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まずは、あおられない運転をすること

text:Wataru Shimizudani(清水谷 渉)

最近、ニュースで何かと話題になっている「あおり運転」。まず大事なことは、あおられない運転をすることだと筆者は考える。

以下に述べることを、まず読んでいただきたい。「当たり前のことをいうな」と思わずに。当たり前のことであるにもかかわらず、実はできていないひとが多い。

相手をムカッとさせないことが肝要。

法定速度を守ることは大事だが、まわりのクルマの動きを見ながら、流れに乗った走りを心がけよう。

また、高速道路の右側車線は「追い越し車線」だから、いつまでも走り続けるのはやめよう。追い越しを終えたら、すみやかに左側の走行車線に戻ろう。

一般道でも高速道路でも、走行中は前方を注視するのも大事だが、ミラーで後方の確認も怠りなく。追い越し車線を走行中に後続車が迫ってきたら、安全を確認しながらすみやかに車線を譲ろう。

車線の合流時は、1台ずつ仲良く。合流後は、窓を少し開けて手を上げるなどの「感謝の気持ち」も忘れずに。

車線変更時に後続車との車間が近かったなと思ったときも、後続車からパッシングやホーンを浴びせられる前に上記の動作などを行おう。

こうした、ちょっと大げさかなと思われる運転が、相手をムカッとさせることなく、結果的にあおられない運転につながっていくのだ。

あおり運転に遭遇したら、どうする?

こちらに落ち度はないと思っていても、あおり運転を受け、車線を譲ったにもかかわらず進路を妨害され、前方でクルマを停止して相手がクルマから降りてきて、こちらに向かってきた場合、どう対処したら良いのだろうか?

できれば、クルマにはドライブレコーダーを装着しておきたい(それも前後に装着しておくのがベターだ)。装着していなければ、携帯でもスマホでも良いから相手のクルマや人物を撮影しておこう。

ドライブレコーダーが、抑止にも記録にも役立つ。

危険な運転者に追われた場合は、一般道だったらコンビニでもファミレスでも、場合によってはコインパーキングでもいいから、とにかく安全な場所に駐車しよう。なるべくなら、ひとがたくさんいる場所が良い。

高速道路だったら、パーキングエリアやサービスエリアなど、事故に遭わない安全な場所に退避したい。

前をふさがれて道路上に停止してしまったら、まずはハザードを点灯。もちろんエンジンは切らず、ブレーキランプも踏みっぱなしが良い。相手が挑発してきても、窓は絶対に開けない。ドアロックも解除しない。

イラついた相手が愛車を蹴ったりしてボディが傷ついても、まずはガマン。自分と同乗者を、まずは守ろう。動画などを撮影し続けることも良いだろう。

そして、すぐに110番通報して、現在地や状況を速やかに伝えること。同乗者がいる場合は、停止させられる前から通報しよう。

SNSなどに投稿するのは、自己責任で。誤った情報で新たなトラブルを引き起こすこともあるので、まずは警察に任せよう。

あおり運転の対処に王道はない。あおり運転に遭わないためにも、前述のような慎重な運転を心がけたい。

意図せずあおりの加害者になることも

あおり運転に遭遇しないような運転をすると同時に、あおり運転の加害者にならないような運転も大切だ。

流れに乗って走っていたつもりなのに、いつの間にか前のクルマに近づいてしまった。信号が青になったのに、前のクルマがすぐに発進しない。高速道路を走行中、車間距離が少ないのに車線変更したクルマが割り込んできた……。

イラッとした瞬間、6秒間待つ、などという手もある。

こんなとき、ついイラッとしてパッシングライトを浴びせたり、ホーンを鳴らしたりした経験のあるひとは……。心のなかで振り返っていただきたい。

一瞬の苛立ちが、ちょっとした油断で行動にでてしまうことが人間だからあるかもしれない。

でも、こんな行動から「あおり運転をされた!」と110番通報されて警察沙汰になるという話が最近は増えているのだ。

イラッとする気持ちはわかるけれど、ここはグッとガマンして「しょうがないな……」と気持ちを切り替えて、運転を続けよう。「アンガーマネージメント」という言葉もある。これはイラッとした瞬間、6秒間待つ、というものである。怒りの感情のピークは6秒間といわれている。

クルマの運転は、自分のクルマだけでなく周囲のクルマも自分で運転していると考えると良い。サンキューハザードも大事だけれど、車線合流や狭い道での譲り合いなどでは、アイコンタクトや手を上げての挨拶が、より効果的だ。

こうした運転を心がけると、同乗者にも「このひとは運転がうまい」と思われることもあるだろう。

実際、クルマの走り方に秩序がないように思われるヨーロッパの大都市では、多くのドライバーがこうした運転を心がけており、その結果、事故もなくスムーズにクルマが流れていることが多い。

交通ルールを守って、クルマの流れに合わせて走り、思いやり/ゆずり合い運転を心がける。

これこそが、あおり運転の加害者にも被害者にもならない、スマートドライバーの基本と言えるだろう。