆活動を続けている。 この著者の記事一覧はこちら