【最速レビュー】『ソー:ラブ&サンダー』二人のソーが愛おしい!シリーズ集大成に相応しい快作
マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)屈指の人気キャラクター・ソーが活躍する映画『ソー:ラブ&サンダー』(7月8日全国公開)。11年続くシリーズの集大成を飾る最新作は、「愛」を軸に展開するロマンチックなストーリーに、雷をまとった二人のソーが大暴れするバトルシーンを盛り込んだ、MCUフェーズ4屈指の快作となっている。
『アベンジャーズ/エンドゲーム』でアイアンマン、キャプテン・アメリカらと共に最強の敵サノスを撃破し、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーと新たな船出を飾ったソー。向かうところ敵なしのはずが、サノスとの戦いで大切な友やアスガルドの民を失い、いつしか戦いを避けるようになっていた。本作は『エンドゲーム』後のソーの内面を掘り下げながら、「本当に守るべき者は何か?」という問いへの答えを導き出していく。
MCUファンが最も期待するのは、マイティ・ソーとして帰ってきた、ソーの元恋人ジェーン・フォスターの活躍だろう。2作目『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』以降、活躍の場が与えられなかったジェーンは、その鬱憤を晴らすかのように、ソーの武器・ムジョルニアを駆使して敵を薙ぎ払う。マイティ・ソーを悠々と演じるナタリー・ポートマンは圧巻で、思わず見惚れてしまう筋肉はクリス・ヘムズワースにも引けを取らない。かつて恋人同士だった二人がヒーローとして共闘する姿は愛おしく、シリーズを11年間見守ってきたファンにとっても感慨深いはず。
本作のテーマである「愛」は、ソーとジェーンだけでなく、ソーが1作目から使い続けてきた武器ムジョルニアにも向けられる。3作目『マイティ・ソー バトルロイヤル』でヘラによって粉砕されたはずのムジョルニアは、マイティ・ソーことジェーンの武器として息を吹き返す。数多くの戦いを共にした元相棒だけあって、ソーも未練タラタラ。ムジョルニア愛を語る彼の姿は微笑ましく、現在の武器ストームブレイカーとの気まずい関係性にもクスリとさせられる。
満を持してMCUに参加する、二人のオスカー俳優も抜群の存在感だ。“神殺し”の異名を持つヴィラン、ゴア役のクリスチャン・ベイルの狂気じみた演技は、彼がバットマンとして『ダークナイト』で対峙したジョーカーを彷彿とさせる。さらに、全知全能の神ゼウスを演じるラッセル・クロウの振り切り具合も絶妙で、還暦目前にしてコメディアンという新境地を開拓したとも言える。
『マイティ・ソー』シリーズ総決算となる本作をまとめ上げたタイカ・ワイティティ監督の手腕も見事で、持ち前のコメディーセンスと観客に訴えかけるエモーショナルな演出は本作でも輝きを放つ。ロック調な新コスチューム、ビビッドな色使い、ガンズ・アンド・ローゼズの魅力的な楽曲などで唯一無二の世界観を確立しており、まさにタイカ監督の真骨頂とも言うべき作品だ。『スター・ウォーズ』にも挑戦するタイカ監督が、今後もソーの物語を紡いでくれることを期待したい。(編集部・倉本拓弥)