U-18侍終戦と日本野球の課題

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◆ 白球つれづれ2019〜第36回・国際試合の難しさ

 9月8日まで韓国で行われていたU-18野球W杯が閉幕した。悲願の世界一を目指した日本代表はスーパーラウンドに進出も、韓国、オーストラリアに連敗して5位。7年前の2012年(6位)以来、4大会ぶりに表彰台を逃した。

 敗因はいくつかに集約される。真っ先に挙げられるのは守備の破綻だろう。日本が戦った8試合のうち失策は9個。さらに記録に表れないエラーも加えれば2ケタ以上となる。特に象徴的だったのは韓国戦だ。

 2点リードの最終回に三ゴロでゲームセットかと思われたが、三塁手・石川昴弥(東邦高)が一塁に悪送球して同点。さらに延長タイブレークでも救援した林優樹(近江高)がバント処理を誤って逆転負けにつながった。

 メダルが絶望となったオーストラリア戦でも2回に石川の三ゴロ後逸が大量失点に直結している。では、この“守乱”はどうして生まれていったのだろうか? それは選手選考の段階まで遡らなければならない。

 今大会の日本チームの特徴は、投手陣を9人と厚めの陣容にして野手は11人。そのうち捕手2人を除いた9選手中、自チームでは遊撃手という選手を6人選び、外野手登録は2年生が2人。不動の一番打者として活躍した中堅の森啓斗も桐蔭学園では主将で遊撃手。野球センスがあり、強肩強打の遊撃手ならどこを守らせてもそこそこやってくれるはず、と選考スタッフや現場首脳陣は計算したのだろう。本番になると西純矢(創志学園高)や宮城大弥(興南高)らの投手が打撃力を買われて外野を守り、ピンチの場面でマウンドに向かう回数が増えていった。

 9失策中7個の失策を記録した内野守備に対して、横浜高校前監督の渡辺元智氏はスポーツニッポン紙上で、近年の甲子園では金属バットの使用で打球が速くなり、守備位置も深く守る傾向の中で(今大会は芝使用の内野もあり)慌ててミスにつながったと指摘したうえで「選考人数に限りがある中で野手はオールラウンダーに頼ることになってしまった。不慣れなポジションをこなす選手には気の毒だった」と指摘する。

◆ スモールベースボールの根幹と世界の流れ

 今回の日本チームの最大の武器は、佐々木朗希(大船渡高)と奥川恭伸(星稜高)の強力2枚エースを中心とした投手力だったことに間違いない。だが、佐々木が事前の対大学選抜との壮行試合で血マメを作り、奥川は甲子園大会の疲労の蓄積で共に出遅れたのは誤算だった。それでも奥川はカナダ戦に先発すると7回を1失点、18奪三振の大会新記録で存在感を見せつけた。しかし、韓国戦に先発した佐々木は、血マメを再発してわずか1イニングで降板、このあたりからチームはバタつき始めた。

 強力な投手陣を擁して競り勝つには、堅守が絶対条件。それなら選手選考段階から守備のスペシャリストを選ぶ手もあっただろう。

 国際大会のたびに日本野球は「スモールベースボール」に活路を見出してきた。パワーに勝る外国勢に対して緻密な野球で対抗、堅守はもちろん、バントや盗塁でかき回す戦術をとってきた。だが、今大会でも無死一塁の場面で次打者にバントを命じるケースが目立ったが、得点効率が上がったかとみればそうでもない。むしろ、球数制限が導入される今の国際大会では、バントを駆使した進塁策は相手に簡単に一死を与えるうえ、投手の投球数を減らしてしまう観点からも得策なのか?

 実際、上位に進出した台湾、米国、韓国チームは、同様のケースで積極策をとって集中打につなげるケースが多かった。日本も大会途中から2番打者に俊足強打の武岡龍世(八戸学院光星高)を起用していたが、左の快速選手なら強打に出ても併殺の確立は少なかったはずで、お家芸のスモールベースボールにも、今後再考の余地があるのではないだろうか。

 今春には、初めてU-18候補による代表合宿を行った。本番でもアシスタントコーチの増員や専門の分析担当を設け、整形外科医が同行するなど、新たな試みが取り入れられている。オールジャパンとして今回の結果を受けて、今後は日本高野連の技術・振興委員会で総括、検証をして来年2月の理事会を目途に新スタッフ等を決定すると言う。

 今回の苦い経験を生かすためにも、チーム編成の在り方、日本野球の進むべき道といった選手以外の本質に激論を戦わせてほしいものだ。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)