1992年に発売され、カセットテープに代わる録音媒体として、一時代を築いた「MD(ミニディスク)」。その使い勝手の良さから平成の時代には重宝していた、なんて人も少なくないだろう。

時は流れ、iPodをはじめとするデジタルオーディオプレーヤーやスマートフォンの普及とともにMDは衰退し、2013年3月にはソニーがMD録再機の生産を終了。さらに、2021年12月に発売された「三省堂 国語辞典」からMDという言葉が消えた。

完全に過去の遺産となってしまった――はずのMDが、今も現役で宣伝されている場所があるのを皆さんはご存じだろうか。

こちらは2022年5月9日にツイッターユーザーのUC(@watertowerUC)さんが投稿した、長野県長野市にある長野電鉄長野線の善光寺下駅で撮影したもの。

映っているのは、藤井フミヤさんが出演するマクセルのMDの広告だ。藤井さんは1995年4月にリリースされたシングル「タイムマシーン」が起用されたマクセルのMDのCMに出演しており、近未来的なデザインのヘッドホンをつけた藤井さんの写真に見覚えがある人もいるのではないだろうか。

MDというだけで懐かしさを感じてしまう写真なのだが......。実はこれ、UCさんが昔の写真を引っ張り出してツイッターに投稿したわけではない。なんと、「2022年5月4日」に撮影された写真なのだ!

四半世紀の時を越え、なぜ今も?

UCさんの写真はツイッター上では大きな反響を呼び、

「小学校の通学駅だわ このポスターまだあんのかよ...」
「異世界を感じる」

などのコメントが寄せられていた。

いったいなぜ、MDの広告が令和4年の今も掲出され続けているのだろうか。

5月20日、Jタウンネット記者の取材に応じた長野電鉄道事業部によると、今も広告が出続けている理由は、

「あいにく、かなり以前のため掲出した当時を知る者が社内におらず、また記録も残っていないことから、詳細について、お伝えすることができません」

とのこと。また、いつ掲出したのかも今となってはわからないそうだ。

四半世紀ほども前のものと思われるMDの広告はきっと、偶然が偶然を呼んで令和の世に生き残り続けているのだろう。

なお、長野電鉄道事業部にポスターは今後どうなるのか尋ねると、「今後の予定については未定です」と答えた。