伊豆で魚介以外の穴場グルメを満喫する、男ひとり旅

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伊豆半島といえば魚介を満喫の旅……は当たり前。「実はあのへん、刺身以外でも穴場スポットが多いんだよ」ってな情報を聞いて、こりゃ面白そうだとさっそく行ってきました。

片瀬白田の肉チャーハン、伊豆下田の鴨やき&地元天然塩でつくるラーメン、そして熱海の餃子&焼売と欲ばりにまわってきましたが、いやはやどれも……うまかった! 日本各地のローカルフードを愛するライター、白央篤司がレポートします。1泊2日のひとり旅にしばし、おつきあいのほどを。

東京駅

踊り子号に乗って東京駅から出発!

運転開始は1981年、特急踊り子号

朝9時ちょうど発のJR東京駅、特急踊り子号に乗ってまずは伊豆熱川駅を目指します。踊り子号、ネーミングがいいですよね。ノーベル文学賞受賞作家・川端康成の短編『伊豆の踊り子』からとられたもの。たしか、あの旅芸人たちは下田を目指していたはず。

スコーンと晴天、お天気に恵まれました

東京駅から2時間14分、伊豆熱川駅に到着。温泉地としても有名な熱川、ホームから湯けむりも見えていい風情。ちなみにあの「熱川バナナワニ園」も駅すぐそば。寄ればよかったかな。

か、カッコいい!

普通列車に乗り換えて隣駅「片瀬白田」を目指すんですが、やってきたのが「リゾート21」でした! 伊豆急2100系黒船電車、このルックスで全席自由の普通列車なんですよ。窓が大きくとられていて見晴らしがいいんだ。ああ、たったひと駅移動が残念でならず……(涙)。

約2分で片瀬白田駅に到着。ホームからの眺め、最高でした……! 線路を挟む、山と海。どこまでも海。水平線をしばし見つめて、「旅に出たなあ」と心でひとりごと。

中華 ふるさと

東伊豆のB級グルメとは?

駅から徒歩2分ほどの「中華 ふるさと」で、今回の1食目をいただきます。

なんでも東伊豆のB級グルメとして肉チャーハンなるものが有名なのだそうな。し、知らなかった……。

ご飯もののトップに「肉チャーハン」の文字が。税込900円、ともかくも頼んでみました。

おっ、一瞬肉野菜炒めに見えますが……

下がチャーハン、上が豚キャベツ炒めの2層構造になってるんですな。醤油とゴマ油が香る湯気に食欲をそそられます。

チャーハンは玉子入りで、あっさりとした味つけ。肉野菜もわりとサッパリしています。一緒に味わってちょうどよい満足感になるよう計算されてるなあ。ボリュームはしっかりあるけれど、食べ飽きずに完食。肉をうたうメニューはやたらパンチやインパクトを追ったものもありますが、「ふるさと」の肉チャーハンは実にバランスのいい一品でした。

お店は家族経営、坂田さんご一家です。真ん中が女将さんで、息子さんがおふたり。創業は1983年だそう。

「隣の伊豆稲取駅にあるお店で働いてまして、そこで肉チャーハンが名物だったんです。自分の店を持つときにお許しをいただいて、うちでもお出しすることになって」

以来、片瀬白田でも肉チャーハンが名物に。女将さん、とても気さくな方でした。あったかいお店だったなあ。

ごちそうさまです!

いし塚

伊豆半島の南・下田へ

創業は1979年だそうです

さて、せっかくの旅ですからチャーハンだけで昼は終わらせません。伊豆急行の普通列車に乗って片瀬白田駅から27分、伊豆急下田駅で降りて徒歩3分程度、お蕎麦屋さんの「いし塚」を目指しました。

ここの「鴨やき」(税込1,900円)が見事だよ、と友人から聞いてたのですが……評判にたがわぬ味わいで満足ッ。ああ、ひと口食べて笑顔になりましたよ。来たかいがあった。合鴨の肉質はあくまでも柔らかく、ふんわり焼き上げる加減の見事なこと。肉汁がなんとも豊かでした。

鴨の脂を存分に吸った焼きネギとくりゃ、もうどうにも止まらない。添えてあるのは、大根おろしに自家製七味がかけられたもの。これだけでもいい肴に。

そばつゆに使っている「かえし」を使用した甘めのタレがまたよかった。ほおばった私の顔、きっと大きく「むふふふふ」と書いてあったはず。

はい、ビールが進みました。グラスはうすはり。そして伊豆限定のサッポロ生ビール(税込680円)、ラベルに踊り子のイラストが。お通し的に出してくれる自家製の蕎麦みそも見事な出来で、思わず自分用のおみやげに買っちゃいましたよ。蕎麦は香り高く、サラッとしてて上品なんだ。

みずみずしい二八蕎麦も実に結構でしたねえ(せいろ、税込890円)。しなやかに弾むような食感で、細いけれど存在感は大。隣の人が食べていたとろろや天ぷらもうまそうだった……。

味だけでなく、気づかいのきめ細かい店員さんたちの接客もこころよくて。気持ちのよい時間が過ごせました。

また来ます。

下田大和館

眼下は海!眺めのよい宿へ

さて伊豆急下田駅に戻り、本日の宿「下田大和館」へ。駅からは車で5分程度、14:30〜17:00の間は宿専用の無料送迎バスが出ています。

多々戸浜(たたどはま)海水浴場が目の前、高台に位置する「下田大和館」はまさに眺望絶佳の宿。この写真、宿泊部屋からの眺めなんですよ。

いやー……テンション上がりました。歌舞伎の「楼門五三桐(さんもんごさんのきり)」の石川五右衛門じゃないけど、「絶景かな! 絶景かなッ!」と叫びたくなっちゃいましたね。大浴場からもこのオーシャンビューが一望できます。

大浴場(写真提供:下田大和館)

風呂を楽しみ、部屋で休憩したのちに晩ごはん。近海で獲れたアジやメダイの刺身などをいただき、メインは炭火焼でした。サザエやホタテが焼ける「ジュウジュウ」という音がまたごちそうで。伊豆半島に来たら一食ぐらいはそりゃ魚介も食べたいよね。

「開運」や「臥龍梅(がりゅうばい)」など静岡の銘酒も用意されてましたが、個人的には(というか酒好きとしては)伊豆諸島の焼酎・島焼酎があるのがうれしく。

神津島で造られる麦焼酎の「盛若(税込 825円)」はまろやかでコクはしっかり、線の太い味わいがたまらんかったです。なんでも1853年、八丈島に流された薩摩藩の丹宗庄右衛門(たんそうしょうえもん)なる人物が焼酎造りを島の人々に伝えたんだそうですね。それが脈々と受け継がれ、現在に至るのだそう。

ふとここで思い出すのが、1854年ペリー提督の下田来航。うーむ、さすがにペリーさん島焼酎は味わってないかなあ。日本酒は飲んだだろうか。

などと夢想しつつ、ほろ酔いで就寝……。

さあ、2日目の始まりです。冬の下田、朝の海。まだほの暗いうちからサーフィンに興じる人がけっこういました。寒いのにすごいなあ、私も負けていられない。

一品香

天然塩を使ったラーメン

なんと朝9時からのオープン!

というわけで早めにチェックアウトを済ませ、今日の1軒目に向かいます。

宿の送迎バスで伊豆急下田駅まで出て、徒歩3分ほどの創作中華「一品香(いっぴんこう)」へ。下田の外浦でつくられる天然塩を使ったラーメンがおいしいと評判を聞きました。数あるメニューの中、目当ては……

こちら、「キンメ・エビのワンタン入り下田天然塩ラーメン」(税込 1,200円)。キンメダイは下田港が水揚げ量日本一ということもあり、下田名物のひとつなんですね。キンメ料理を看板にする店は数多くあれど、ワンタンとはめずらしい。

おお、期待どおりのプリプリ感と共に、キンメの身がしっかりと感じられます。鮮やかなエビの香りと、落ち着いた旨みをかもすキンメが良いコンビネーション。しかしまあ……贅沢なワンタンだ。

「魚屋を営む友人に頼んで、キンメの価格が手ごろなときにまとめて仕入れているんです」と、ご主人の佐藤慎一さん。スープのベースは干しエビに鶏ガラ、昆布、カツオ節などのミックスだそう。

おだやかな旨みに満ちるスープに華を添えるのが、たっぷりの黒バラ海苔。中細ストレートの麺とよくからんで、磯の香を楽しめます。

ああ、いい朝ラーメンだった……。ごちそうさまです。

中国菜室 壹番

熱海にて、点心の昼

さあ、旅も終盤。伊豆急下田駅から伊豆急行に乗って1時間45分、熱海駅で途中下車しました。目的地はこちら、「中国菜室 壹番(いちばん)」です。駅から徒歩7分ぐらいかな。

ここの餃子(税込 605円)が食べたくてね。
キャベツ多めで、小ぶりな餃子。あっさりしてるんですが……後を引くんですよ。さっぱりしつつも満足度が高い。焼き加減もお見事、2皿頼めばよかったとプチ後悔。

焼売(税込 660円)もおすすめ。
カニと椎茸入りの肉あんが実になめらかで、エレガントなうまさ。個性的なんだよなあ。

昼は予約不可、行列もめずらしくありません。行くときは時間に余裕をもってくださいね。

熱海はムードのある小道が多くて、散歩も楽しいですな。さて、また踊り子号に乗って帰るとしますか。熱海駅から東京駅まで約80分、ひと眠りにちょうどいい。

下田も熱海も、冬にもかかわらずあちこちでアロエの花が力強く咲いていました。調べてみたらなんと12月が開花シーズンなんですね! 

さらば、伊豆半島。また会う日まで。

東京駅

掲載情報は2020年2月26日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。