Google秋の新製品発表で浮かび上がる、Appleとの共通点と相違点(松村太郎)
米国時間の10月15日、Googleはハードウェア発表イベント「Made by Google」を開催しました。
今回の発表をざっくりまとめると、以下のとおり。
13.3インチディスプレイと第8世代Intel Core m3、8GBメモリを搭載し、価格が649ドルからと大幅値下げされたChromebookのラップトップ 「Pixelbook Go」最新となるカメラ強化とジェスチャー操作が未来を感じさせるフラッグシップスマートフォン「Pixel 4 / Pixel 4 XL」2020年春発売の完全ワイヤレスヘッドフォンとなった 「Pixel Buds」低音を2倍に強化しマイク性能も向上させた「Nest Mini」Googleアシスタント内蔵の「Point」を使ってメッシュWi-Fiが構築できるルータ 「Nest Wifi」超音波を用いて部屋やデバイスの近くに人がいるかを検出するカメラ不要の技術 「Nest Ultrasound Sensing」11月19日にゲームストリーミングサービス「Stadia」を開始これまでデバイスごとに追加しなければならなかったスマートホームのサブスクリプション「Nest Aware」を整理し、家全体で6ドル・12ドル(いずれも月額)のプランを用意
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GoogleによるAppleの追随


プレゼンテーション中、GoogleはAppleを追随するかのような場面をいくつもみせました。その1つは「プライバシーが中核にある」というメッセージに触れた点。

GoogleはPixel 3から、サーバ向けに物理的に搭載するセキュリティチップのモバイル版「Titan M」を搭載しており、Pixel 4にもこれが引き継がれる形となりました。またPixel 2から搭載されていた画像処理エンジンVisual Coreは、機械学習全般を扱うという意味も込められたことでNeural Coreへと名前を変え、デバイス上でユーザーデータの処理を行う方向へシフトしています。

これらの流れは、Googleが、Apple側へと向かおうとしていることの表れと言えるかもしれません。Appleは2018年のFacebookのユーザーデータ流出問題を強く批判しており、GAFAとして一括りにされることを嫌ってきました。

Googleが精度の高いウェブ広告主体のビジネスから抜け出すことはないでしょうが、その一方でデバイスビジネスではユーザーのプライバシーへの配慮を強めています。たとえば今回登場した超音波による人の検出技術は、部屋のデバイスに無闇にカメラを増やさない方法の模索から生まれた結果だと言えます。

このあたりはAppleと似たような立場と言えるモバイルプラットホーム企業として、プライバシー問題については同調していくことになるのではないか、と思いました。それにしても、カメラのハウジングやワイヤレスヘッドフォンの充電ケースまで、GoogleがAppleを追認する格好となりましたね。

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個人的ヒットはNest Wifi



今回はGoogle Home miniの新製品としてNest miniが登場しましたが、筆者が初代Google Homeが登場したときに思ったのは、「これがメッシュWi-Fiのアクセスポイントになればいいのに」ということでした。

その後3年前にGoogle Wifiが登場し、広い家でも快適なネットワークでカバーできる、拡張可能なWi-Fiネットワークを実現しました。しかしそのときにもやはり、「Googleアシスタントが使えればいいのに」と感じました。似たようなサイズのデバイスをわざわざ部屋に2つも置きたくないじゃないですか。

Nest Wifiは外部回線と接続するNest Wifiルータと、各部屋においてメッシュネットワークを構成するNest Wifi拡張ポイントに分かれています。このうちNest Wifi拡張ポイントの底部にはスピーカーとマイクが備わっており、Googleアシスタントに対応するようになりました。

これで、設置場所とコンセント1つで、その部屋に必要な機能を実現できるようになります。

AppleはオーディオスピーカーとしてHomePodをリリースしましたが、Wi-FiルータのAirPort(日本ではAirMac)、バックアップストレージ付きTime Capsuleからは撤退してしまいました。スマートホームはAppleにとっても重要なはずですが、現状AmazonやGoogleとスマートスピーカーで競合することを避けており、家の環境構築に寄与するWi-Fiルータを放棄するなど、むしろ後退してしまっている印象すらあります。

しかし実は、iOS 13世代ではセキュリティカメラをサポートして、iCloudの200GB以上の有料プランを用いてビデオ録画を行う仕組みを整えるなど、自社でデバイスを持たない代わりに環境は整える、という極めてプラットフォーマーらしい振る舞いをしています。

その点では、デバイスのポートフォリオを拡大させられるGoogleの方が、うまく市場を作れるのかもしれません。GoogleはNestを買収し、Google Homeと統合。今回はさらにスマートホーム向けサブスクリプションを登場させることで、新しいデバイスでの問題解決を実現しています。

まあ、Appleも時々ギャグのような製品を大真面目に出すこともありますから、今回の場合ならHomePodにメッシュWi-Fiルータを詰め込んだ「HomePod Air」あたりが出てきても驚かないようにしたいところです。

接点は、モノか、キャラクターか


シリコンバレーとして、テクノロジーが人類にとって害悪となってはならない――そんな意思を共にするGoogleとAppleですが、ハードウェアのアプローチは全く異なります。

Appleはハードウェアの販売がビジネスの主体で、各製品が最高の状態で利用できるようにするためにソフトウェアやサービスを一体的に開発しています。

一方のGoogleはソフトウェアやAI技術を最高の状態で利用できるハードウェアを揃えるという方向性。両者にはアプローチの違いが感じられます。最もよく現れているのがNestに関連する製品で、ハードウェアとしての発展にまだまだ期待できそうな雰囲気です。



面白いものが登場してくるGoogleですが、スマートホームに関しては少し異なるアイディアを垣間見ることもできます。

その一端が、Googleアシスタントの「キャラクター作り」です。この点において、Doodle(検索画面の日替わりロゴ)などを手掛けるブランディングチームが関与していることは、2018年のGoogle I/Oのセッションでも語られていました。

その理由は、最もパーソナルな場所である家の中、部屋に置かれる製品のインターフェイスは、人とGoogleとが、最も近く密に接する場になるからだ、と言います。

遊び心とは違いますが、ミニマルにあるべき姿だけを追いかけていても、息苦しくなるかもしれない。Googleの取り組みに共感が持てるポイントは、この辺りにあるのではないか、と思いました。