ヒットしなかったけど実は良い? 今なら評価されたかもしれない車5選

写真拡大 (全7枚)

絶版になってから再評価されたクルマを振り返る

 いくら優れたクルマでも、ユーザーの嗜好や流行から外れていたり、反対にあまりにも斬新過ぎるデザインやコンセプトが受け入れられなかったモデルがあります。

 各メーカーは5年先、10年先の未来を見越して新型車の開発をおこなっていますが、必ずしもトレンドやニーズとぴったりと合うわけではないところが、開発の難しさではないでしょうか。

気合の入り方はハンパなかったものの空回りしたクルマたち

【画像】いま見ると良いぞ! 当時は残念な扱いだった車を見る(24枚)

 一方で、そうしたクルマのなかには、後に再評価され、絶版になってから中古車が人気となったモデルも存在。そこで、新車当時はヒットしなかったものの、振り返ると実は良いクルマだったと評されたモデルを、5車種ピックアップして紹介します。

●トヨタ「プログレ」

上質な内外装で小さな高級車を実現したものの、年配の人にしか支持されなかった「プログレ」

 1998年に登場したトヨタ「プログレ」は、全幅を1700mmに収めながらも2代目「アリスト」や10代目「クラウン」などとプラットフォームを共有するFRセダンです。

 メーカー自らも「小さな高級車」を標榜したモデルで、小型のボディに2.5リッターと3リッター直列6気筒DOHCのゆとりあるパワーのエンジンを搭載。

 ボクシーなフォルムで比較的オーソドックスなデザインの外観は、全長4500mmと全長はクラウンより300mmほど短いもののホイールベースは2780mmと長く、余裕のある室内スペースを持ち、静粛性や乗り心地もクラウンなどと遜色のないレベルを実現しました。

 また、内装にはウォールナットの本木目パネルや本革シート、高級オーディオなど高級車にふさわしい素材や装備が採用され、ほかにもカーテンエアバッグや、カーナビゲーションが持つ情報と走行中のクルマからの情報を基に車両制御をおこなう「NAVI・AI-SHIFT」など、当時の日本初搭載の最新の技術も盛り込まれています。

 日本の道路事情にもマッチしたプレミアムコンパクトセダンのプログレでしたが、落ち着きや品の良さを追求した内外装は「退屈で地味」と評価され、年配者にしか受け入れられず、2007年に生産を終了。

 9年のロングセラーだったものの、販売台数は低空飛行が続いたため後継車はなく、一代限りで消滅しました。

 アプローチは異なるものの、コンパクトなラグジュアリーセダンであるレクサス「IS」が成功したことを考えると、プログレのコンセプト自体は間違ってはいなかったといえるのではないでしょうか。

●マツダ「ボンゴフレンディ」

コンパクトなボディと車中泊に適した装備ながら、出るのが早すぎた「ボンゴフレンディ」

 1966年にマツダは初代「ボンゴ」を発売。キャブオーバースタイルの外観に4輪独立懸架を採用した小型トラック、商用バン、乗用ワゴンの「コーチ」をラインナップし、当時の商用バンではベストセラーとなったことでワンボックスカーの代名詞になりました。

 その後ボンゴは代を重ね、1995年には「ボンゴワゴン」の後継車として、ボンネットがあるセミキャブオーバースタイルのミニバン「ボンゴフレンディ」を発売。

 最大の特徴は、キャンピングカーのポップアップ式テントと同様に、ルーフ部分を電動で持ち上げることで展開される「オートフリートップ」搭載車をラインナップしていたことです。

 1列目と2列目シート間の天井にあるアクセスホールから2階にあたるスペースにアクセスでき、その広さは大人2人が就寝するのにも十分な面積で、アウトドア派のユーザーからは高い支持が得られました。

 しかし、発売時には話題になったものの販売は低迷。見た目はセミキャブオーバースタイルのミニバンながら、エンジンを前席下に搭載する旧来のFRだったため床面が高く、ホンダ「オデッセイ」などFFのライバルよりも室内が狭くなってしまったのが人気とならなかった要因といわれています。

 2006年に生産を終了したボンゴフレンディは、まさに現在の車中泊ブームを先取りしたクルマで、しかもキャンピングカーほど高価ではなく、今ならヒットしても不思議ではないコンセプトのモデルでした。

●ホンダ「クロスロード」

3列シートSUVという、今ならヒットしていたかもしれない2代目「クロスロード」

 1993年にホンダは、提携関係にあったローバーグループからランドローバー「ディスカバリー」のOEM供給を受け、3.9リッターV型8気筒エンジンを搭載する、大柄で本格的なクロスカントリー4WD車である初代「クロスロード」の販売を開始。

 いすゞから供給されていた「ジャズ」や「ホライゾン」とともに、ホンダのRV車ラインナップを形成していました。

 しかし、初代クロスロードはRVブームの最中でも人気は低迷し、ほどなく販売終了となりますが、しばらく時間があいた2007年にはクロスオーバーSUVである2代目クロスロードが登場。

 2代目「ストリーム」をベースに全長4285mm×全幅1755mm×全高1670mmのショート&ワイドのボクシーなボディで、優れた居住性を誇った3列シート7人乗りのモデルに仕立てられていました。

 搭載されたエンジンはストリームと同じ最高出力140馬力の1.8リッター直列4気筒i-VTECと、150馬力の2リッターが設定され、駆動方式はFFと4WDを設定。

 四角い車体は着座位置からフロントノーズ先端の見切りも良く、短い全長もあって日常の使い勝手の良いクルマでしたが、人気とはならず、2010年には販売終了と非常に短命でした。

 その後、SUV人気の高まりから再評価され、中古車が比較的安価な価格帯なことから人気となり、まさに出るのが早すぎたクルマの代表的存在です。

コンセプトがニッチすぎた2台のモデルとは!?

●ホンダ「CR-Z」

スポーツハイブリッドという他には無いコンセプトながらニーズも少なかった「CR-Z」

 2010年に発売されたハイブリッド専用車であるホンダ「CR-Z」は、全長4080mm×全幅1740mm×全高1395mmとコンパクトな3ドアハッチバックで、環境性能が優先されるハイブリッド車であってもMT仕様が選べ、ドライビングプレジャーを強調したモデルという、これまでにないコンセプトで開発されました。

 パワーユニットは114馬力の1.5リッター直列4気筒エンジンに、14馬力のアシスト用モーターひとつを組み合わせたハイブリッドシステムを搭載。

 駆動方式はFFの2WDみでトランスミッションはCVTまたは6速MTが設定され、10・15モード燃費はCVT車が25km/L、MT車が22.5km/Lを達成しました。

 2012年のマイナーチェンジではエンジンを120馬力(MT車)、モーターを20馬力と出力の向上がおこなわれ、ハンドルに装備されたボタンを押してアクセルを少し踏み足すことで、力強い加速力が瞬時に得られる「PLUS SPORTシステム」も搭載されました。

 CR-Zは実際の評価が高かったものの、往年のライトウエイトスポーツカー「CR-X」の再来と期待されたほどの運動性能は得られず、発売直後の人気はすぐに陰りを迎え、2016年に生産を終了しました。

 実用的ながらスポーティなハイブリッド車というコンセプトは斬新でしたが、ハイブリッド=エコカーのイメージが強く、ニーズは限定的だったということでしょう。

●スバル「R1」

スタイリッシュかつ上質な軽乗用車を目指すもニーズが無かった「R1」

 2005年にデビューしたスバル「R1」は、従来の軽自動車には無い個性的なスペシャリティカーを目指したモデルです。

 ボディは軽セダンのR2をベースにした3ドアハッチバッククーペで、リアには緊急用のオケイジョナルシートを持つ2+2の4名乗車ですが、あくまでも前席2名乗車をメインに設計されていました。

 スペシャリティカー的な室内空間の演出や、コンパクトなサイズを生かしたユニークなスタイリング表現のサイドビューは、画期的な造形と高く評価され、フロントビューも全体のイメージを壊す事なく個性とアイデンティティを主張するなど、新しい軽自動車のカテゴリーとされていました。

 エンジンは最高出力54馬力を発揮する660cc直列4気筒自然吸気を搭載し、さらに発売同年には64馬力の直列4気筒DOHCスーパーチャージャーを追加。トランスミッションは全車CVTのみです。

 足まわりは4輪独立懸架を採用し、上質なドライブフィーリングを実現しました。

 しかし、走りの質を追求した軽スペシャリティカーというコンセプトはユーザーには響かず、R1は2010年に一代限りでR2とともに生産を終了。

 すでに「大は小を兼ねる」軽トールワゴン、ハイトワゴンが主流の市場では、たとえR1が優れていたとしても、なすすべはなかったといえます。

※ ※ ※

 新車当時は大ヒットしなくても、振り返ってみると再評価されるべきクルマはほかにも数多く存在します。そうしたモデルの多くは中古車が安価で、後に売ることを考えなければかなりお買い得だといえるでしょう。

 また、絶版車の魅力のひとつとして、いまでは見られなくなった個性的なデザインがあります。優れたデザインと評されるクルマは色褪せない魅力があるもので、そうしたモデルを発掘してみるのも楽しいでしょう。

 しかし日本では、初年度登録から13年を経過すると自動車税と重量税が上がることから、古いクルマの維持に対しては消極的です。

 せっかくユニークなクルマを見つけても、古ければ維持が困難になるという背景は、自動車文化という点で残念なことです。