『天下一品』マニアが教える“こってりスープ”を極限まで楽しみ尽くす最強の注文方法とは?
食楽web
誰にでも、突然無性に食べたくなる味というものがあると思いますが、筆者にとっては『天下一品』(通称:天一)の「こってり」がそれに当たります。今さら説明不要かもしれませんが、天一の創業者・木村勉氏が昭和46年に屋台を引き始め、3年9ヶ月かけて開発したという伝説のラーメンです。
その「こってり」が爆発的な人気となり、京都の総本店をはじめ全国津々浦々、ハワイにまで支店がオープン。今回、調べてみてわかったのですが、現在、その数は約220軒もあるようです。
ただ、筆者は支店の高円寺店でしか食べたことがありません。というのもかなり昔、天一に週2回のペースで通う天一好きの友人に初めて連れて行かれたのが高円寺店で、しかも友人によれば、都内には無数の天一の支店があるものの、ほとんどがフランチャイズ店で、高円寺は数少ない直営店だと教えてくれたからです。
J R高円寺駅から徒歩3分の場所にある『天下一品 高円寺店』。都内の直営店は、ここと神楽坂店の2軒
高円寺店で初めて「こってり」を食べた時のことは今でも鮮明に覚えています。まるでカレーかカルボナーラのソースのようにどろりとしていて、それが麺に絡みつくと、箸を持つ手さえ重たくなるほど。味は濃厚でコク深く、しかもクドくない。「これはスゴい!」と感動したものです。
さて、最近、その友人と久しぶりに電話で話していたら、「天一のこってりスープを最後まで一滴も残さず楽しみ尽くす方法を見つけた」と言い出しました。けっこう長く天一に行っていなかったし、その方法とやらも気になったので、後日、高円寺の天一に一緒に行ってランチを食べることになりました。
「餃子定食」を使ってこってりスープを味わい尽くす
いつ食べても最高に旨い至極のこってりスープ
さっそく昼時の天一に入店すると、ほぼ満席状態。相変わらず大人気です。さっそくメニューを広げます。筆者がいつも頼むのは「こってり」ですが、鶏の唐揚げや豚キムチ、ホルモン野菜炒め、チャーハンなどがラーメンとセットになった定食メニューも豊富。特に天一の唐揚げは、専門店顔負けの美味しさです。
さっそく友人にこってりスープを楽しみ尽くす方法を聞いてみると、「ギョウザ定食(ラーメン・ギョウザ6個・ごはん)を頼み、ラーメンはこってり、スープを増量、あと“赤ん粉(あかんこな)”2辛を別皿でもらう」と教えてくれました。
『天下一品 高円寺店』のメニュー[食楽web]
ちなみにこってりのスープを増量すると100ccで100円、そして「赤ん粉」というのは、3種類の唐辛子(ハバネロ種、天鷹種、韓国種)と山椒、黒胡椒をブレンドした天一のオリジナルスパイス。1~3辛まであり、2辛は100円です。
なかなか面白そうなので、友人と同じものをオーダーしてみることに。
「ギョウザ定食」(1050円)は、ラーメンがチョイスでき、ギョウザ6個とごはんがセット。写真は「こってり」のスープ増量100円と、赤ん粉2辛100円で、合計1250円
友人に「ギョウザ定食」の食べ方を聞いてみると、こうでした。
1.まずは普通に「こってり」を楽しむ
2.麺がなくなったら丼にギョウザを入れて“こってりスープ餃子”にする。この時、お好みで卓上の酢や、ラー油、胡椒などで味を調整。
3.最後はスープの中にライスを入れてリゾットに。途中から赤ん粉を入れて辛いリゾットに味変する
なるほど、確かにこってりスープを極限まで楽しみ尽くせそうです。さっそく実践してみることに。
もちろん、普通に食べても最高に美味
まずは、こってりを普通にいただきます。久しぶりに食べると、やっぱり安定の美味しさです。何度食べてもこのコクとまろやかさにシビれます。今や日本中にこってり系のラーメンがあり、筆者も色々食べてきましたが、天一のこってりスープこそがこってりの極地であり、美味しさの原点なのだ…と感慨深く遠い目をしてしまうのです。
さて、麺を食べながら、おもむろに餃子をスープの中に落としてみました。そして卓上のお酢をちょっと加えて食べてみると、おおっ、これは確かに美味しい!
こってりスープに餃子を絡めてみた
“スープ餃子”というよりも、餃子に濃厚なタレやソースを絡めて食べているような感覚です。餃子餡のニラやニンニクなどの風味とこってりスープの相性が抜群で、餃子の皮を破り、中にたっぷりスープを染み込ませたくなります。
美味しくて6個の餃子をあっという間に完食。麺もなくなりました。そして、いよいよ〆です。ここで最初にスープ増量にした効果が出てきます。そう、この時点でもスープがたっぷり残っているのです。
硬めに炊れたご飯は、こってりスープをぐいぐい吸い込んでいきます
ご飯を投入してかき混ぜると、ご飯がスープをぐんぐんと吸っていき、超濃厚な中華リゾットのような雰囲気に。ご想像どおり、マズいはずがない。というか悪魔的な美味しさです。
しばらくリゾットを楽しんでいたら、友人が「そろそろ赤ん粉を入れよう」と言い出しました。「ここまではこってりスープの穏やかな一面を見てきたけど、この粉のひと振りでこってりは全然違う表情を見せ始めるよ」と、ミスター味っ子か山岡士郎のようなことをつぶやいています。
残ったスープにご飯を入れて赤ん粉をプラス
そこで赤ん粉を入れて、よくかき混ぜて食べてみると…。思わず「!」となりました。文字にすると「辛い」、「旨い」という単純な言葉になってしまいますが、例えるなら、香辛料を巧みに使ったスパイスカレーを食べているような感じなんです。ターメリックやクミンといったカレー独特のスパイスは入っていないので、カレー味ではないのですが、唐辛子や山椒、黒胡椒の香りと辛さで、非常にエキゾチックな味わいになるのです。
というわけで、「こってり」のスープは、餃子の極上のタレになったり、スパイシーなリゾットになったり、ただのラーメンスープにとどまらないことが判明。改めて「こってり」の偉大さに感激しました。何より、「赤ん粉」とこってりスープの相性は抜群。『天下一品』に行ったらぜひお試しを。美味しいですよ。
(撮影・文◎土原亜子)